【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『ウォークインクローゼット』と『ゴロウ・デラックス』

2016年6月4日に放送された『ゴロウ・デラックス』第208回目のゲストは、史上最年少の19歳で芥川賞を受賞された作家・綿矢りささん(32歳)

その綿矢さんが芥川賞を受賞した年齢、19歳のころの吾郎さんはといえば「二十歳の約束」でSMAPメンバーの中で初の月9主演。「それ以来、お話ないんですが」と自虐的ですが、吾郎さん格好良かったのでDVD化してくれないかしら。

普段はTVに出演されることがほとんどない綿矢さん。出演してくださった経緯を吾郎さんが尋ねれば、実は前年の西加奈子さん宅のお花見に参加した吾郎さん。綿矢さんは日にちを間違え、翌日に西さん宅へ行ってしまい、実は吾郎さんが参加していたのを知り、その日は吾郎さんが座った椅子を眺め、お会いしたかったなあと思ったのがきっかけなのだとか。しかし『ゴロウ・デラックス』を見て思うのは、意外に縁というのは続いていくものなんだなと。こうやって繋がった縁から、滅多にTV出演されない作家さんが出てくださる。もちろん、そこには稲垣吾郎というネームバリューも手伝っていますが、続けていくことでこの番組の縁はさらにどんどん広がり、この先も思ってもいない方の出演が望めるのかもしれませんね。

まずは19歳の芥川賞を受賞したときのVTRへ。もちろん、初めてマスコミの前に立ち、言葉を発する綿矢さんは吾郎さんが言うように凄い緊張で、ぱっと見、怒っているようにも思えます。受賞から生活は変わったのかと尋ねる外山さんに、学校に行くときにちょっと緊張するぐらいで、次の作品を、次の作品をと考えていたためにそこまでの変化はなかったと。

ちなみに「蹴りたい背中 (河出文庫)」は『アイドルオタク・にな川とにな川に恋する女子高生ハツの切ない恋模様を描いた青春恋愛小説で、日常の出来事を毒があったり、ちょっと痛かったりと綿矢さん独自の視点で描き、さらに切ない片思いの気持ちを蹴りたい背中というなど、独特の文章表現が高く評価された』そうです。一応、芥川賞受賞の際の選評の一部がまとめられていますので、興味のある方はどうぞご覧くださいませ。

 

prizesworld.com

 そんな綿矢さんをゲストに迎えた今回の課題図書はといえば、

 

ウォーク・イン・クローゼット

ウォーク・イン・クローゼット

 

 

28歳OL、彼氏なし。素敵な服で武装して、欲しいものを手に入れたい主人公早希。その早希が服選びに対する思いを吾郎さんが朗読します。 

 

 

時間は有限だ。
でも素敵な服は無限にある。
年齢に合わせて似合う服は変わると分かってはいても、ガーリーで清楚なモテファッションを卒業するのは彼氏ができてから。
とはいえ二十八歳にしては痛いと思われないように、微妙なさじ加減でシックな色合いや短すぎない丈を選び、フラワープリントやリボンはワンポイントにおさえる。正直言って、大人の洗練されたデザインの服を着たいなと思う日もある。
いつもとは違った店で、シャープなストライプシャツに、メンズライクだけど細身でヒップラインが美しく見えるパンツを夢中で品定めするけれど、レジに持って行く直前でいつもやめてしまう。
こういう辛口ファッションって、仕事はできそうに見えても男の人にモテないんじゃないか。
純粋に“好き”を一番にして選んでいたころと違い、現在の私のワードロープは“対男用”の洋服しか並んでいない。

        『ウォーク・イン・クローゼット』一部抜粋

 

 

朗読が終わって開口一番、綿矢さんは「読んでいただくとすごい感動しますね。頭の中で書いていたようなことを」と嬉しそう。確かに頭の中で想像して書いていた物語が朗読することで違う形で自分の前に出てくるわけですから、映像化も作家さんにしてみればそういった違う感動があるのかもしれないですね。

そして朗読した箇所を女性なら共感できるのでは、外山さんとか……と吾郎さんが呼びかけた瞬間、爆笑する外山さんが好きですw 外山さんは誰が相手であろうとも自然体な感じがします。

この小説を書いたきっかけというのは、着たい服とこういうのを着たほうがいいのかなと思う服との違いについてクローゼットの前で考えることがあり、仕事用や友達に会うとき用の服はあっても一番自分が着たい服がなかったので、これは服が手に入るからこその悩みだなと思ったところからで、吾郎さんは男性でも共感する人は多いだろうとコメント。

次に早希がデート相手の男性の部屋へ初めていく話を吾郎さんが続けて朗読。

 

 

全体的にきれいだったが、特に寝室のベッドが清潔そうな水色のベッドカバーできちんと整えられていて、なんかこいつスタンバってないか恐れの目を向けた。

        『ウォーク・イン・クローゼット』一部抜粋

 

