【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『吹上奇譚 第二話 どんぶり』と『ゴロウ・デラックス』

2019年2月7日放送の『ゴロウ・デラックス』第331回目のゲストは、作家の吉本ばななさん(54歳)
吉本さんといえば23歳のデビュー作にしてベストセラーとなった、 

キッチン (角川文庫)

キッチン (角川文庫)

 

"私がこの世で一番好きな場所は台所だと思う"というのは、この作品で有名な1行目。 その美しく詩的な世界観若い女性の共感を呼び、ばなな現象という社会現象を起こした。そしてその文章は国内だけにとどまらず、世界30カ国で翻訳され、累計500万部を超えるヒット。

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その後も国内外で数々の賞を受賞。名実ともに世界的な作家に。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 20年前の出会い

何と今回の吉本さんの出演きっかけは吾郎さんで。実は20年前、恵比寿の隠れ場みたいなバーでお二人は出会っているのです。ばななさんを真ん中にデザイナーの方と編集者の方がいらして、そのお二人はべろんべろんに酔っぱらっていたせいか、"今度、うちの雑誌に出てくださいよ~"とか、"サングラス取ってください"などと絡んだのだとか。そして舞台『No.9 -不滅の旋律-』に出演されていた奥貫さんのお友だちということで観劇に来られ、挨拶に来られたばななさんに会うなり"番組に出てくださいよ!"と直談判した吾郎さんw

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f:id:kei561208:20180622175426p:plain 早熟すぎる作家人生

f:id:kei561208:20180621012743p:plain 1969年、5歳で作家志望

本と言っても当時読んでいたのは主に漫画で、ばななさんのお姉さんで漫画家・エッセイストでもあるハルノ宵子さんはその当時から漫画家になると言っていたので、じゃあ、私は文字で……と安直な二択から作家を希望。

f:id:kei561208:20180621012743p:plain 1971年、7歳の小学2年生で初執筆

ばななさんのお父様といえば戦後最大の思想家といわれる吉本隆明さんだったため、書いた小説は誰にも見せず、誰にも教わることなく学校から帰ったら書いてと繰り返していくうちに段々と上手にはなっていったそうです。

f:id:kei561208:20180621012743p:plain 1987年、23歳でベストセラー作家

ご本人の人生設定ではもう少し地味なイメージだったため、いきなりのデビューで注目を浴び、かなり動揺をしてしまったのだとか。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 超貴重!吉本ばなな創作現場

執筆用の自分の部屋はあるものの、動物の世話とかもあるのでついリビングで書いてしまうばななさん。午前中に起きて、そこから1時間ぐらい執筆活動に入り、一段落ついたら家のことをして、その後は2、3時間執筆活動。そして再び家事をして、夜中に執筆活動をするという生活をしているそうです。

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Q.執筆をする上で欠かせないアイテムは?

・これが一番緩くてボロボロなんですけれど、これがちょうどいい緩さに育ったわけですよ。これを装着して仕事を始めます(動物の耳がついたヘアバンド)
Macを開くとメールとかを読んだり、お知らせとか出てついそこを開けちゃったり、常に気持ちが削がれるのでポメラ*1で下書きをして、Macに入れて清書する。面倒くさいようで思ったよりも効率がよくて、専用機っていいなと。

Q.今は何を執筆しているところですか?
・宣伝っぽいんですけど「吹上奇譚」一話、二話、三話をちょっとずつポメラで下書きを書いている。それをここ(Mac)に移したときに始まる感じ。

 

そのばななさんの本棚がこちら。本当に大事な本は事務所とかに保管されているので、ご自宅にあるのはカジュアルに読める本がたまっていった結果だそうで。

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その隣には大判とお父様の全集が置かれているのだとか。またクローゼットの一部も大切な本の一部を保管。吾郎:うちのトランクルームお貸ししましょうか?)
そんなばななさんの今回の課題図書が、もっとも書きたかったという 

吹上奇譚 第二話 どんぶり

吹上奇譚 第二話 どんぶり

 

舞台は異世界への扉があり、屍人が蠢く不思議な街・吹上町。その中で起きる人間ドラマを描いた長編哲学ホラー小説。一体、なぜばななさんはこの本を書こうと思ったのでしょうか?  

