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- 考える葦 -

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『祖父江慎+コズフィッシュ』と『ゴロウ・デラックス』前編

2016年7月7日放送の『ゴロウ・デラックス』第211回目のゲストは、装幀の常識を覆すデザインで注目を集めるブックデザイン界の巨匠、祖父江 慎さん(57歳)

ブックデザイナーとは本の作者の製作意図に沿いながら、自身の視覚的表現及び感覚などの技術を動員して、本の表紙や使用する紙の種類、書体まで本を総合的にデザインする仕事をいいます。

祖父江さんは人気ブックデザイナーということで、大量のお仕事を抱えていらっしゃるためにお越しいただくのではなく、祖父江さんの事務所に『ゴロウ・デラックス』一同が行こうということで、今回は東京中目黒にあるデザイン事務所“コズフィッシュ” に。

出会って早々、吾郎さんに向かって「高いのですね」と祖父江さん。そう、SMAPには183cmもある長身の慎吾くんもいるし、ジャニーズの中では平均身長が高いグループになるのでわかりにくいですが、吾郎さんはそれなりに上背はあるのです。

事務所内を案内されて歩けば、通路という通路には大量の本が。これはすべて資料。もちろん、奥にはこれまで祖父江さんが手掛けてきた本も置かれており、その量だけでも膨大。そのお仕事の中にはこれまで『ゴロウ・デラックス』に出演くださった作家や写真家の方々の本も並んでいます。

祖父江さんといえば奇抜な装丁で注目を集めることが多いですが、文字や書体、文字組みにこだわりがあり、本文が読みやすいため、依頼する編集者からも熱い信頼を得ています。そんな祖父江さんの本日の課題図書はといえば、

 

祖父江慎+コズフィッシュ

祖父江慎+コズフィッシュ

 

 

こちらの本ではこれまでされてきた祖父江さんの主立った仕事を「コミックス」「読み物」「ビジュアル」「コズフィッシュ以前」の4カテゴリーに分け、祖父江さん自らによる解説付きでまとめられています。

改めて読むことで自分が読んできた本の多くが祖父江さんによるデザインだというのを知ったMCのお二人。課題図書を読んだ吾郎さんは書籍にまとめられたデザインに被るものがないことに気づきます。例えば画家であれば作風というものがあるように、本を読んでも祖父江さんっぽいものがないと鋭い指摘を。そうなのよと吾郎さんの指摘に喜んだ祖父江さんは作風が苦手らしく、なるべく同じデザインにならないように、ノウハウにならないように、癖にならないように注意して装丁を作るそうです。というわけで祖父江さんのこだわりとして、

◆カバー……本の顏となるカバーは作家や編集者にデザインプランを提示、話し合いながら決めていきます。たとえば、さくらももこさんのエッセイ三部作では、

 

あのころ (集英社文庫)

あのころ (集英社文庫)

 

 

まる子だった (集英社文庫)

まる子だった (集英社文庫)

 

 

ももこの話 (集英社文庫)

ももこの話 (集英社文庫)

 

 

漫画らしくないものがいいと思い、輪郭線のないカバーを描きませんか?とさくら先生に提案したところ、1巻目ではさくら先生がゆで卵の殻を砕いて、それに色を塗り、貼り絵のようにまる子ちゃんを描き、さすがに懲りたのかw、2巻目ではフェルトを使ってまる子ちゃんを、3巻目が出るときに“もうちょっと細かいのとかどうでしょう”と祖父江さんの言葉に砂絵になったと。

  

天才バカボン (1) (竹書房文庫)

天才バカボン (1) (竹書房文庫)

 

 

天才バカボン (16) (竹書房文庫)

天才バカボン (16) (竹書房文庫)

 

  

赤塚不二夫先生の単行本カバーのデザインの打ち合わせに行ったところ、“漫画にデザインはいらないよ”、“漫画は安く読み捨てでいいからデザインなんていらないんだよ”と当初はブックデザインを断られたそうです。むしろ自身の著作であろうとも読者は『天才バカボン』という本を買いに来るのだから、作者の名前すら不要だと赤塚先生は考える人だったのだとか。けれど祖父江さんがいろいろなプラント持っていくうちに彼のアイデアを面白がるようになり、最終的には面白くしてくれるのなら自由にしてくれと前面的に任せてくれるようになったそうです。なお、巻が進むうちに肌の色すら変わっていったのも赤塚先生自身が“キャラクターの肌が肌色である必要はない”というお言葉をいただいたため、結果、どんどん壊れてしまったのだそうです。

  

 

 

楳図かずお先生の『恐怖』は、作品の怖さを際立たせるために裏表紙に鏡を貼っているのですが、よく見るとその鏡には違う人物が映る仕掛けに。さらに小口と呼ばれる場所にも印刷が施されており、読み進めていくうちに人物が浮かび上がってくるという、まさに『恐怖』仕立て。

www.daiichiinsatsu.co.jp

ただ祖父江さんとして読んでもらっている最中には気づかれないよう注意はしているそうです。ブックデザイナーとして作品の邪魔をせず、二度目、三度目に読まれる方があれ、最初気づかなかったけど、こんなデザインになっているのだと気づかれる程度に慎んでいるのだそうです。ただ、時々やりすぎて読者の方に怒られることもあるのも事実ですがw

◆手触り……本を触ったときの感触も考える祖父江さんの考えを吾郎さんが朗読。

 

 