 

男の人は女性が来るときにはベッドを整えるというイメージが確かにあるかもしれないと口にする外山さんに対し、吾郎さんは誰も来なくてもすごく整える。毎朝5~10分はかける。帰ってきたときに前の自分の雰囲気をまとっている。昨日の夜につけた皺とか。昨日の自分にまた吸われて寝ちゃう感じがしてと。これはスゴくわかります。なんというか、疲れて帰ってきて寝室に入り、皺のあるベッドを見ると脱力しそうになるんですよ。ああ、ダメだ、みたいな。でも吾郎さんと一緒で潔癖じゃないから←

次に綿矢さんの作品年表を。1984年に京都府で生まれた綿矢さんは、2001年に「インストール (河出文庫)」で第38回文藝賞受賞を受賞。当時17歳の高校3年生ということもあり、1981年に受賞された堀田あけみさんさん以来の最年少タイ記録。しかも一番初めに書いた小説がこの作品だったそうで、子どもの頃は読む専門だったのだとか。それがなぜ書くことになったのかといえば、大学受験が大変で、勉強しているふりして他のことをしたいという気持ちからで、やはり才能があったのでしょうね。

その綿矢さんが芥川賞を受賞した「蹴りたい背中 (河出文庫)」のときは早稲田大学の2年生19歳で、最年少での受賞は社会現象ともなり、157万部の大ベストセラーとなりましたが、その直後に大スランプに陥ったそうです。小さく収まるよりは壮大な物語を書いたほうがいいのかなと受賞に対し気負っていたところがあったのか、作品が書けず、書いても没を食らってしまい、なかなか次の作品が出せず、夢破れて京都に戻り、ショップ店員や結婚式の配膳係などのバイトをしていた時代が6年ほど続いたそうです。ただ結果として、その当時小説が書けずにしていた仕事が綿矢さんにとっての良い糧となったと口にはしているので、やはり人生無駄なことは何一つないんだなとは思います。無駄にしない人だから成功していると言ったほうがいいのかな。

そのスランプ脱出の作品が、

 

勝手にふるえてろ (文春文庫)

勝手にふるえてろ (文春文庫)

 

 

スランプ脱出は自分の書きたいものを書いた結果、受賞という呪縛から吹っ切れたのだとか。その後、6年間で7作品と精力的に小説を発表。それらの小説の特徴は個性的な女性が主人公であるということで、今回はスタジオ生芝居でその女主人公たちを今、演劇界注目の個性派女優である根本宗子さんに演じてもらうことに。

 

gekkannemoto.wix.com

 

natalie.mu

 

片思いをする妄想彼氏と現実の彼氏との間で悩む妄想恋愛小説である「勝手にふるえてろ (文春文庫)」より、女主人公である良香が妄想彼氏イチへの片思いが募りすぎて、現実の彼氏ニを振る「恋に恋する処女OL」シーンを。

自分のことを好きと言ってくれる人がこの世に存在するっていうことに初めて目を向けるのを書きたくて。主人公は自分の中で完結しちゃってる子なんですけど、恋愛とか人と付き合うのはそうじゃないんだろうなと気づき始めるのが書けたらいいなあと思って書かれたそうです。続いてが

 

ひらいて (新潮文庫)

ひらいて (新潮文庫)

 

 

高校生による禁断の三角関係を描いた恋愛小説。女主人公の愛が片思いの男子たとえを彼女である美雪から奪う手段として美雪を陥れるためにレズ関係を結ぶというむちゃくちゃな物語。その愛がたとえに美雪との肉体関係を暴露するシーンを。

こんなことで人の心が手に入るわけはなくて、でも衝動というのが身体から飛び出たときに変な方向に行くというのを真剣に書いてみたかったそうです。

根本さんはしっかり嫌な女性として演じていましたが、愛を演ずる際は吾郎さんを見ていたそうですが、目を反らしてしまったと。たとえ君になれなかった吾郎さん。うん、今はMCの稲垣吾郎を演じていますからね、たとえ君にはなれないでしょう。いつか吾郎さんが口にしたように、根本さんと舞台の上で共演する機会に恵まれるといいなとは思います。そう、『ゴロウ・デラックス』は意外な縁が続く番組ですから、ないとはいえないですよね。その演技を見た綿矢さんも自身が思い描いていたイメージが出てて良かったと。普段、TVに出演されることのない綿谷さんが番組を、そして自身の作品を吾郎さんの朗読を、そして根本さんの演技を通じて楽しまれたのも良かったです。

最後の山田くんの消しゴムはんこは、『ウォークインクローゼット』ということでいろんな服を選ぶということで綿矢さんがそれぞれのファッションを楽しんでいる姿も可愛らしく素敵な作品でした。

というわけで、よろしければ公式HPに番組の感想をお願いします⇒『ゴロウ・デラックス』ご意見・ご感想大募集!| TBS