【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

無私の日本人と『ゴロウ・デラックス』

2016年5月12日に放送された『ゴロウ・デラックス』第205回目のゲストは日本の歴史学者(日本近世・近代史・日本社会経済史)であり、国際日本文化研究センター准教授でもある磯田道史さん(45歳)

磯田さんはかつて日本人が残した書物にはいまだ私たちも知らない物語がたくさんあるからとそれを発掘、難解な内容を解読して、わかりやすい現代の歴史小説とする古文書ハンターとして活躍しています。

例えば2003年には『武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)』で第2回新潮ドキュメント賞を受賞し、20万部のベストセラーとなっています。2010年には堺雅人さん、仲間由紀恵さんらが出演し、映画化もされているためにご存知の方も多くいらっしゃるかもしれません。

その武士の家計簿を解読すると、お寺とか先祖を祀るための費用や親戚が1年間に数百回も来たりとかなり儀礼への失費がかさむため、武士であろうとも手持ちに残るお金は少なく、月々のお小遣いが3,000円だったりしたそうです。

また“紅縮緬小袖1丹420,000円”だったり、“古膳碗等1,100,000円”だったりと今とは違ったお金の価値観もわかります。

ちなみにスタジオに持参した武士の家計簿「入払帳」は日本中の図書館や文書館にはなく、古本屋さん中を磯田さんご自身が探し歩いて157,500円で購入した私物だとか。

そんな磯田さんをゲストに迎えた今回の課題図書は、

 

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

 

 

5月14日(土)からは中村義洋さんを監督に、主演に阿部サダヲさんを迎え、本編の一遍にあたる“穀田屋十三郎”を原作とした映画『殿、利息でござる!』も上映されています。14日の「テレビ朝日 | SmaSTATION!!」に阿部さんがゲストに来られて番宣された際、慎吾くんもコメディだけど泣けたと絶賛してました。

 

tono-gozaru.jp

 

今回は物語の登場人物である穀田屋十三郎を外山さんが、菅原屋篤平治役を吾郎さんが朗読します。 

なお、舞台は江戸時代の中期、仙台藩の吉岡宿(今の宮城県黒川郡大和町)となります。当時は長く続いた凶作のため貧困に苦しみ、夜逃げする者が続出していました。また吉岡宿は街道筋の宿場ゆえに、伝馬役といって街道を大名行列が通るたびに人馬を差し出さねばなりません。しかも他の宿場は藩から補助金が出るのに対し、吉岡宿は殿様ではなく家臣領地に属していたために支給対象外となり、補助金も出ないのです。この負担が重い。その貧困から脱却すべく、宿で生活する庶民たちは私財を投げ打ってある壮大な計画のために奔放することになりました。その宿場再生計画の中身が……

 

「いくら、あれば、この宿を救えるのじゃ」
「千四五百両」
「その金さえあれば何とかなるのか」
「左様、手段はある。何としても、金が欲しい。人を恵まんがための大願であるから、伐取強盗するわけにもいかぬが、それほど金が欲しい」
「いま、貴殿は人のための大願といわれたが、それは宿中みなが救わるということでござろうか。その金さえあれば、永代のうるおいがこの宿にもたらされるということならば、それがしこの身にかえても、なんとかしたい。その手立てとは何か」
「いや、さほどのこともないが……他でもない。その金子をいったんお上に差し上げ、年々、ご利息を頂きたいと願い上げるのだ」

 

             『無私の日本人 (文春文庫)より一部抜粋』

 

当時の藩は幕府の御用で金策に困っていたため、殿様相手に千両を貸し付け、その利息を補助金代わりにしようとしたのです。

 

国恩記(こくおんき)の人々 - 宮城県大和町公式ホームページ

國恩記 「國恩記」原文(菅原政治郎さんHP)

 

磯田先生はこの「仙台叢書(その中の一部が國恩記)」を東京大学の図書館で閲覧して泣かれたそうですが、この古文書との出会いもその仙台藩の吉岡宿(今の宮城県黒川郡大和町)に住まわれるとある老人からの便りがきっかけだったそうです。

 

hon.bunshun.jp 

 

そしてその後は磯田道史さんの幼いころからの歴史に没頭する人生が紹介されていきます。このときの年表はTBSの時代劇の美術さんによる古文書風な巻物で、中も達筆に書かれています。『ゴロウ・デラックス』は古文書が出てくるときには“なんでも鑑定団”のBGMを使ったり、こういった小道具などもさり気に凝っていて、いつもスタッフの遊び心に満ちているのも良いですよね。

