『十津川警部 予土線に殺意が走る』と『ゴロウ・デラックス』
2017年12月7日放送の『ゴロウ・デラックス』第277回目のゲストは、日本トラベルミステリー界のレジェンド・西村京太郎先生(87歳)
全国の鉄道を乗り尽くしたからこそ書ける緻密な列車トリックが小説ファンだけでなく鉄道ファンも魅了し、ミリオンセラーを連発。トラベルミステリー一筋40年。御年87歳の今なお新作を生み出し続けている西村先生。そんな西村先生がこれまでに書かれてきた作品数は、2017年10月の地点でなんと596作品というから驚き。さらにはこの小説たちの累計発行部数は2億部、西村先生の本だけで本棚を作ると、
圧巻の作品数596作品
こうやって改めて作品をまとめて見られることはありませんか?と尋ねられると西村先生は“書きすぎですよ”と。
そんな西川先生の代表作品といえば、TBSの「月曜名作劇場」でもお馴染みの十津川警部シリーズ。旅情あふれる鉄道サスペンスと殺人事件のなぞ解きを描いた大人気シリーズですが、今夜の課題図書はその十津川警部最新作、
世界的イベント開催者、通称「呼び屋」の東海 元(とうかい はじめ)とそこに渦巻く陰謀を描いたトラベルミステリー。
事件の謎を解く鍵は四国の予土線、ホビートレインについて書かれた一説を外山さんが朗読。
車体を、新幹線と同じ、白と青のツートンカラーにして、正面に、新幹線のフクメンを、かぶせているのである。
それも、初期の、〇系新幹線に、似せてあるという。
間違いなく、〇系新幹線のダミーである」
そして表紙にもあるホビートレインがキーワードになっていくという話から、“四国一緒に行く?”と外山さんを誘う吾郎さんw
最新作のキーパーソン、東海元の設定は?
吾郎さんに東海 元さんは何歳ぐらいの設定なんですか?と尋ねられた西村先生が大体中年、40代ぐらいだと聞き、”僕なんかどうですか?”と自らを売り込んでいく吾郎さん。実は今日、収録に来ている大勢の人のうちの一人がドラマのプロデューサーで“あの人に頼めば”と答える西村先生に、“ぜひ、よろしくお願いします。売り込む場にさせていただいております”と。
小説のネタ集め
西村先生は毎年11月には出版者の人に集まってもらい、来年書くものを決めるそうです。現在、西村先生が書かれている出版社は全部で12社。そして2泊3日で出版社の方は取材に行かれるのですが、さすがに12社すべてで1回、1回行くのは大変なので、取材は2社合同で行かれるのだとか。つまり、例えばA社とB社で東北地方、C社&D社で北陸地方、E社&F社で関西地方と年6回、出版社の方と2泊3日の取材に行かれる西村先生。
トラベルミステリーの極意
①トラベルミステリーの極意:”ネタ集めのためなら変態であれ!”⇒列車の中では死体を隠す場所を探すため、車掌さんなどにいろいろ尋ねる西村先生。昔はあまり教えてくれなかったものの、最近は教えてくれるようになったそうです。(吾郎:電車で西村先生が来るのはミシュランが来るようなもの)
昔はB寝台は3段階だったため、一番下から突き刺すだけでよかったので殺しやすかったのに、今は出来なくなってしまったそうで。鉄道取材にストイックすぎて、ある意味変態的という西村先生は時には警察署の前に行って写真を撮り続け、怪しまれて捕まったこともあるそうで、何をしているのかを問われ、“取材です”と答えると署長室へと連れて行かれてしまい、歴代の署長が優秀であることを2時間も、3時間も喋り続けるのだとか。
マストアイテムは時刻表
トリックを作成するための必需品といえば時刻表。
ちなみに一般にある時刻表ではなく、辞書のように見えるのは自作の表紙カバーを作成して貼りつけたからで、中身は普通の時刻表のまま。この時刻表を見てトリックを思いつくわけですが、例えば、外房線と内房線のところに〇印がついていますが、平日であれば東京に8時45分到着するものが、土日は8時43分に到着する。この2分の差があれば人を殺せて、逃げられるだろうということで印がついているそうです。そういう細かいところでも疑問を持って調べることからトリックは生まれてくるのです。
トリックを間違える、驚愕の理由
②トラベルミステリーの極意:”売れるためには1か所間違えるべし”⇒間違えると見つけたぞ!と嬉しそうな抗議の手紙がどっと来るため、出版社の方が”1か所間違えましょう”そのほうがドッと売れるのではないかと。ミステリーマニアはあまり怒らないものの、鉄道マニアはすぐ怒るのです。
売れっ子ミステリー作家が犯した間違い
また12社同時連載という人気作家ゆえにストーリーは混じることはないものの、時には名前が混じってしまうときも。しかも通常であれば出版社のほうで修正してくれるのですが、ミステリー小説ということもあり、わざと偽名を使ったのではないかと編集者の方も思ってしまうこともあるため、時には最後まで名前が間違ったままなことも。
そんな西村先生ですが、時には外車ショーを観に行かれ、ロールスロイスに乗っていたところ、係員の方に“乗るな!”と怒られた西村先生はつい“買うから”と答えてしまったため、事務所へ連れていかれ、契約書を書く羽目に。3,300万円もするロールスロイス、実は西村先生免許がないという←(吾郎:先生の頭の中がミステリー)
激レア自宅映像大公開
ダメ元で西村先生に自宅への取材をお願いしたところ、OKが出たので熱海へ。
ペンはこちらの愛用ボールペンのPILOTか、万年筆を使用。また本棚には時刻表をはじめ、旅行ガイドブックや鉄道の資料などがぎっしり。さぞやこの書斎で多くの作品が生み出されてきたのかと思いきや、ベッドで寝たまま書くことも多く、奥様曰く“だからベッドもインクだらけよ!”というわけで、普通のシーツだとインクで大変なことになるため、別のマットも引いて対処しているのでした。
さらに書斎の奥に行けば、
時計とライカコレクションが大量に陳列。ライカでは真ん中に見える茶色のカメラがエルメスの革張りのカメラは500万するという。
執筆のペースは?
