【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『真実』と『ゴロウ・デラックス』

2018年5月17日放送の『ゴロウ・デラックス』第297回目のゲストは、芸歴54年、座右の銘は「媚びない・めげない・くじけない」まさにクールビューティーのパイオニア梶芽衣子さん(71歳)

1970年、映画「野良猫ロック」シリーズなどに出演し、優等生の女優はたくさんいると自ら非行少女のイメージでブレイク。そして1972年には映画「女囚さそり」シリーズの大ヒットで、70年代の映画界で最も客を呼べる女優として確固たる地位を確立。 

 

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実はクエンティン・タランティーノ監督も梶さんの大ファンで、彼の『キル・ビル』は梶さん主演の映画『修羅雪姫のオマージュなのは有名な話。今夜の課題図書はそんな梶さんの映画のような激動な71年間すべてを綴った著書、

 

真実

真実

 

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain モデル活動を経て17歳で映画デビュー

10代のころは雑誌モデルをしていた梶さん。自分でお芝居がしたいとか、歌が歌いたいとかで入った芸能界ではなく、スカウトされて突然放り込まれた世界でした。けれど、右も左もわからず、"出来ない、わからない"と言えば、「出来ない、わからないは言うな。新人とはいえ、ギャラを貰ってカメラの前に立ったらプロだ」と怒られ、見て学べと覚えていった世界。7年目を迎えて25歳の梶さんは婚約者との別れを決意します。そして、そのとき婚約者に言われた言葉が一生俳優として生きていくきっかけに。

 

【元婚約者からの言葉】 
「誰とも結婚するな」
「死ぬまで仕事を辞めるな」
2018年5月17日『ゴロウ・デラックス』より

 

梶さんご自身は結婚して、家庭を作って、子どもを産んで育てるのがで、実際にその婚約者とも一緒に暮らし、主婦業もしていたものの、不幸なことに映画「女囚さそり」がヒットしてしまうのです。ヒットした瞬間にその年の正月映画として2作品目が決まり、自分の預かり知らないところでどんどん、どんどんスケジュールが勝手に決められていく梶さん吾郎:わかります)

ヒットしてしまうということはこういうことなのかと。回りの人間も含め、翌日からすべてが変わってしまうし、何を言ってもOKだったと。そして映画会社との契約があり、仕事が辞められないのがわかった梶さんは「結婚をやめましょう」といい、結果、上記のような言葉を言われてしまうのです。ちなみに婚約者から結婚したら仕事は辞めてほしいと言われていたので、仕事と家庭を両立させるという手段はあり得なかったそうです。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 人生観・仕事観を変えたブロードウェイ俳優の姿 

その元婚約者の言葉を違えることなく、その後も女優業にまい進。当時はクールなヒロインを演じることが多かった梶さんですが、35歳のとき、3ヶ月のNY留学に行くことで人生観・仕事観ががらりと変わります。その該当箇所を吾郎さんが朗読。

 

吾郎ニューヨークでやはりどうしても観ておきたいのはブロードウェイで上映されている作品の数々です。

そしてその刺激は劇場だけでなく街全体から受けました。

 

(中略)

 

昨日まで劇場で主役を演じていた女優さんが、きれいなお花が咲いている植木鉢を抱えて歩いている姿を見かけたこともありました。
次のオーディションまでの間、彼女は花売りをしていたのですが、彼女を応援する人たちがこぞってその花を買っていくのです。
そうやってステージに立つ俳優たちを支えていて、お互いにそれを誇りに思っている。
芸術を愛する心で結びついた人々の姿はとても素敵でした」

真実』より一部抜粋

 

まさに世界中から凄いアーティストが集まる場所で、梶さんが食事に行った先にいたウエイターさんが動きがスマートで只者ではない雰囲気に話を聞いてみれば、ブロードウェイの役者さん。彼は日々、新しい芝居が上映されると自分に出来そうな役を観て、勉強し、毎日劇場に「今日、どうしてる〇〇の役?」と電話を入れるのだとか。そこで劇場の人が調子が悪いようなことを言えば、「僕が行く、その役が出来るから」とまさに自ら役を奪いに行くのです。そのとき彼が演じられる役は5役あり、しかもウエイターもタクシードライバーもするのですが、どれも一流だと豪語できるほど誇り高く、素敵だと梶さん。

そんな素晴らしい人々と触れ合う経験を得て、N.Yに行く前と後で何が変わったのかといえば、浮き沈みはあるものの、花を売らなくても、ウエイターやタクシードライバーをやらなくても演じる場所はあり、自分たちはとても恵まれた環境にあると。だから自分の心構えとして「どんな役でもやれ」と自分の背中を押された感じがして、日本に戻ってからは本当にどんな役であろうと演じるようになったそうです。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 俳優人生の転機…新しい役柄への挑戦