9歳にして歴史に興味を持ち、当初は拓本(器や石碑などの凹凸を墨で写し取ること)をしていたこと。そんなに歴史が好きなのならば古い書付があるからと祖母に言われ、古文書に興味を示すようになるのが13歳。これを解読して読みたくて仕方がなかったところ、高校生で古文書解読辞書と出会い、無事解読に成功するようになったと。

 

近世古文書解読字典

近世古文書解読字典

 
くずし字用例辞典 普及版

くずし字用例辞典 普及版

 

 

辞書を手に入れてから読めるようになるまで、学校の勉強は止めることにしただとかw

19歳には読みたい本がたくさんあるという理由で慶應大学に入学し、朝から晩まで図書館に通い詰め、2ヶ月後には根を詰め過ぎたせいで倒れた無茶エピソードもあり、どれほど磯田さんが古文書を、歴史を愛しているのかが伝わってきます。

またご自宅に訪問し、大阪夏の陣(1615年)の首取り帳を見せていただくことに。単なる文字の羅列にすぎませんが、夥しい数にどれほどの殺戮が行われたのかが伝わります。最後の首数13,838という具体的な数字に、戦争というのは無残であるとはわかってはいましたが改めて絶句させられました。

実際の磯田さんがお持ちの古文書の中から貴重な江戸時代の忍法帳をスタジオに。ただ、忍法帳といっても筆者は加賀藩前田家の忍者だからか、あまり忍術のレベルが最高級ではなく、たとえば犬を黙らせるには“アヒラウンケン×3回言えば犬は黙る”と意外に笑えることも書かれているそうな。実際に試さずにはいられない磯田さんが試したところ、余計に吠えられたというのも磯田さんという人となりがよくわかるものでした。

結婚も36歳で出会った女性に一目ぼれし、結婚を前提にお付き合いをとナンパをしたと。その1週間後、連絡も取っていなかったその女性からいきなり「上野の美術館で日本画の展覧会をやっているから一緒にいきませんか?」と誘われ、行ったのが今話題な伊藤若冲の展覧会。俄然に張り切った磯田さんがいろいろ伊藤若冲の絵を見ながらエピソードを語っていくうちに、周囲の人も学芸員と勘違いしたのかイヤホンガイドを外して磯田さんの解説に聞き入り、最後には拍手で迎えられたのだとか。そんな磯田さんに彼女は「あんたは靴も汚いし、お風呂にも入っていなさそうだし、え?と思ったんだけど、面白さに負けた。付き合ってください」と言い、今に至るのだとかw

ついでにいえば、磯田さん曰くここがMC二人の食いつきが一番良かったエピソードらしいです。さりげないコメントですが、そう気安く言えるほど、現場の雰囲気は心地よく、磯田さんもリラックスされているのが伺えます。

 

そしてこれからについて。

当時は忍法帳の研究を楽しもうとしていた矢先、東日本大震災が発生したと。日本が地震の活動時期に突入したため、地震津波を昔の古文書から読み解く研究を行うことにしたそうです。

実際、今回の熊本地震気象庁では大分まで北東方面にどんどん地震が拡大していくので、観測史上例を見ない不思議な地震だと言っているそうですが、歴史上では400年ぐらい前に東北に大津波が(慶長三陸地震)、その8年後に熊本で今回と同様な地震が起こっているのが古文書に残されているそうです。※今回は東日本大震災の5年後

これは気象庁が自身で近代的な観測をし始めた明治20年以降が対象となるために観測史上例を見ないという言葉が出るだけであり、もっと長い歴史の上で見るといろいろなことがわかると仰っていました。ちなみに、そのとき持参したフリップは磯田さん自身が手書きされたらしく、命にかかわることだからと前の晩にドン・キホーテで買って作られたそうです。歴史上の詳細については、下記の記事で『ゴロウ・デラックス』と同じ内容が磯田さんの口から語られていますので興味のある方はご確認ください。

 

www.asahi.com

 

今回は冒頭で吾郎さんが本の感想についてすごい面白かったと口にし、磯田さんの登場前に今日は勉強しましょうと言っていたとおり、すごくためになるお話が多かったと思います。また歴史を愛し、それを仕事とし、今もなおかつてと同じだけの情熱を傾ける磯田さんに面白くてしょうがないでしょうねと語っていた吾郎さんが本当に楽しそうだったのが印象的でした。

 

最後は恒例となった山田くんの消しゴムはんこ

今回は磯田先生と寛永通寶。以前に雑誌で収録の合間に……というコメントがありましたが、実際に山田くんの口から喋っている間にハンコを作ったという発言が。確か収録は1、2時間ほどと聞いたことがあるので、事前に構図とかは決めているとは思いますが、現場で見て、微調整しながらのクオリティがあのハンコになるのかな。

吾郎さんじゃないですけど、本当にプロですよね、もう。

 

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