【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『送り火』と『ゴロウ・デラックス』

2018年9月27日放送の『ゴロウ・デラックス』第316回目のゲストは、第159回芥川賞を受賞された高橋弘希さん(38歳)

まずは登場と共に芥川賞直木賞受賞作家さんの出演恒例となった花束が贈呈。

 

 

【2018年7月18日 第159回芥川賞受賞会見】 
Q.ご受賞の今のお気持ちをお願い致します。
高橋「とりあえず会見やらないとダメと仰ったんで、引っ張り出されてきた感じなんですけれども。まあ、嬉しいっちゃあ嬉しいと思うんですけど、まあ、あんまりガッツポーズはなかったかな。な?って感じなんですけど、はい」

 

この芥川賞受賞後の記者会見が話題になった高橋さんは2015年のデビュー以来、これまで3度の芥川賞候補に選ばれ、今回、4度目の候補で栄えある芥川賞作家に。

実はこれまでの番組恒例だった芥川賞直木賞受賞作家が同時出演してくだっていた『ゴロウ・デラックス』今回も島本さんが出演される回で高橋さんにもオファーはしていたものの出演叶わず。記者会見の様子からTV出演が嫌なのかなと思っていたところでの出演でしたが、ご本人曰く、"『ゴロウ・デラックス』は本を紹介してくれる番組と知り、ぬけぬけと本日やってきました"とw

そんな高橋さん、芥川賞発表時には神田の魚屋さんにいたそうで。とはいっても鮮魚売り場とかではなく、魚を卸すお店の個室みたいなところ=居酒屋さんとのことで。なかなか記者会見時のイメージとは違い、かなり感覚が愉快な人のような。そんな高橋さんの課題図書はといえばもちろん、

 

送り火

送り火

 

  

送り火あらすじ】 
親の転勤で東京から青森へと引っ越してきた主人公の歩。転校先の中学はクラスの男子は6人という小さな学校だった。何度も転校している歩は晃がグループのリーダーであるとすぐに見抜き、この級友たちにすぐに溶け込む。しかし、徐々に閉鎖的な人間関係に巻き込まれていくことに。

 

吾郎さんと外山さん曰く、行ったことがない場所なのに光景が浮かんでくる、行ったことがあるような気がしたという『 送り火』そんな物語を読み解くためのキーワードが、

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 閉塞した田舎に潜む暴力

歩たちの中学では代々男子生徒に受け継がれる独自のルールがあった。それが、

 

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1人2枚配られた花札の月の合計が「13」に近い人が勝利。「13」を超えるとドボンで失格。そしてこのゲームの敗者には異様な暴力性を持った罰ゲームが用意されているのだ。その場面を3人で朗読。

 

(吾郎)「久しぶりに回転盤でもするべし」
ナレーション(吾郎):六本の試験管の一本に硫酸が混じっている。
燕雀でドボンになった者が、どれか一本の溶液を手の甲にかける。
久しぶりに、と晃が言ったのは、そうした六つのうち一つだけハズレが交じっている遊戯を“回転盤”と言い、過去によく行われていたらしい。
(高橋)「さすがにあぶねぐね――――」
(吾郎「薄めてらはんで」
(高橋)「たばって」
(吾郎「せいぜい火傷するぐれぇだ」
ナレーション(吾郎):晃は桐箱から花札を取り出し、日向のコンクリートへ黒札を配っていく。
稔が蓮華のカスと松のカスでドボンだった。
稔は試験管立ての上で、右手を右往左往させた後に、端から二番目を選ぶ。
と、背後から有無を言わせず、藤間が稔の腕を押さえる。
手の平が、コンクリートに押し付けられる。
脂肪でふっくらとした稔の手へ、晃が試験管を傾けていく。
乳白色の液体が手の脂肪を滑り、次第に皮膚が露わになる。
そこには何も変わらない、肌色で、血色の良い、健康な手があった。
稔は半笑いを浮かべたままで、苦痛の色は覗えない。
皆から歓声が上がった。
(外山)「どれがハズレだったんだべな?」
(吾郎)「本当はどれもただの牛乳だべ、だばって硫酸だきゃ。薄めても、稔の手が骨さなるかもしれね」
ナレーション(吾郎):すると皆からは、安堵とも落胆ともつかぬ笑いが起きた。