1年で12冊、1ヶ月で1冊という驚異的なペースで書き続けている西村先生。その積み重ねがあの596作品につながるわけですね。
そんなお忙しい西村先生ですが、今回は特別に『ゴロウ・デラックス』のために、吾郎さんが主役のミステリーを書き下ろしてくださいました。
今回の朗読はスペシャルコラボ。ミニドラマver.でお送りします……といってもブログは文章のみですけれどもね。ちなみに登場人物の配役は後輩役が吾郎さん、その後輩の活躍を妬む先輩役(男性)を外山さんが演じます。
「サヨナラは握手のあとで」
西村京太郎
ナレーション(吾郎):私は今、あの男を殺そうと思っている。
名前は、吾郎、フルネームは立石吾郎だ。
ナレーション(外山):私は年齢をとり、人気も下り坂だ。
そろそろ引退だなと陰で言う奴もいる。
だが、私には、その気はない。
ナレーション(吾郎):そんな私には、立石吾郎が邪魔なのだ。
若いし人気も登り坂だ。
何よりの問題は、私のゆく世界と彼の世界が同じだということだ。
そのため、彼が一歩進めば私は一歩退くことになる。
そのうちに、私はこの世界から追い落とされてしまうだろう。
そうなる前に、彼には消えてもらわなければならない。
ナレーション(外山)私は、一日がかりで、殺す方法を考え、それに必要なものを揃えることにした。
青酸カリ…手に入りにくいが、工業用青酸カリならメッキ工場で疲れているから何とか手に入れた。
指輪………男性用のサイズの大きいもの
画鋲………針の先がとがっている
白い恋人…北海道の菓子。彼の故郷の菓子。東京駅で買える。
(ドラマver.)
ナレーション(外山):これだけ揃えておいて、私は彼に電話した。
先輩(外山)「これはしばらく内緒にしておいて欲しいんだが、実は引退を考えているんだ」
後輩(吾郎)「え? そんなこと考えないで、あと何年も働いてくださいよ。先輩がいてくれないなんて困ります」
先輩(外山)「そう言ってくれるのは嬉しいが、もう決めたんだ。色々と君に話しておきたいことがあるから、これから来てくれないか」
後輩(吾郎)「わかりました。じゃあ、行きますよ、喜んで」
先輩(外山)「車だといいね。私のマンションは駅から遠いから」
ナレーション(外山):念を押さなくても、車でくることは想像がついていた。
カーマニアで、最近ベンツS600を買っているから、そのベンツを自慢したい筈なのだ。
ナレーション(外山):一時間後に車でやってきた。
そのあと、話し合いになったのだが、私は何度も引退をほのめかした。
私の後を継ぐのは君しかいないと繰り返すと、彼は笑顔になり、この世界の第一人者になったような顔をした。
帰るという彼を計画通り、車のところまで送って行った。
彼が運転席に入り、ハンドルに手を置いたところで、ドアをノックした。
彼が窓を開けた。
「君のために、札幌で買っておいたものを忘れていたんだ」
と白い恋人を渡す。
その時、窓越しに手を差し出した。
指輪をはめ、それに画鋲を装着し、針先に青酸カリを塗っておいた手である。
白い恋人をもらった直後なので、彼は何に疑いも持たずに握手に応じた。
一瞬、チクリとしただろうが、彼はそのまま、アクセルを踏んだ。
白いベンツはあっという間に私の視界から消え去った。
ナレーション(吾郎):このあとで、彼がどのあたりで死ぬかはわからない。
(とにかく、サヨナラだ)
私はゆっくり眠りたい。
少し疲れた
2017年12月7日『ゴロウ・デラックス』放送分より
主役なのに僕は死んじゃいましたねと吾郎さんw
ちなみに吾郎さんを殺すイメージになったのは、吾郎さんがイケメンだからねと西村先生。イケメンは癪に障る、腹が立つので殺されちゃったのでした。
山田くんの消しゴムハンコ
⇒早々たる顔ぶれが出演する『ゴロウ・デラックス』
まさにトラベルミステリー界のレジェンドの登場だけでも十分に驚きなのに、自宅ロケまでお許しいただき、さらには忙しい先生に短いとはいえオリジナル書き下ろしも頼んじゃうゴロデラは凄いです。そしてそれをあっさり了承してしまう西村先生も。吾郎さんの演技もほんの少しですが見ることも出来て良かったです。ただ、もっと見たくなるという渇望が生まれるのが困りものですが💦
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