『オリンピア・キュクロス』と『ゴロウ・デラックス』
2018年8月2日放送の『ゴロウ・デラックス』第308回目のゲストは、2回目の出演となるヤマザキマリさん(51歳)
ヤマザキマリさんの仕事場を訪問ということで全編ロケで、今回の課題図書は、
ヤマザキマリさんの代表作といえば、2010年マンガ大賞を受賞した古代ローマの浴場設計技師が現代の日本にタイムスリップしてしまい、日本の風呂文化に驚きながらもそのアイデアを持ち帰って、古代ローマの風呂を発展させていく『テルマエ・ロマエ』
- 作者: ヤマザキマリ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2009/11/26
- メディア: コミック
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シリーズは累計900万部を超える大ヒットとなりました。
そして現在、超多忙な生活を送るヤマザキさん。 自宅のあるイタリアと日本を往復しながら、3つの漫画連載を抱えているのです。さらにロケがあった当日は締切日という💦ちなみに今回の課題図書となる『オリンピア・キュクロス』はオリンピック版の『テルマエ・ロマエ』で、オリンピック発祥の地、古代ギリシャの青年が1964年のオリンピックに湧く東京にタイムスリップ。日本との文化の違いをヒントに、様々なハプニングを解決していく物語。
一体、どんなところでこの漫画が生み出されているのかというと、
紙とかペンとかも見当たらず、漫画家さんのアトリエっぽくないという吾郎さんに遅いというか、古いというヤマザキさん。またアシスタントも働いてはいるものの、今はヤマザキさんが送ったデータを受け取って、それぞれの仕事場でアシスタントの仕事をしてもらう分業制を撮っているのです。そのデータを管理するのがiPadで、これさえあれば寝転んでいようが、トイレに入っていようが、イタリアに行こうがどこでも作業が出来るという優れもの。
昔は海外にいたヤマザキさんですが、まずそもそも原稿用紙を手に入れるのも一苦労で、原稿用紙からスクリーントーンや必要なものをすべて日本から送ってもらって描いて、それをまた郵便や宅配で送り返さなければいけなかったわけで、何かあれば本来なら3日で到着する荷物が1週間かかったりと締切にバリバリ遅れて到着することも多々あったわけです。それがiPadを使うことで、締め切りの30秒前まで作業が出来るという。
いまやデジタル化、漫画原稿を拝見!
ちなみに青いペンで文字が書かれてある部分がアシスタントへの指示で、データで渡されたアシスタントは、その青いペンで書かれた指示に従って作業をするのです。
まさにスティーブ・ジョブズ様々ですが、何か描いてもらいたいという吾郎さんのお願いに、その場でiPadに吾郎さんの似顔絵を描き始めたヤマザキさん。その作業の中でもトーンを貼る代わりに影を入れたりとペン1本で出来てしまうのです。しかも拡大も自由自在、年配の方にもオススメなのだとか。というわけで、会話をしながらもあっという間に完成した吾郎さんの似顔絵がこちら。
ヤマザキさんが描いた吾郎さんを"格好イイ!しかも"と言ってしまう外山さんに、「見た目で30年やってきたのに」と吾郎さん(おいw)ポンッと背中を軽く叩いてツッコむ吾郎さんに外山さんとの気軽な兄妹の関係が伺えます。そんな吾郎さんに描いてみたらとヤマザキさんが言うので外山さんを描いてみることに。
デジタル化を吾郎さんが初体験!