留学した後、偶然にもこれまでだったら受けていなかっただろう町のパン屋さんに住む子持ちのおばちゃんというオファーをいただいた(1982年「笑顔 泣き顔 ふくれ顔」*1)梶さん。そのときのプロデューサーさんに言われたのが、「やはり年は重ねていきますよね。こういう役もこなしていかないといけないのではないでしょうか?」結果としてそれをやってきたから今があると梶さん。だから、物凄くそのプロデューサーさんには感謝しているそうです。

そして話題はなぜか吾郎さんへと移り、怒濤の如く、梶さんが吾郎さんが出演した映画『十三人の刺客』へと質問を投げかけます。

 

吾郎:テレビでこんな人がこんなことしたら面白いとか、やっぱそういうこと考えて……。
梶 :冒険させるのが好き。
吾郎:冒険させるのが好きですよね、テレビ人って。バラエティもそうですし。やっぱり、皆さんずっとそれを考えていらっしゃるんで、僕もそこは断らずにやって。結果、何か"あれやらなきゃよかったな、あの役"って一度もないですし。
 :あの~、お出になった十三人の刺客を拝見して、ビックリしました。

 

2010年に公開された映画十三人の刺客」 

 

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十三人の刺客たちが世の中を糺すため、命がけで戦いを挑む相手が吾郎さんが演じた極悪非道すぎるお殿様。

 

 :あの……切られちゃうじゃない。
吾郎:はい、そうですね。
 :あれはショックじゃないですか。
吾郎:ショックですよね。
 :やっぱり。私たちね、古い映画人は、例えば日活さんが大事にしているスターさんを、例えば首を切って殺しちゃうとかね、もってのほかの時代だったのよ。
吾郎:あ、そういうもんなんですか。
梶 :そうなの。どうしてこの役を受けたのか、まず。
吾郎:はい、よく言われます。
 :オファーがあったのか、ご自分で出たかったのか、どちらだったんですか?
外山:ちょっとね、凄い役でしたもんね。
吾郎:そうですね、あのいまだにそういうふうに言っていただける方が多くて。
 :だと思う。
吾郎:やっぱり、何か自分の役者人生の中でも本当に大きな転機というか。
 :あ、やはり?
吾郎:そこから広がったことが多いので。
 :あ、やはりねえ。
吾郎:だからいまだにそう言っていただけることが多くてすごく嬉しいです。
 :そうですか。
吾郎:当時はですね、あの監督の三池さんから、三池監督からオファーをいただきまして。
梶 :あの役でって?
吾郎:そうですね。
 :へえええ。
吾郎:でも最初はそれを聞いてなくて、"十三人"だと僕は思ってて。
 :あ、なるほど。
吾郎:うん。ま、こういうお話だって言われて、まさかそのね、十三人が。
 :"十三人"がすっ飛んでましたね。あなた一人が光ってました。
吾郎:いやいや、そんな。
 :私は本当あのお世辞とかそういう、媚びるのダメなんで。
吾郎:こちらに書いてありますね(課題図書を見せる)
 :はい。あの、本当にね、感動しましたね。
吾郎:ありがとうございます。
 :だって難しいじゃない、あの役は。
吾郎:いや、もうそれがもう本当に申し訳ないぐらいに、意外とサラッとやらせていただいたんです。
 :あ、そう。それはやっぱりスッと入っていけたっていうのが凄いね。
吾郎:そうですねえ。三池さんの存在もやっぱり、監督の存在もすごく大きくて。
 :あ、そうなんですか。あの演技指導とか、そういう細かいこう芝居とかは?
吾郎:全くしないんですよね。
 :あ、そうなんですか。
吾郎:何かイメージとか、抽象的なヒントとかは与えてくれるんですよ。
 :ここ!こういうふうに稲垣さんやってくださいとか、そういう……。
吾郎:全くないです。だからすごくやりやすくて、そのまんまが面白いと思ってくださったらしくて。
 :じゃあ、やっぱり三池さんという監督が普段の吾郎さんを見てて、こういうものやらせたい、ああいうものやらせたいとかあったのかな?
吾郎:そう、それがすごく大きかったみたいで。何か僕が時代劇の衣装合わせのときに当たり前なんですけど、そのときにカツラ合わせて、衣装を着たときに、"ああ、やっぱりちょんまだなんだな"って言ったんですって。当たり前なのに、それ何か飄々としたときの僕の言葉が監督の中で印象的だったらしくて。ちょんまげに決まってんだろうと思ったらしくて、何かそれが不気味なお殿様にあってるな。その浮世離れした感じが、そのアイドルみたいな仕事をしてる自分の立場、僕の立場とリンクして見えたのかも。
 :だけどね、イメージ的にね、ちょっとこれマズいんじゃないかとかね。どちらかというと敬遠するようなお役じゃないですか。
吾郎:そうですねえ。いや何にも、何か全然考え、そこまで後になって言われるとは僕も思っていなかったので。あのもちろん、一生懸命やったんですけど、何か本当に真っ新な状態で現場に。
 :すっごく怖かったですよ。
吾郎:後、まあ、あのときは主人公が役所広司さんだったんですけど、凄くリラックスして臨むことが出来たんで、そのほか俳優さんにも。後、市村正親さんの存在ってすごく大きくて。何ともいえないあの、包み込んでくれる包容力ある優しいお方じゃないですか。本当に殿様気分で、人を殺めて、楽しくやらせてもらっちゃった結果、ああなっちゃったっていう。監督ですよね、だからやっぱりすごいのは、本当に。

