『字が汚い!』と『ゴロウ・デラックス』
2017年6月15日放送の『ゴロウ・デラックス』第253回目のゲストは、西原恵理子さんの"できるかなシリーズ"を担当されるフリーの編集者であり、数々の著書を執筆し、ライターとしても活躍中の新保信長さん*1(54歳)
そんな新保さんの最新刊が本日の課題図書となる
自分の字の汚さに改めて気づいた新保さんが、ペン字練習帳で綺麗な字を目指したり、ありとあらゆる人の手書きをリサーチするなど字を巡る右往左往をまとめた体験ルポ。
みんな字に悩んでいる
実は字が汚いことがコンプレックスの吾郎さん。出来れば字を書きたくない吾郎さんにとって今回の課題図書はまさに共感の1冊。自分でも頑張れば綺麗な字が書けるようになるのかなと思ったそうです。一方の外山さんもあまり自分の字は好きではなく、ハガキなど書く機会も多いので綺麗になりたいなと思っているそうです。そして読んでいて、字には好みっていうのがあるんだなと語る外山さんに、
では、なぜ新保さんは自分の字と向き合うことになったのか。そのきっかけを吾郎さんが朗読します。
その日、私は某大物漫画家あてに手紙を書いていた。その漫画家なくしては成り立たない、とある企画への協力をお願いするためだ。
アナログ世代編集者としてはここぞという場面ではやはり手書きの手紙で誠意を見せたい――――というわけで、何年ぶりかわからないぐらい久しぶりに万年筆を手に便箋に向かった次第である。
んが、しかし!
1枚目の途中まで書いたところで手が止まった。
"何じゃこりゃあ!?"と脳内で故・松田優作のセリフが再生される。
目の前の便箋には、自分でイメージしていたよりはるかに汚い文字の羅列……いや、自分の字が汚いのは先刻承知だし、もちろんそれなりに丁寧に書いているので読めないわけじゃない。
が、何というか、筆跡そのものが子供っぽくて拙いのだ。
とても五十路を迎えた分別ある大人の字には見えない。
つか、そもそも自分が分別ある大人なのかというとかなり疑わしいところではあるが、それにしたってこの字はないわ」
気持ちはわかる吾郎さんは新保さんの字を可愛らしいといい、外山さんも一生懸命、丁寧に書いてるのが伝わると感想を述べます。新保さん自身も読めないわけではないものの、子供っぽくてふざけている感があり、これを送ったら逆効果になりかねないと結局打ち直し、手書きっぽい書体でプリントしたのを印刷して送ったそうです(ただし、オファー了承の返答はきていない💦)
一応、吾郎さんとしては左利きというのは字が汚い理由に。やはり書き順を違え自分なりの書き順にしているところがあるので上手く書きようがないのだとか。ただその文字がキャラにあっていれば問題ないものの、パブリックイメージと現実とのギャップに長年苦しんでいる吾郎さん。
というわけで、今夜は課題図書『字が汚い!』の中で新保さんが実際に調査してきたことを一緒に体験していくことに。
ペン字練習帳に挑戦!
新保さんはまず字を綺麗にしようと、上記の4冊を実践。
「ゆっくり丁寧に書く」「全体的なバランスを考える」など基本的なコツを学びながら、練習をしていったそうな。
最初にやったのがシリーズ累計300万部を突破し、「美文字ブーム」の火付け役となったこちらの本。新保さん曰く、最初は字の練習からではなく、縦線、横線の引き方から練習が始まるのですが、まずこれが出来ない。まっすぐに線を引くということは意外に難しいのです。
実際に吾郎さん、外山さんも引いてみますがやはりなかなか上手く引けません。吾郎さんは特に横線が上手く引けず、この線を引くことで自分の欠点もわかっていきます。続いてひらがなに挑戦。ひらがなはいかに曲線を書くか。たとえば"お"であれば丸い所はかなり小さく、大きく書いてしまうと子供っぽく見えてしまいます。
この4冊の中で新保さんが良かったなと思った本は、
練習しないで、字がうまくなる! 15分でガラリと変わる上達法
- 作者: 阿久津直記
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2011/12/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 165回
- この商品を含むブログを見る
この本は字を綺麗に書こうというのではなく、発想の転換を行い、どういうふうに書けばいいのかコツを教えてくれる本。例えば香典袋とかに名前を書く場合は鉛筆で真ん中に線を引き、その線を基準に丁寧に名前を書いてから鉛筆線を消せとか。"下手なら一手間かけろ!"という言葉になるほどと納得した新保さんでした。
字の書き方を習得した新保さんは他の人たちの字も気になり出します。
太宰治の直筆
外山「ねえ。なんかもうちょっと、なんていうかもうちょっと神経質そうな字というか。もうちょっと原稿用紙にちっちゃく書きそう、なんか」
新保「心中したりする人の字には見えないですよね。特にひらがな」
夏目漱石の直筆
新保「割と可愛らしい……」
吾郎「可愛らしい」
外山「こんな字を書いてたんだ」
吾郎「性格は良さそうな……」
江戸川乱歩の直筆
新保「でもちょっと雑というか。ちょっとおどろおどろしい感じ」
吾郎「でも江戸川乱歩さんの作風には合ってる」
外山「でも、これで原稿来たら読めなそうなところありますよね」
新保「若干、厳しいですね」
直木三十五の直筆