画伯……いや、でもそれなりに外山さんの特徴は、とらえ、て、いる、ような……そうそう、外山さんが言うようにゴッホみたい……じゃねえよ!(とうとう突っ込んだw)
必須アイテム①資料&愛読書
こちらの仕事部屋にはヤマザキさんの漫画に欠かせない本がたくさん。ただ、これは日本にいるときに使う本棚で、ヤマザキさんはイタリアとポルトガルにも家があるため、そちらの本も合わせるとエラい量になるそうです。
ローマ系の資料はもちろん、手塚治虫先生の漫画があったり、ふとしたときに読むと「これは必要なコマだ」とかを教えてくれる助けになるというか、アイデアが湧くそうです。またヤマザキさんの愛読書には、
これは疲れているときに読むと癒しになり、漫画のネタが出てこないときに読むとアイデアを供給してくれるし、シンプルな絵と込み入った背景のコントラストが凄く、"手抜きして描いちゃいけないな"という気持ちさせてくれる漫画だそうです。
そして隣の部屋にも気になるアイテムが。
実はこの壺絵は課題図書と深い関わりが……『テルマエ・ロマエ』の主人公は浴場設計技師だったのに対し、『オリンピア・キュクロス』の主人公は壺絵師見習い。一体、なぜ壺絵師という職業を選んだのか。
必須アイテム②ギリシャの壺絵
ギリシャといって多くの方が思い浮かべるのはやはり壺絵で、これは当時、すごい需要があった職業なのです。 単純に比較するのも難しいところですが、今でいうところの漫画家みたいなもので、一昔前ですと浮世絵師といったところで、伝えるための情報がこの壺絵に盛り込まれているのです。当時流行っていたもの、運動、恋愛ストーリーといったすべてが盛り込まれ、これがあるからこそ、現在の私たちはギリシャの歴史を知ることが出来るのです。例えば、
また当時の壺絵師がいかに漫画家に近い職業であったかがわかる資料も。
約2,400年前の壺絵がアノ漫画に似てる!?
まつ毛も描かれて、日本の二次元の絵というとこういったイメージですが、すごくギリシャの壺絵は近いなとヤマザキさんは思ったのだそうです。ギリシャのことはオリンピックもありますし、もっと知ってもいいんじゃないかなと。
オリンピック発祥の地、古代ギリシャを描く
今回のテーマは「運動」で、2020年には東京でもオリンピックが行われますし、ローマ人たちもギリシャ発祥のオリンピックというものにすごい熱意を持っていた人たちなので、ローマを辿っていくとギリシャにたどり着くのです。ちなみに『テルマエ・ロマエ』より500年ほど前の話になります。
ヤマザキさん自身はギリシャは好きでも何でもないのですが、古代ローマをやっていたら、やはり古代ローマ人はギリシャにすごい憧れを持っていて、「ギリシャには勝てない」というコンプレックスがあったそうです。古代ローマで知的な職業(医者・学校の先生etc)は全員ギリシャ人だったのだとか。ギリシャというのはそういうところで、精神性の豊かさを養う土壌があって、ローマというのはどちらかというと今のアメリカではありませんが資本主義的な部分が強いと。しっかりした考え方、哲学を持った人を雇いたいとなるとギリシャ人になってしまうのです。(吾郎:ちょっとヨーロッパ文化に憧れを持つみたいな)
2,400年前、日本でいうと弥生時代からすでに発達していた古代ギリシャ
現在も有名な哲学者ピタゴラスやソクラテス、プラトンもこの古代ギリシャ時代を生きた人たちなのです。しかし、そもそもなぜ古代ギリシャでオリンピックというものが誕生したのか。
古代ギリシャでオリンピックが誕生した理由
ギリシャは小さい島で出来ているわけで、その小さい島が一つ、ひとつ自治国家、日本の歴史でいうと戦国時代のように戦が絶え間なく行われており、死者も当然出るし、どうしたらいいのかと考えたときに、4年に1回は完全に戦争を止める年を作る。その戦争の代わりに運動競技を神に捧げるという意味で奉仕、その間は戦争はなし。そういう発想からオリンピックが誕生したのです。
皆で朗読
ヤマザキさん、さらに山田くんも参加しての朗読。登場してきた山田くんがギリシャ人っぽい格好をしているのを見るなりヤマザキさん、"本当だったら、ギリシャ人って「裸が一番美しい」って概念を持っているので本当は素っ裸(登場)"と。ギリシャ人にとって裸は崇高で神聖なものなので、『オリンピア・キュクロス』を読むとヤマザキさんって裸を描くのが好きなのねと思われてしまうかもしれないけれど、史実上、皆さん裸で競技をしていたのでしょうがないのです。
運動能力はズバ抜けているが争い事が嫌いな主人公・デメトリウスは、ある日、村同士のいざこざを解決するための競技会の選手に選ばれてしまい、思い悩む。
そんな中、なぜか1964年の東京にタイムスリップし、そこで出会った老人と共に町の運動会へ行くことに。
吾郎(これが……オリンピック……!? しかもこのポリスの神殿……ダッさ……!! 出場者は神殿に向かって走っているのに服も取らず、ここでは運動はむしろ喜劇みたいなものなのであろうか…一応、競い合ってはいるようだし……)
ヤマザキ「3等です。ごくろうさま~」
吾郎(―――――にしても、皆、笑顔で誰もが幸せそうだ。競技会なのになんなんだろうこの開放感は…!? 勝たなければ意味もなく、負けた後ろめたさをひきずる私たちの競技会とは明らかに何かが違う…)
山田「次のスプーンリレーに出場希望の方~、手を上げて下さ~い」
外山「君も一緒に出るかね」
吾郎「えっ、きっ、競技に出るのですか!?」
外山「ま…見ていなさい」
山田「それでは位置について…よ~い」
(ピィ~)
吾郎(何だ、この競技は!? タマゴを匙にのせて走る…!?)