本一冊を読む時間というのは人によってそれぞれ違うけれど、そんなに短いものではない。

一冊を読み終わるまでずっと手とのコミュニケーションが続いている。なので、外回りや本文の手触りって、大切だったりする。

表紙やカバーの表面をデコボコさせたりするなどの加工を施すと、ちょっと違う時間を過ごすことができるし、定期的にページをめくる指先の触感には本文用紙の役割が大きい。

暖かいのか冷たいのか。

くたくたなのか張りがあるのかなどで文章に向かいあう読者の緊張感も変わっちゃう。

           『祖父江慎+コズフィッシュ』 より一部抜粋

 

 

 読者は気づかないうちに感じていることで、ブックデザイナーとしてはさりげない計らいのある手触り。中でも様々な手触りを楽しめる本が、

 

どすこい(仮)

どすこい(仮)

 

 

お相撲さんのお話ということで表紙の力士には暑苦しいほどの汗が散らばられています。実はその汗に加熱で樹脂を盛り上げる特殊な印刷方法を使い、その部分だけゴムのような手触りを感じられるよう演出しているのです。また見返し(遊び)の部分も油肌というか、デコボコさせた用紙にグロスをかけた特殊な演出も行っているのです。もちろんデザインによっては予算が高くなりますが、そもは想定内。上の例でいえば京極夏彦氏は売れる作家さんとなるため、割にブックデザインに予算を高く見繕っても重版出来もできるはずだから元は取れると出版社も判断し、OKを出してくれるのでブックデザインに遊びを入れても大丈夫なのです。つまり、その作家によっての予算とデザインのやりくりを考えるのもブックデザイナーとしてのお仕事なのです。

吾郎さん曰く、最初の構想が一番大変なのか?という質問に対しては、構想はすぐに出るものの、それを決めて形にするのがやはり一番大変だと。その中でも特に形にするのが大変だったのが、

 

言いまつがい (新潮文庫)

言いまつがい (新潮文庫)

 

 

言い間違いを間違えた本で本の作り方も間違えたものを作ろうと印刷所も巻き込み、それぞれ「言いまつがい」「金の言いまつがい」「銀の言いまつがい」ともに背の角度が揃わないようにしてしまったと。特に「銀のいいまつがい」では

 

銀の言いまつがい (新潮文庫)

銀の言いまつがい (新潮文庫)

 

 

本体の背を固めるための素材テープをあえて表紙の上からも貼り、補強したかのような装丁にしてしまったという。ただこのアイデアを形にするためには背を印刷する機械を途中までしか印刷されないように分解したのですが、印刷は出来たものの、機械が元に戻らなくなり1台ダメにしてしまうというハプニングが。

外山さんはそれを聞き、印刷会社との関係がそういうアイデアであろうとも形にしてくださるのか尋ねると、お互いがデザインを形にするために命がけだからこそ、アイデアを形にすることに必死になってしまうと祖父江さんは答えます。ただ、本屋さんもこの装丁に気づかず、レジでようやくそのことに気づき、その場で表紙についたテープを剥がそうとする出来事も発生してしまったのだとかw

そんな祖父江デザインの中でもひと際強烈なのが、

 

 

吉田戦車先生の代表的なギャグマンガ、シュールなネタ満載なこの本に祖父江さんは“うまくいかないくすぐったさ”を感じ、乱丁・落丁だったり、白紙を入れたり、同じページをわざと入れたり、ありとあらゆるミスを入れ込んだそうです。その結果、見た人は印刷ミスということで返品の嵐に。本についているしおりも、本来であれば目印となるように本からはみ出るところを短くして本の中に収めてしまったり。そりゃ、返品の嵐になるはずですw

さらに祖父江さんは読んでいるだけではわからない場所のデザインにもこだわるそうで、外山さんがそのこだわりを朗読。

 

 

本には、ふつう読んでいただけじゃ目の届かない場所がある。

なぜか本の顏でもあるはずの本体表紙も最近そうなってきてしまった。

出版社がカバーデザインにばかり予算をかけるようになってからは、カバーを外した本来の表紙って空しい姿になっている。

読者も見ない場所になってしまった。

ただ、見捨てられた本体表紙って予算はかけられないけど読者のチェックが甘い分、自由度がある。

書籍には、ほかにも気づかれない部分っていっぱいある。

デザインして意味のない場所って、秘密基地での作業みたいで「どうぞ見つかりませんように」っていうワクワクがいっぱい詰まっている。

          『祖父江慎+コズフィッシュ』より一部抜粋

 

 

 実際、『祖父江慎+コズフィッシュ』にも隠れているデザインはあるし、同じように

 

新耳袋―現代百物語〈第1夜〉 (角川文庫)

新耳袋―現代百物語〈第1夜〉 (角川文庫)

 

 

怪談をまとめたこの本のカバーに中の本文をすべて印刷してしまうという前代未聞の試みが。それとは違ってもう一つが、怖い本ではあるものの、怖いことが起こらないよう隠れた場所に護符が印刷されているのです。

 

山田タコ丸くん 1 (アクションコミックス)

山田タコ丸くん 1 (アクションコミックス)

 

 

こちらの本はごく普通の4コマ漫画なのですが、一部が蓄光インキで印刷されているため、光を貯めた後に暗闇の中で読むと、本来の4コマとは違う別のオチの漫画も読める工夫もなされています。ただ、あえて蓄光インクで印刷がなされていると告知はされていないため、ファンであってもその仕掛けに気づいていない人も多いのだとか。確率は低いものの、たまたまその本を読んでいるときに電気を消したり、暗い場所で読むことになってその蓄光インクで描かれた別のオチを発見するのは楽しいじゃないがこの仕掛けの理由のようですが、まあ、祖父江さんの基本的なデザインの発想は常にそういう面白いというところから来るのでしょうね。

というわけで、残りは後編に続く→

 

www.bookbang.jp