舞台『LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~』千穐楽への流れと感想
2019年4月6日(土)よりBunkamuraのシアターコクーンにて幕が開いた『LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~』も、早いもので4月30日(火)にて千穐楽を迎えました。今回は初日を迎えて以降の千穐楽に至るまでの流れをケラさんらのTwitterなどで紹介しつつ、いつもながら簡単に舞台の感想を残しておこうと思います。
2019年4月6日(土)初日
明日からも頑張るよ。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月6日
大竹しのぶ・稲垣吾郎・ともさかりえ・段田安則+KERA、シス・カンパニー公演『LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~』開幕! | SPICE ... https://t.co/9jJVuJWZG7
2019年4月7日(日)2日目
『LIFE LIFE LIFE』2ステージ目終了。御来場感謝します。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月7日
初日だけだと判断し切れなかった部分も見えて、今日でなんとか演出家としての職責を果たせたのではないかという実感。
明日は休演日なので、今日明日は山積してる書き仕事を猛然とこなす。さっそくこれからやる。
2019年4月9日(火)3日目
2019年4月10日(水)4日目
『LIFE LIFE LIFE』本日も無事終了。今日は二階席で観劇。犬山と松永が観に来てくれた。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月10日
2019年4月11日(木)5日目
『LIFE LIFE LIFE』マチネ終了。本日は昼夜公演。俺は4人の俳優の楽屋を周り、調子はどうかと聞いたり注意点を促したり意見を聞いたりして、後ろ髪引かれつつ帰宅。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月11日
沢山の方を待たせている。また朝まで書くが、今日の仕事は、ちょっと書き上げられるか自信ない。
朝日新聞、劇評出ました。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月11日
しのぶさんベタ誉め。まあそりゃそうだよなぁ。
(評・舞台)シス・カンパニー「LIFE LIFE LIFE」 変わる設定、三つの人生の機微:朝日新聞デジタル https://t.co/BNA5BxWOsu
2019年4月12日(金)休演日
2019年4月13日(土)6日目
『LIFE LIFE LIFE』本日はシアター・コクーンで14時18時。スタッフもキャストもすっかり安定して絶好調。のはず。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月12日
パリで00年に初演された粋な小品喜劇。作家ヤスミナ・レザさんは出演も兼ね、大竹しのぶさんが演ってる役を演じた。NYでは稲垣吾郎君が演じてる役をジョン・タトゥーロが演ったそうだ。
2019年4月14日(日)7日目
さっき起きた。書き仕事が一杯で『LIFE LIFE LIFE』行けず。明日15時締め切りの原稿もあるが、なんとか明日ソアレは行きたい。その前に今日締め切りの『キネマと恋人』あとがきがあと半分。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月14日
大勢の執筆者がいる仕事は迂闊に具体的な誌名書けない。俺だけぶっちぎりで締め切り延ばしてもらってるから。
2019年4月15日(月)8日目
『LIFE LIFE LIFE』久しぶりに客席で観た。御来場ありがとうございました。とくに大きなブレはなく、安心。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月15日
だんだん短くなって、今日はついに上演時間83分になってた。テンポ良いのは歓迎だけど、後半ちと巻き過ぎかもしれない。
2019年4月16日(火)休演日
2019年4月18日(木)9日目
今日明日は有頂天のリハじゃ。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月19日
有頂天も俺も平成ラストライブ。27日はぜひ代官山ユニット「三浦俊一デビュー35周年記念祭」へ。4つ出るうちの1つですがそれなりにたっぷりやるです。
さて『LIFE LIFE LIFE』は今日14時18時、明日14時開演。それ終えたら残りもう10ステ切る。早いなあ。すぐ大晦日だな。
2019年4月20日(土)11日目
2019年4月24日(水)14日目
『LIFE LIFE LIFE』久しぶりに観たら今日は非常に良かった。毎日闘ってくれているキャスト、スタッフには申し訳ない気持ちにもなるが、この調子ならきっと大丈夫。と言いながら明日もチェック。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月24日
2019年4月26日(金)休演日
2019年4月27日(土)16日目
俺はライブだが、今日も渋谷シアター・コクーンでは『LIFE LIFE LIFE』を昼夜で上演。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月27日
いよいよラストスパートの時期ながら、一昨日も終演後、キャスト勢は反省会を様々な組み合わせで行なってくれていた。
コクーンで客席の真ん中にステージ作ることも滅多になくなった。もう一回は客席で観たい。
2019年4月28日(日)17日目
2019年4月29日(月)18日目
2019年4月30日(火)千穐楽
平成が終わることより、もう今年の三分の一が終わるという事実に呆気にとられる。そしてシス・カンパニー公演『LIFE LIFE LIFE』の千穐楽であります。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月30日
『LIFE LIFE LIFE』無事閉幕。
— ケラリーノ・サンドロヴィッチ (@kerasand) 2019年4月30日
キャスト、スタッフ、関係者の皆さん、お疲れ様でした。
御来場くださったお客さん、気にかけてくださった皆さん、ありがとうございました。チケット買えなかった方々、申し訳ありませんでした。
独特な面白さをもった戯曲でした。作者のヤスミナ・レザさんにも感謝。
千穐楽以降
【LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~】
— シス・カンパニー舞台制作 (@sis_japan) 2019年5月3日
皆様、ご来場、並びに温かいご声援をありがとうございました! pic.twitter.com/fA88qQtHFf
ある日の夜、宇宙物理学者アンリ(稲垣吾郎)と元弁護士でキャリアウーマンのソニア(ともさかりえ)夫婦は自宅の居間で、なかなか寝ついてくれない子どもに手を焼いていた。 そこに突然、来客の呼び鈴が鳴る。
何と扉の外には翌日に招待していたはずのアンリの上司であるユベール(段田安則)とイネス(大竹しのぶ)夫妻がいるではないか。突然の来訪に慌てふためく二人。 最近、研究が停滞気味だったアンリにしてみれば、上司を夕食に接待して、本当は大切な夜にするはずだったのに、出せる物といったら食べ残しのスナックくらいしかない――――……。
さて、こんな悲惨なシチュエーションから始まる3つのヴァージョンの物語は、果たして、どう展開していくのだろうか?
