『広辞苑』と『ゴロウ・デラックス』
2018年2月8日放送の第284回目『ゴロウ・デラックス』は10年ぶりに広辞苑が改訂されるということで、番組特別篇として広辞苑のすべてを教えていただこうと岩波書店からのロケ。というわけで今回の課題図書は、
1955年、初版刊行以来、ほぼ10年に一度改訂版が出版され、現在は累計発行部数が1,200万部を突破。2018年1月には過去最大となる25万語を収録した「広辞苑第七版」が出版され話題に。そんな本日のゲストは、「広辞苑第七版」を出版するにあたり、改訂の総指揮をとった岩波書店辞典編集部より平木靖成さん。辞典編集部に配属されて25年、広辞苑の改訂も3回目とまさに辞典のエキスパート。
岩波書店から出版されるすべての辞典はここで作られているのです。その種類は多岐にわたり、ちょっと書き出してもすごい種類。
この古語辞典と広辞苑の間に挟まれている辞典が、広辞苑の前身となる辞苑。博物館用だったと。ちなみに辞典編集部はそのときどんな辞典を、何点進めているかによって編集者の人数に変動があるそうです。広辞苑の最盛期には15人以上が編集部に詰めていたそうです。
広辞苑は二つの種類の辞書両方の特性を持っています。一つは言葉の意味や用例を説明し、日本語に関する知識を教えてくれる国語辞典。もう一つはあらゆる科目にわたる知識を網羅した百科事典。たとえば吉備人形だと、
このため編集者も様々な知識を持った人が必要で、改訂の際には岩波書店の各部署から人員を選抜し、精鋭チームを結成しているんだとか。だから広辞苑が改訂された後では精鋭チームも解散し、編集部はがらんとしているのです。
広辞苑のスゴさ②時代にあわせた新語を収録
広辞苑が改訂されるたび話題になるのが「新語」例えば1998年、広辞苑第5版に載った新語は"どたキャン"、"素っぴん"、"セクハラ"、"ストーカー"など。2008年、広辞苑第6版では"うざい"、"顔文字"、"ウルトラマン"、"いけ面"といった新語が追加されたが、その広辞苑第6版から第7版に改訂されるのに、何語ぐらい新語が追加されたのかといえば、大体1万項目が増加……とちゃんと進行をする外山さんの横で、話を聞かずにひたすら広辞苑で調べている吾郎さん。何を調べていたのかというと、"フェード"というゴルフに関する言葉だったというw
話題の新語は何を収録?
ちなみに広辞苑ルールとして、漢字で書ける項目は漢字表記にするため、【乗り乗り】表記になるそうです。
面白いのは就活が就職活動の略として生まれた言葉に対し、婚活は結婚活動の略ではなく、"婚活"という言葉自体で生まれたこと。そして新語として載った"上から目線"をアナウンサーとしては使ってはいけない言葉だと思っていたものの、広辞苑に載ったのでこれからはバンバン使っていきたい外山さんに対し、言葉は場面ごとに使っていいかは変わってくるので、言葉としてあってはいても使っていいかは責任持てませんとw
では、改訂で広辞苑に掲載されるか、されないかの基準はと言えば、日本語として定着したか、していないかが一番大きな基準としています。一例として、子育てをしている親御さんの間ではよく使われる"卒乳"という言葉は、他の人たちはあまり知らないということは定着したと判断され、新語として掲載されました。
ただし、この基準も会議中に10人中のうち1人しかこの言葉を載せたいという人がいなかったとしても、その人の説得力に"なるほど、その分野ではそうやって定着してるんだ"と他が納得すれば、じゃあ、入れようかという流れになるときもあるそうです。
なお、広辞苑には人名も含まれていますが、人の名前を追加する場合は、日本人の場合は故人のみ掲載されるというルールがあります。だから今回の改訂では永六輔さんの名前も"永"の項目で掲載されています。
姓氏の一つ。―――ろくすけ【永六輔】
作詞家・放送作家。本名・孝雄。東京生まれ。早大中退『上を向いて歩こう』などのヒット曲を作詞。テレビ・ラジオの出演者やエッセイストとしても活動。著:「大往生」「芸人」など。
外国人の方は存命であっても掲載されることもあり、"カズオ・イシグロ"さんは掲載。
長崎生まれのイギリスの小説家。
記憶や過去のまつわる不安や違和感を精緻で端正な文体で描く。作:「日の名残り」「私を離さないで」など。
ただ、ノーベル文学賞を受賞したから掲載されたと思われるかもしれませんが、英文学専門の方が受賞前から選定してイシグロ氏を載せたほうがいいと語っていたので載せたと。実際、イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞したのは2017年10月5日で、広辞苑第7版が校了したのは10月半ばだため、イシグロ氏の項目にノーベル文学賞受賞の文字が入ってはいないのです。次の第8版でイシグロ氏の欄にノーベル文学賞受賞という文字が記載されるはず。
広辞苑のスゴさ③昔の言葉や意味も全て載っている