当たり前ですが作家によって全然違う字。しかし、今はパソコンが主流となっているため、こういった手書きの原稿が少なくなっているのです。もちろん、まだ年齢が上の作家さんは手書きされている方もいますが、若い作家さんは全部パソコン。
ただし、芥川賞・直木賞受賞した作品に限っては、日本近代文学館に原稿を寄贈するため、パソコンで入力した原稿をわざわざ手書きに1枚分だけ書いてもらったりしているのだとか。
そんな話題から吾郎さんが編集の方も作家さんの字を見たほうが、気分だとか、心が読み取れるかもといえば、"原稿をいただくのならぶっちゃけメールで頂いたほうが……間違いも少ないし、早いのでありがたい"という新保さんの率直な感想がw
理想の字を探す
字について調査する中、新保さんは理想とする字に気づいたそうで、その箇所について外山さんが朗読します。
個人的には必ずしもペン習字のお手本のような字を理想としているわけではない。もちろん、葬式の芳名帳とか公式なお詫びやお礼の手紙用に、隙のない美文字が身につけられればそれに越したことはない。
が、そのためには相当の修業が必要だし、日常的にはむしろちょっと隙があるというか、愛嬌がありつつ全体的には整っていて読みやすい字が書ければいいなあ、と思うのだ」
美文字は素敵なんだけれど人柄が感じられないため、新保さんは美文字が書きたいというよりは良い感じの字が書きたいと気づくのです。いろんな方の字を見てきて、新保さんが理想としたのが、アラーキーこと、写真家の荒木経惟さんの字でした。
この題字もアラーキーさんの直筆ですが、新保さん曰く、"大人っぽくもあり愛嬌もある字が非常に魅力的"と語っていましたが、愛嬌というか、やはり芸術家らしく吾郎さんが表現したように味のある字に感じます。ちなみに吾郎さんが理想と感じたのは、
まさにペン習字の見本的な字。
外山「でも字まで綺麗だったらちょっとねえ……どうします?」
吾郎「いやいや、なりたいよ。こんな字書けたら凄いじゃん」
外山「凄いですけど、それこそ完璧になっちゃいますよ」
吾郎「無理かな、今から人生」
外山「じゃあ、やってみればいいじゃないですか(爆笑)」
回を重ねるごとにさらにコンビとして息があってきた吾郎さん、外山さんのこのやりとりが凄く良い。もう、最後には投げやりになる外山さんが素敵です。ちなみにそんな外山さんの理想というか、好きなのは永六輔さんの字。
まさに永六輔さんらしいキャラクターにあった字です。
字は人を表す?筆跡診断
本では筆跡診断も行っているため、今回は新保さんが実際に取材した筆跡診断士である林 香都恵さんに吾郎さんと外山さんの筆跡も診断してもらうことに。⇒(有)匠佳堂 林 香都恵 公式サイト
・素直で真面目・起筆すなお型*2・物事を自然に受け入れる・縦の線が長く、自分軸がしっかりしている・書き出しの位置が端にあるため、恥ずかしがり屋・「トメ」が弱い=物事を素早く進め、もたもたしない(せっかち)
林先生に、下手でもせめて自分の字ぐらいは綺麗に書きたいと教えてもらう吾郎さんと外山さん……といっても教えてもらうのは吾郎さんの「吾」ですがw
そして教えてもらったコツどおりに「吾」を書き、すぐ上手になれそうですねと言い始める吾郎さん。最後に林先生にお礼を言った後、外山さんへと"今日はなんか良かったねえ"といえば、"自分はねえ"とバッサリ外山さんに切られて大爆笑する二人。そんな二人のやりとりに、ゲストである新保信長さんの奥様であり、「重版出来!」の漫画家である松田奈緒子さんの感想がこちら↓
ゴロウデラックス面白かったん。スタッフロールが手書きなのも気が利いてますね。吾郎ちゃんと外山さんの姉弟感あるやりとりも笑ってしまった。吾郎ちゃんはお顔が超小さかったらしいでふ!
— 松田奈緒子 (@mazdanaoko) 2017年6月15日
うん、姉弟だね。実際の年齢からすると兄妹なんだけど姉弟感満載。
山田くんの消しゴムハンコ
阪神ファンの新保さんらしく、法被に阪神タイガースの歌詞を添えて。あまり字に自信がない山田くんですが、吾郎さんは「ぞ」を褒めてました。ピンポイントでw
そして最後のスタッフロールは『字が汚い!』の内容に沿い、個人の名前はすべて実際のスタッフの手書きという素晴らしさ。放送を見ていた新保さんも、
終わったので言いますが、『字が汚い!』ネタで「ゴロウ・デラックス」に出ました。スタッフロールが手書きなのがよかったです。
— 新保信長 (@nobunagashinbo) 2017年6月15日
『ゴロウ・デラックス』の良さは課題図書に対して、トータルパッケージでプレゼンをするところなんだと思います。MCだけが突出するのではなく、編集だけが突出するのではなく、構成だけが突出するのではなく、すべてがバランス良く、しかも最高の水準で視聴者へとプレゼンしているから面白いし、課題図書を手にしてみようという気にもなる。本当にファンの贔屓目なしに、回を重ねるごとに良さが増していく『ゴロウ・デラックス』
一人でも多くの方に見ていただきたい番組です。
ちなみに、筆跡診断士として出演された林先生が、ブログやFacebookで番組出演の感想を語られていますので紹介しておきます。
そして恒例、『Book Bang』さんによる『ゴロウ・デラックス』新保信長さん出演回の記事がこちら↓
というわけで、TBS、並びに公式HPにも番組の感想をお願いします。