本来、13年ぶりの『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?』の再演を予定していたものの、年が明けてから原作者のエドワード・オールビー氏のご遺族の意向によって再演が不可となり、急遽の差し替えで上演が決まったのがこのヤスミナ・レザ氏の『LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~』だ。
初見でこの舞台を観たときの率直な感想は、急遽の差し替えにも関わらずよくぞここまでこの4人もあった、そして予定していた円形舞台で客席が取り囲むものにあう翻訳劇を見つけたものだと思いました。
アンリとソニア、ユベールとイネス。2組の夫婦が丁々発止の末に迎える苦い結末を、ちょっとした性格の違いややり取りの違いで、タイトルどおり3パターン展開する物語だ。
膨大なセリフのやり取りはフランス劇作家らしくエスプリも効いて実に愉快で、1幕ではそこかしこで笑いが生まれる。
だが1幕が終わり、2幕が始まると気づくのだ。これは少しずつズレていく物語でもあるのだと。
主にズレが発生するのはアンリだ。1幕でユベールがアンリを負け犬だといえば、2幕のアンリは自虐的に「僕は負け犬です」と認めるところから始まる。そして2幕で自分の研究に似たものが発表されたのを気に病むアンリに誰かに聞けばいいとユベールがいえば、3幕のアンリはその発表をユベールに言われる前から知っており、同僚に同じような研究かを確認してもらっている最中なのだ。
つまり、1幕が彼本来の性格だとすれば、2幕、3幕のアンリを作り出しているのはユベールであり、ここからユベールとアンリの関係が伺えるし、この繰り返される物語の視点がどこにあるのかが何となくわかるような気もしてくる(気のせいかもしれないw)
そんなアンリに連動するかのように変質するのはイネスで、面白いのはユベールに這いつくばるアンリに幻滅しているはずのソニアだ。1幕ではユベールとの関係はないに等しいのに、2幕、3幕とアンリがしっかりしているのになぜだかユベールとの関係が深まる。
また1幕で何気に出た会話が2幕に、2幕で出た会話がさらに3幕へと、しかも少しずつズレて展開していく。
この綿密な会話劇に物語の面白さを感じるものの、同時に妙に座り心地が悪く感じるのは、ヤスミナ・レザ氏の作家としての怖さかもしれない。綿密でありつつ、明確な答えを出さない。それは観る側の想像をかき立てるものであり、同時に何ともいえないモヤモヤ感も与える。ケラ氏はそれを、
そう語っているが、まさにそのとおりなのかもしれない。
何気なく繰り広げられる会話のエッセンスから、何気ないキャラクターの動作から、何気ない会話から円形舞台が回転し、広がっていく距離にそれぞれの心情を感じ取ったりと、耳から、目から、観客が感じ取るものはとても多い。また明確な答えを出さないからこそ、幾通りの答えも出るし、円形舞台ゆえに観客の座る角度によっては観えるもの、観えないものもあり、出てくる答えも違ってくるのだ。
そして明確な答えがない脚本を演じる役者もまた大変だったろうなと、改めて舞台を観たからこそ上演に至るまでの役者の皆様が悩み、苦しんでいたと発信していた言葉の意味が実感できる。さらにいえば、360度すべて見渡せる舞台は常に死角がなく、必要以上に集中力を要する舞台だったろうなとも思います。
それでも見事に調和のとれたアンサンブルであり続けられたのも、大竹さん、段田さん、ともさかさんに吾郎さんと彼らの実力があればこそ。イネス演じる大竹さんは十八番と言ってもいいぐらいの役で、その迫力は言うまでもなくでもキュートに演じ、ユベール演じる段田さんも安定してしっかりと場を引き締める。対するアンリとソニアもしっかりとその二人を受けての演技が素晴らしい。ヤスミナ・レザ氏の会話劇の奥に潜む怖さをやり過ぎず、不足するでもなく、そのギリギリのラインを軽やかに求めた演出に、十分彼らが応えたまさに最高の大人の舞台でした。
出来るのならもっと、もっとこの4人による別の「LIFE」も観てみたいとも感じましたが、もっと別の舞台で別の役を演じる4人も観てみたいとも思いました。もちろん、13年ぶりの彼らが演じる『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』だって当時から現在でどう変化するのか観てみたい。
いつかまた、何らかの形でこの4人とケラ氏演出の舞台を、そう期待せずにはいられない舞台でした。
演劇評(※有料会員のみ閲覧可の記事あり)