【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『一発屋芸人列伝』と『ゴロウ・デラックス』《前編》

2018年7月12日放送の『ゴロウ・デラックス』第305回目のゲストは、話題のニュースや社会問題を取り扱った記事に贈られる“雑誌ジャーナリズム賞”*1を受賞したお笑い芸人・髭男爵山田ルイ53世さん(43歳)

 

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というわけで今夜の課題図書は今、世間で話題の1冊、

 

一発屋芸人列伝

一発屋芸人列伝

 

 

自身も認める一発屋芸人が数々の一発屋芸人たちを取材し、作り上げた異色の一冊。一時は社会現象となるほどのブレイクを果たした彼らの素顔とその後の人生とは?

登場早々、小さな声でルネッサンスと呟く山田ルイ53世さん。ゴロデラのしっとりとした空間にいつもの大きな声は合わないかなということで。

山田ルイ53世さんは2008年、髭男爵として「貴族のお漫才」としてブレイクするも、次第にTVなどの露出は下火に。しかし2015年、自身の半生を綴った『ヒキコモリ漂流記』でその文才が話題に。

 

ヒキコモリ漂流記

ヒキコモリ漂流記

 

 

そして2018年、今夜の課題図書となる『一発屋芸人列伝』も出版し、作家として再ブレイク中なのです。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 雑誌ジャーナリズム賞作品賞『一発屋芸人列伝』 

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過去に同じ作品賞を受賞した記事が上記となりますが、きちんと読むとその受賞した理由がわかると外山さん。もちろん、山田さんは素直に嬉しかったそうですが、取材した人たちは山田さん自身がリスペクトをしている方々たちなので、受賞したということはその人たちも認められたことなのではないかなとそういった意味の嬉しさもあったそうです。では一発屋とは一体何なのか。本のテーマがわかる部分を吾郎さんが朗読。

 

吾郎「多くの人々に愛され、真似をされた一発屋達の芸。
学校や居酒屋、メールやSNSでのやり取り……あらゆる場所で、彼らのギャグやフレーズが飛び交い、一発屋達の衣装を模したコスプレに身を包み、忘年会や新年会の余興を切り抜けるものが続出した。
程度の差はあれど、一発屋達は皆一様にお茶の間の人気者となり、その内の何組かは、“社会現象”と評されるほどの大ブレイクを果たし、時代の寵児と持て囃された。
そうして……僕達は消えた。
お伽噺であれば、
「末永く幸せに暮らしましたとさ……」
「めでたしめでたし……」
とその絶頂期に幕を引くことも出来るだろうが、現実はそうはいかない。
人生は続く。
本書で描かれるのは、サクセスストーリーではない。
一度掴んだ栄光を手放した人間の、“その後”の物語である」
一発屋芸人列伝』より一部抜粋

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain “一発屋芸人”とは

そもそも現代における一発屋芸人というのは山田さん曰く、かつてのようにあの人は今ではなく、まだ芸能界を辞めてはおらず、たまにテレビなどに出て、その負けている様を見せつけることでエンターテイメントに昇華している、ちょっと特別な枠のことであり、なおかつ自分から「一発屋」であることを言わないと周囲もそれを弄ることはない。よくレイザーラモンHGさんが“自首”と言っているのですが、「自分で自首してこないと一発屋にはなれない」そうです。だから葛藤が強いのだと。ドカーンと売れて、ピタッとお仕事が止まっていく中、“俺は一発屋じゃない。まだまだやれる、負けてない”という葛藤を観念し、負けをごくりと飲み込んだ人たちが「真の一発屋であると山田さんは言います。

それを聞き、ということは髭男爵さんたちも一発屋芸人でいいのか?と恐る恐る尋ねる吾郎さんに対し、“もちろん、もちろん”とあっさり頷く山田さん。ただし“正確に言うと0.8発屋”なのだとか。

 

二発屋:小島よしお(切手にもなったw)・レイザーラモンHG
一発屋ダンディ坂野
0.8発屋髭男爵・ジョイマン・クールポコ。

 

ちなみにレイザーラモンHGさんは仕事が詰まり過ぎて、移動にヘリコプターを使ったことがあるのだとか(さすがにないですね by 吾郎

というわけで山田さんが取材を元に一発屋芸人を徹底解説。

 

f:id:kei561208:20180621011801p:plain 一発屋界のアダム and イブ<テツ and トモ>

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今から15年前の2003年の出来事といえば、小惑星探査機はやぶさが打ち上げられ、東京では六本木ヒルズがオープン。そして後に数々の人気芸人を輩出するエンタの神様が放送を開始。その年に空前のブレイクを果たしたのが、“なんでだろう~♪”というメロディに乗せたあるあるネタのテツ and トモ。その彼らを一発屋界のアダム and イブと山田さんが名付けたのは、その一発屋に起こる定番の出来事は大体がテツ and トモからすべて始まっているからだそうで。

流行語大賞にノミネート:2003年年間大賞「なんでだろう~」

これが契機となり、その年に大活躍したお笑い芸人のフレーズ流行語大賞にノミネートされるノリが出来上がった。例えば、2004年には波田陽区さんの「…残念!!」、2005年にはレイザーラモンHGさんの「フォーー!」、2007年には小島よしおさんの「そんなの関係ねぇ」などなど、お笑い芸人のノミネートは定番化。そしてもう一つが、

NHK紅白歌合戦に出演

今となっては定番となった「応援枠」として、はなわさんと「佐賀県なんでだろう」で出場。その際に、NHKで人気があった『爆笑オンエアバトル*2に出演していた若手たちも何人か応援に駆けつけ、芸人が紅白に出演する始まりとなり、髭男爵さんも2008年に出演。(大体皆さん、廊下のところでソワソワしてる by 吾郎