「送り火」より一部抜粋

 

実際にこのようなゲームがあれば怖いと、こんな怖いゲームよく考えられましたねと言われた高橋さん曰く、"本人は大変陽気な……3割増し陽気な"らしいです。

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そしてなぜこのゲームはトランプではなく、花札を使用したのかと問われると、花札は絵柄がいろいろあるし、また柳のカス札という全体は赤くて、真ん中が黒く、枠の外から鬼の手が伸びているみたいな、ちょっと異様な札があり、この札はいろいろ使えるのではないかと思って花札を選んだそうで、基本的に花札は遊んだことはあるものの、花札よりはトランプを、さらに言えば、トランプよりはプレイステーションのほうが好きだそうです。

 

そんな独特な発想法で作品を生み出している高橋さんですが、小説家になるまでの人生も独特だったようで、まずは大学時代、今とは違うある職種に就こうとしていました。

 

f:id:kei561208:20180621012743p:plain 1990年代後半(10代後半)漫画家を志し、集英社に作品を持ち込む

絵は得意ではなかったものの、一瞬、漫画家を志して当時は「週刊少年ジャンプ」全盛期だったので集英社に、赤塚不二夫もびっくりのコメディー(傑作)漫画「火星人大来襲」火星人は宇宙船の技術力には優れているのに軍事技術は全くなく、やってきた地球は戦争ばかりの野蛮な民族なので帰ろうとするものの宇宙船が壊れて帰れなくなるという漫画。ただ火星人は擬態する能力があったため、人間に擬態し、ファミリーマートでバイトして生活をしていくというお話でしたが、結局、漫画家の夢は諦めることに。

 

f:id:kei561208:20180621012743p:plain 2000年代前半(20代前半)漫画「ヒカルの碁」に感動しプロ棋士を目指す 

 

ヒカルの碁」は囲碁ですが、囲碁はわからないし、将棋なら指せるので棋士を目指そうかなと思った高橋さん。実際に割に強く、半年ぐらいは頑張ってはみたものの、ある日、将棋センターでおじいちゃんと対戦。指導対局をしてやろうかぐらいの気持ちで対戦してみたら、そのおじいちゃんが尋常でないぐらいに強く、むしろ指導対局をされていた側だったことに気づいて断念(ただし、容姿からしてひょっとしたら加藤一二三さんだった可能性もあり?)

 

f:id:kei561208:20180621011801p:plain 2000年代前半(20代前半)初めて小説を書き、賞に応募する

バンド仲間に本をたくさん薦められて一時期、本をたくさん読んだ高橋さんは、「これ書けるんじゃないかな」と思ってエンタメ風の変態小説を書いたのだとか。あらすじは言っても放送できないぐらいの、さらには人格についても誤解を招きそうな内容だそうで、なぜそんな変態小説をジャンル的に書こうとしたのかと問われると、その当時は変態だったのかもしれないと高橋さんw

しかし初小説は日の目を見ることもなく、塾講師の傍らで音楽の道へ。ギター、ドラム、ボーカルなど様々なことをやっていたそうです。ジャンル的にはギターがうるさい感じの、90年代であれば『NIRVANA』みたいなオシャレなボサノヴァ調の……???吾郎さんも全然わからないとツッコミが。ですが、その音楽活動も停止、再び小説の道へと進みます。

 

f:id:kei561208:20180621012743p:plain 2014年34歳 『指の骨』で新潮新人賞を受賞し、作家デビュー 

指の骨 (新潮文庫)

指の骨 (新潮文庫)

 

 