改訂のたびに新語を増やす広辞苑ですが、古い言葉の削除はあまりしない方針だと言います。源氏物語でしか使わない古語もあるので、使わなくなったから削るという考え方はしない。ですので、"フロッピーディスク"も載っていますし、その時代の用語を必要として辞書を引くがいるかもしれないと平木さん。そして、なぜか急に"ぶら下がり健康器"がいいなと思い、ネットで注文したと話し始める吾郎さん。残念ながら広辞苑には"ぶら下がり健康器"はないと知り、"ぶら下がり健康器"はみんな知ってるし、掲載されている"フラフープ"と同じぐらいの知名度はあると熱弁し出す吾郎さん。
2008年の第6版で"ナウい"という言葉が掲載されましたが、流行語で消えるんじゃないかな?消えるんじゃないかなと思っていたら、最終的に「死語の代表」見たいになって生き残っているので、"ぶら下がり健康器"も次にと仰ってくださった平木さんでしたw(吾郎:僕にとっては古くないんですけどね)
また時代とともに意味が変わってきた言葉もありますが、広辞苑の編集方針として言葉の意味が変わっていくときに一番古い意味から、段々新しい意味を記載するようにしているそうです。例えば、
(刑)文 やさ・し(シク)(動詞「痩す」の形容詞形)
①身も痩せるように感じる。恥ずかしい。
万葉「世の中を憂しと―――…しと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」
古今「何をして身のいたづらに老いぬらむ年の思はむことぞ―――…しき」
から始まり、穏やかである、素直であるというのは現代的となり、その後が簡単であるとなり、さらには悪い影響を及ぼさない、肌に優しい洗剤とか言葉はまさしく時代と共に変化をしていくのです。
さらには新語だけではなく、すでに収録されている言葉も定義も毎回洗い直し、時代にあわせて改訂を重ねてきたのです。それがよくわかる貴重な資料を今回、特別に見せていただけることに。
初期の貴重なゲラを拝見
おそらくは初版の項目を一つ、一つ切り取って、第2版用に"ここを直す"という原稿にしたもの。1枚で1項目、20何万枚が保存されているのです。
左は第2版のときのゲラで、右は第7版に掲載されている人類という項目。広義と系統にまで言及され、1974年に発見されたアウストラロピテクスのことも記載されている。これを見比べるとより的確に表現するために改訂されていることがわかります。
広辞苑のスゴさ④膨大な量の情報が1冊に詰まっている
しかし、初版より5万語も追加されている第7版ですが、歴代の広辞苑を見比べてもその厚みは約8cmとほぼ変わらず。というのも製本の機械は8cmの厚さまでしか作れないのだそうで、新語が追加され、ページが増えようが8cmに収まるように毎回、紙を薄くしてもらっているのだとか。薄さはもちろん、紙を触ったときの感覚とか透け具合まで、ありとあらゆることまでこだわった広辞苑の紙。今回、紙の開発には2年かかったそうです。
こうした様々な形でようやく成した第7版の広辞苑ですが、平木さんとしてはようやく終わったというよりは"また次だな"という気持ちのほうが強いのだとか。すでに第8版では"こんなことをやらなければいけないなという課題"も溜まっているのでと。
⇒まさに終わりなき旅といった感じですが、それが言葉が生きている証なのかもしれませんね。改めて本を読むにせよ、言葉一つ、一つにこだわって、正しく読むことをしていきたいなと思いました。しかし、他にも辞書あるし、さすがに広辞苑は買わないw
山田くんの消しゴムハンコ
岩波書店さんの反応
2/1(木)放送予定「ゴロウデラックス」(TBS系列)は『広辞苑』がテーマです。深夜の編集部での取材でした。どうぞお楽しみに! #稲垣吾郎 #新しい地図 https://t.co/OFY309mkjb
— 『広辞苑第七版』2018年1月12日発売 (@Kojien7) 2018年1月18日
【放映日変更のお知らせ】ゴロウ・デラックス「広辞苑」特集は、2/8(木)深夜0:58~です。稲垣さんが辞典編集部にいらっしゃいました。言葉の使い手の達人、稲垣さんがどう切り込むのでしょうか。どうぞお楽しみに! #ゴロウ・デラックス #稲垣吾郎 https://t.co/P8q8MP89pW
— 『広辞苑第七版』2018年1月12日発売 (@Kojien7) 2018年2月2日
広辞苑編集部と新書編集部はお隣同士。「吾郎ちゃんが来た!」と盛り上がりました。 https://t.co/OBl2jGWvCP
— 岩波新書編集部 (@Iwanami_Shinsho) 2018年2月8日
本編集部も、「いまちょうどゴロウカットなので会いたい!」という編集者がいました。 https://t.co/m1Et6TyxH8
— 岩波書店『世界』編集部 (@WEB_SEKAI) 2018年2月8日
昨夜の #ゴロウ・デラックス は広辞苑を丁寧に取材していただきました。項目を読み上げる稲垣さんの声は柔らかく響いて、詩のようでした。外山さんの「永六輔さんの項目が載ったのはうれしいけれど、ああ、いなくなったんだなあ」のコメントにもぐっときました(日本人は物故者を掲載)。 https://t.co/anWMgRacTq
— 『広辞苑第七版』2018年1月12日発売 (@Kojien7) 2018年2月9日
そして次週は小林聡美さんをゲストに、課題図書にちなんで吾郎さんら3人で鼎談を。
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