(べちゃあっ)
山田「ぎゃっ、あちゃ~」
吾郎(精神を統一しなければあのタマゴを落とさずに走るのは難しい…早ければいいという訳ではない)
山田「ゴール」
吾郎(老人が勝った…?)
山田「浅吉さん、スゴイッ」
ヤマザキ「今年もおめでとうございまあす」
外山「うむ。これは紙でできとるんじゃよ」
吾郎(パピルス!? 黄金の……!? 競技に勝つとこんなに素晴らしい褒美が…)
ヤマザキ「ねえ、そんなにほしかったらひとつあげる。ぼく、ふたつあるから」
吾郎(全く何もしていないのに…運動選手の努力の褒美をただでもらうなんて…ここはやはり私も競技にでるべきだろう…この際、競技のやり方が間違って伝わってしまった人に正しいルールも教えておくか!!)
ヤマザキ「あら…突然雲行きが…」
山田「今しがたまでピーカンだったのにな…」
吾郎(運動は全裸で行うものだということを………!!!)
こうして元の世界に戻ってきたデメトリウス。選手も観客もどちらも楽しめる競技を古代ギリシャに持ち込み、運動の発展に貢献した。
朗読をしながら、きちんと登場人物が変わるたびに演じ分けていたヤマザキさん。多分、描きながら心の声が演技しているのだと思うというぐらいに、本当に上手かった。
タイムスリップ先が「現代」ではなく「1964年」
主人公・デメトリウスがタイムスリップしたのが現代ではなく、1964年だったのは、この時代の日本はまだ戦争の傷跡から立ち直ってはおらず、高度経済成長期に差し掛かってどう復興していこうとしているのか。隣に外国人が現われても今だと引いたりして後流に至らないかもしれないが、1964年であれば思いがけないことに対しての免疫がついていた時代なので、そこにいきなり2,400年前のギリシャ人が現われても拒絶はしない。こういうこともあるんだなと受け入れる。そういう時代が日本にもあったということを、2,400年前のギリシャだけでなく、日本を懐古するという意味でも再現してみたいなという気持ちがヤマザキさんにはあったのです。
必須アイテム③昆虫の標本
吾郎さんもさっきから気になっていたそうですが、昆虫は裏側のメカニズムだったり、同じ生き物とは思えないほど素晴らしいとヤマザキさん。もう見ているだけで想像力がメキメキと出てくるそうです。ちなみにこの標本の昆虫は南アフリカにしか生息してないらしく、さすがに自力で獲りにいくわけにもいかないのでネットで探して、これ可愛い♡というものを購入するのだとか。ただし、届いたものを標本に入れて飾るのは自身で行うそうです。絵画とかよりも好きなのだとかw
昔から昆虫が大好きなヤマザキさん。実はこの『昆虫図鑑』が漫画家の原点となっているんだそう。
5歳のときに買ってもらい、気に言った昆虫にはリボンのマークを記入していたヤマザキさん。ヤマザキさんはこの図鑑の絵を描く人になりたかったのだそうです。だから、この本はヤマザキさんにとってのバイブルで、漫画家になっていなかったら、虫を研究する人になっていたのかもしれません。
山田くんの消しゴムハンコ
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