今度は変態小説ではなく、「戦争を知らない世代による新たな戦争文学」などと評価をされたそうですが、当初は大学生がグアムに行き、そこでおじいちゃんと仲良くなり、そのおじいちゃんが大学生に戦争の話をする物語になるはずが、そのおじいちゃんだけの物語になってしまったそうです。

 

外山変態から戦争ですよ」
高橋「ん~、何かいいですね、それ何か」
吾郎「今のフレーズいいですね」
高橋「キャッチコピーみたいです」
2018.09.27『ゴロウ・デラックス』より一部抜粋

 

そして小説家に至るまでの話を聞いたところで、もう一つの物語を読み解くためのキーワードが、

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 圧倒的な描写力 

芥川賞選考委員・島田雅彦さん】 
島田一つ一つの言葉にコストを掛けているということがありありと伝わってきますし、言葉を使って別世界を構築していくというフィクション本来の醍醐味、これを十分に示してくれている快作ではないか」

 

その選考委員も絶賛する描写力を発揮されているシーンを外山さんが朗読。

 

外山:ある日の学校帰り、この民家を通りかかると、老婆に声をかけられた。
おやつがあるから、食べていきなさいという。
玄関の木戸を開けると、土間があり、居間には囲炉裏があった。
囲炉裏など昔話の挿絵にしか見たことがない。
天井から吊された自在鉤には、挿絵に見たのと同じ、魚の形の横木が吊してある。

囲炉裏の中央では、黒炭がほんのりと赤く染まっていた。
炭で餅でも焼くのかと思ったが、老婆は何やら、白いスポンジのようなものを竹串に刺し、囲炉裏へ並べていく。
「マシュマロお食べ」
炭火で炙ると、マシュマロは表面がキツネ色に焦げた。
老婆が手渡す竹串から、一つ頬ばる。

外側は歯触り良く香ばしく、内側は柔らかく甘く、上等な焼き菓子を食べているようだった。
「酒も呑み」
老婆は囲炉裏に挿した竹筒から、白く濁った酒を湯呑みに注いだ。

湯呑みを受け取ると、匂いでそれが甘酒だと分かったので、躊躇わずに一口呑んだ。
酒麹の香りに、仄かに青竹の香りが混じっており、また囲炉裏で人肌ほどに温まっているせいか、少し酔った気分にもなった。

「送り火」より一部抜粋

 

囲炉裏で餅を焼くのはありそうで面白くないのでマシュマロにしてみたと。そしてこの描写に、普通なら知らないような農具の名前などもたくさん出てくるので、よくそういう風景の場所に行かれたことがあるのかと問われると、実家が農家で、実際に小説の舞台となった青森だったため、クライマックスのあるシーンもその幼少期に見た光景が基になっているのです。

 

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舞台は青森でなくても良かったのですが、作中にお祭りは描きたかったため、実家近くのねぶたではない、もっと土着的なお祭りを参考にした高橋さん。ちょっと怖い?と吾郎さんに問われると、"ああいう集落の祭りというのはちょっと異常ですから"と答える高橋さんに、僕は見たことがないなあと。吾郎さんもですが、おそらく外山さんも江戸っ子なので、この土着的な祭りが持つ一種の異様さは実際にその土地で暮らす人たち以外はわかりにくいのかもしれません。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 山田くんの消しゴムハンコ 

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⇒第59回芥川賞直木賞受賞作家が決まり、記者会見の様子を見て思ったのが、高橋さんのゴロデラ出演はないのかも、ということでしたが、実際に出演し、話している様子を見ると勝手に抱くイメージはやはりダメだなと。もちろん、吾郎さん、外山さんというお二人だからこそ、当初は緊張されていた高橋さんも途中からほぐれ、その愉快な感性が発揮されたとも思うのですが。バラエティ初出演を楽しむ出演者たちの姿に、こうやって実績が積み重なり、さらにバラエティ初出演をゴロデラで、という方が増えていくのかもしれませんね。

 

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain ゴロウ・デラックス』&TBS公式Twitter

 

 

 f:id:kei561208:20180622175426p:plain 出版社Twitter

 

 

  

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