▶テレビではなく営業での活躍

実は芸能界屈指の営業本数を誇るテツ and トモ。とある1日で群馬→千葉→都内。そしてその前の日は香川でお休みはないそうで、ロケをした日も都内のショッピングモールで午前午後と2回のステージ。開場は吹き抜けまでお客様で満席。山田さんが取材した地点で、一発屋と言われてから10年以上経つのに、年間180本という営業本数。

もちろん、知名度もありますが、人気の秘密はそのご当地のあるあるネタを披露すること。お笑い芸人さんたちの多くはそういうご当地ネタを入れることはよくあるものの、テツ and トモさんが凄いのは、正式な仕事として主催者を呼び、取材をきっちりしてそれを披露すると。例えば会社のパーティに呼ばれたら、「会社の営業部の〇〇さんの部下の◇◇さんのお弁当毎日~~なんでだろう」みたいな、まさにジャーナリズのように相手に肉薄していく取材をされるのです。そうなれば取材され、ネタとして披露された側は嬉しくなってまた営業に呼びたいと思うのか、テツ and トモさんはリピート率がめちゃくちゃに高いそうです。

 

f:id:kei561208:20180621012743p:plain 一発屋の添え木<レイザーラモンHG

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早速レイザーラモンHGさんの「フォー」を真似てみるものの、若干トーンが違って山田さんに修正されてしまう吾郎さんw

今から13年前の2005年には小泉純一郎元総理大臣が率いる自民党が選挙で圧倒し、小泉チルドレンと呼ばれる83人もの新人議員が誕生。さらには今ではすっかり定着したクールビズはこの年から始まりました。ちょうどこの頃から、小梅太夫さんや波田陽区さんなど独特のキャラクターを演じて人気者となる芸人が多数出現。その中でも突出して話題となったのがハードゲイのキャラで大ブレイクを果たしたレイザーラモンHG

▶「一発会」

一発屋たちが親睦を深める集まりがあり、大抵は東京駅、もしくは品川駅の近辺の居酒屋で行われる。皆が地方営業に行くため、地方営業から新幹線などで戻ってくるときに集まりやすい東京駅や品川駅にしているとのこと。毎回、新たに「自首」してきた若い一発屋の方を“ようこそ”と。それを始めたのがレイザーラモンHGさんであり、ムーディー勝山さん、そして小島よしおさんだったりするのです。その中でレイザーラモンHGさんが決めているのは“ネガティブ”なことは言わないこと。“胸を張って堂々とポジティブなことを言っていこう”と。

 

一発屋は面白いからブレイクした。

エゴサーチをすると「死んだ」「消えた」という呟きが目につく。中には「面白くない」ことに対し、レイザーラモンHGさんは「卑下することは何もない。面白いからブレイクしたんや! 誇りを持って生きていけ」と発信してくれたおかげで、昔の一発屋企画だと一発屋大集合」みたいなものだったのが、最近では「久しぶりに見ると面白い芸人」とちょっと優しい目線が出てきた。

②自分の生み出したキャラに誇りを持て

⇒「伝統芸にしていけばいい」実際、レイザーラモンHGさんのハードゲイの芸は、ニューハーフさんが働いているパブに働きに行き、本当に人たちはどういう言葉を言っているのかを取材。さらにはそのまま演じるのでは失礼になるからと、その界隈の大御所の方に筋を通しに挨拶まで行き、5年間かけて作り上げた芸が「フォーー!」だったのです。

 

 

吾郎「ハリウッドの性格俳優みたい。何年かけて役作りしました。そういうところ、逆に見せなくていいし、視聴者にはね。芸人さんだからね。これ書いてくれてよかった」

そういう意味でも、山田さんは一発屋芸人と呼ばれる方々は実はこういう凄い人たちなんですよというのを書いて残したかったのです。ちなみに、今そのレイザーラモンHGさんの姿はというと……

 

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……マイク1本しゃべりの正統派漫才に転向ですってw

さすがに一番最初に見たときには山田さんも“裏切り者!”と思ったそうですが、コスプレ漫才から正統派への転向で、実際に賞レースなどでも結果を出し、世間的にも認められている。このリカバリー、再ブレイクの仕方が本当に理想で格好イイと。同じように体操服を着て、“ラララライ♪”でブレイクしていた藤崎マーケットさんも正統派に転向、関西の方で賞を獲ったりと再ブレイクを成し遂げてます。

とここでお時間が来てしまったわけで、でも今回紹介した人たちは本の中のごくごく一部ということで、次回もジャーナリズム・山田ルイ53世さんに一発屋芸人さんたちについて語っていただくことに。

 

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 山田ルイ53世さん&出版社Twitter

 

 

 

 

 

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*1:新潮社・講談社文藝春秋など、7出版社の雑誌編集者が世話人となって、1995年(平成7年)に始まった。大賞、スクープ賞、作品賞、企画賞、写真賞、話題賞がある。選考は投票形式である。

出版社、新聞社、フリーランスの編集者約100名が参加費1万円を払い、1月から12月の間に雑誌に掲載された特集記事や連載企画、手記などの中から各部門ごとに1点と2点を投じて、得票数の上位各2作を受賞作としている。編集者は、自分が属する媒体には投票できない。参加費用は、授賞パーティーと授賞記念品代に充てられる。出版社に頼らず、編集者有志が選考から授賞までを一切自前で運営している -Wikipedia-

*2:1999年3月27日より2010年3月26日までNHK総合テレビで放送されていたお笑い番組。若手芸人が漫才やコント、漫談などを観客の前で披露し、面白いと評価されたネタだけが選ばれてオンエアー(放送)される。つまりネタが面白くなければ放送されないという、自称「史上最もシビアなお笑い番組」である。