2018年5月17日『ゴロウ・デラックス』より

 

⇒もう8年も前の話になるのに、いまだこうして絶賛される。そういう役に巡り合えるということは本当に幸せなのだなと思います。特に梶さんのようなはっきり物事を言われる方に褒めていただけることは。そしてそれに対し、自分自身の力ではないと謙遜し、監督や他の役者さんのおかげだと言える吾郎さんも素敵です。とあるインタビューで梶さんの「自信というのは謙虚さだと私は思います」というコメントを読み、梶さんがブログでも吾郎さんを褒めたのはそういう意味も大いにあるんだろうなと思いました。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 運命の役との出会い 

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それは28年間にわたって演じたドラマ『鬼平犯科帳』のおまさ。ある朝、新聞を広げたら"中村吉右衛門鬼平犯科帳」連続ドラマ撮影入る"という記事があり、こういう機会でもなければ共演できないと思い、急ぎ「何の役でもいいからやらせてください」と直談判をしに。ただし、記事に"撮影入る"とあるのはすでに何話かは撮っているだろうからレギュラーは無理だと思っていたら、このおまさという役は5話からの登場だったため、まだ配役を誰にするのか決まっていなかったのだとか。まさに運命的な役との出会いだったわけですが、2016年に28年間の歴史に幕を降ろした鬼平犯科帳

 

外山「自分なりに精一杯やり尽くしたつもりでしたから悔いはなかったものの、
「何もなくなっちゃったな」
というのが正直な思いでした。
どうしても出演したいと自分から懇願し、本当に幸せなことにおまさという素敵な役をいただき、『鬼平』は私にとってすべての中心となっていました。
そのおまさになることはもうありません。
けれど、私の人生はこれからも続いていくのです

真実』より一部抜粋

 

ドラマもいろいろやってきた梶さん。必ず終わりは来るものの、あんなに皆で打ち上げで泣いたドラマも珍しかったそうです。28年間続いたものがなくなる、その寂しさに打ち上げを終えてホテルに帰り、明日から撮影所に行かなくていいんだ。このホテルとも今日でお別れなんだ、と思うとまたそこで泣けてしまったり。ただ終わってすぐに音楽プロデューサーの鈴木慎一郎*2が訪れて、芽衣子さんに歌ってほしい」とロックを提供。当初は自分にロックなんてと思った梶さんでしたが、楽曲が良く、今は一番歌っていて楽しいそうです。

 

追憶

追憶

 

 

 :歌ってて楽しくなっちゃって、今ね、一番楽しい。
吾郎外山:へえ。
 :吾郎さん、お歌はやめてないんでしょ。
吾郎:もちろん、もちろん、はい。

 :もう絶対続けてね! この間ね、ライブやって、これ以上元気をもらえるものはないと思った。
吾郎:ライブって僕らが元気を与えてるつもりでもらってますもん。
 :そう思った?
吾郎:いつも思ってますよ。
 :あ、そう、やっぱり。私もそう思ったんですよ。
吾郎:あんなに疲れることやってるのに、全然疲れない。
 :ねえ!
吾郎:続けてくださいよ。
 :もう頑張りたいと思います。
吾郎:後、ライブでトークコーナーを設けてください、いっぱい。
 :そう?
吾郎:こうやってお話するコーナーを、ライブのMCを1時間ぐらいやってください。
 :それじゃあ、さだまさしさんになっちゃう(笑)
吾郎:ロックにあってます、お話が。
 :ロックにあってる? 本当?

2018年5月17日『ゴロウ・デラックス』より

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 山田くんの消しゴムハンコ

 

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梶芽衣子さん、本当に素敵なゲストでした。

 

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 梶芽衣子さんブログ&出版社Twitter

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*1:1982年4月12日から同年7月26日までフジテレビ系列で放送されたテレビドラマ。放送時間は毎週月曜20:00~20:54

*2:実はこの鈴木慎一郎氏の実父である鈴木正勝氏は、43年前、梶さんのホリプロでメインプロデューサーだったという不思議なご縁が。