外山「なんでこの作品を書きたかったんですか?」
吉本「何か続き物を王国というのを書いたんですけれど、そのときに主人公と気が合わなくてですね、もうずっと辛かったんですよ。
"何でこの人、こんなことするの?"とか。自分じゃないから主人公たちって。何でこの人たちを選んじゃったんだろうと思っちゃって、その後悔から今回はちょっと自分よりというか、意見が合いそうな人たちでちょっと長く書きたいなと思ったんです」
吾郎「やっぱり作家さんってこう登場人物と対話しながら進めていくものですもんね。合わなかったんだ」
外山「合わないってあるんだ」
吉本「そういうことってあるんですよ」
吾郎「でも役を演じるのも一緒だよね。多分、僕、いつも作家さんの話聞いてて思うんですけれどもね、同じだなあって。役と向き合いながら」
吉本「気が合わないところもあって」
吾郎「そうですね」
吉本「この人ならこうするだろうなあって」
吾郎「思いながら、あくまで自分であって。そう、その作業というか、想像のプロセスは非常に俳優と作家は近いなって」

 

その第二話につけられたタイトルは「どんぶり」実はこの料理、小説『キッチン』の大事な場面で出てくるほど吉本さんにとっては思い入れのあるキーワード。そこに込められた思いとは。寝たきりだった主人公の母が親子丼を食べ、力が漲る部分を外山さんが朗読します。

 

外山:最近の母は、なにかにとりつかれたかのように毎日なんらかの丼ものを作っていた。
「どんぶりって全てを包みこむ感じがするし、なんでも載せられるし、バリエーションもあるし、別皿で出すよりもどこかお弁当っぽくて楽しいし、庶民的な温かみがあるじゃない?
私、あの頃まだうまく胃と食欲と手足がリンクしなくて、お皿のおかずとごはんをうまく組み合わせて食べることができなかったの。ごはんが大量に残ってしまって気持ちが暗くなったり。
しょっぱいおかずがどうにも受け入れられなくて一口で残してしまったり、食べ物と体をうまくなじませることができなかった。
でもあのちいさなどんぶりは違った。
気のスプーンで少しずつ食べたら、じわじわっと力が湧いてきたのがわかった。
全てが一体になって思いやりもこもっていて、自分のパワーが増していくこともはっきりわかった。
私もまだまだあの日の雅美ちゃんの作った親子丼の域には達してないわ」 

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 「どんぶり」に込められた想い

本を一緒に作ったバリの丸尾孝俊さんという、皆にアニキと呼ばれている大富豪の人あいるのですが、対談をしながら"どんぶりって小説書いてや"と言われ、その場は流したものの、3回ぐらい言うのでじゃあ、書こうかなと思ったのがきっかけ。どんぶりは朗読にあるように包み込まれるような感じがするし、1食で色々満たされるし、すごく温かい食べだよね。 と仰っていたのでそこは使おうと。
そしてこの課題図書の朗読について、吾郎さんにこの作品のテーマともいえる部分を読んでほしいとリクエストが。 

 

吾郎:「わしはずっと見てた。
ミミ、あなたはほんとうにいい奴だ。
とことんいい奴だった。
彼女がお母さんに会ったところでは、わしもあなたと同じく"もういいや、この人生、おまえにゆずってやるよ"と思ったよ。
いつもは決してそう思わないんだけどね。
初めてそう思ったよ。
わしの体の中に、幽霊たちは家を構える。
それは彼らの悲しい人生あるいは美しかった未練のある人生から彼らを永遠に守るお城なんだ。
そして彼らは決して出ていきたくないという。
これまで愛した人、好きだった場所をずっと見ていたい、観ているだけでいいんだってみんな思う。
わしもそれはもっともだと思う。
叶えてやりたいとも思う。でもやっぱりさ」
美鈴は上を見上げた。
横顔にまつ毛が影を落とす。
床に置いたテーブルの上にはみんなが食べたどんぶりが幸せな形に重なっていて、お茶とお漬物とおまんじゅうがいっしょに置いてあって、人々はそれぞれ足を投げ出したりソファにもたれたりしていた。
天窓には四角い青空がくっきりと見えていた。
光がそこから降り注ぎ、部屋全体をふわっと包んでいるようだった。
その青い四角を、目を細めて美鈴は見つめていた。
まるで初めてこの世を見た人のように。
つられて私たちもなんとなく上を見た。
セクシーな服をきてしゃなりしゃなりと歩かなくても、手入れされていない眉毛でも、マスカラでぴっと立っていないまつ毛でも、私はこのダサくてよく見るときれいな美鈴が好きだった。
美鈴は言った。
「他人の体の中に入って、過去にのみ生きるということ。
それは自然の法則に反しているんだ。
だから決してできないようになっている」
私たちは全員、神妙にうなずいた。
そうだ、それこそが感じていた違和感の正体なのだ、と私は思った。
「だからわしにもどうにもできない。
わしがどう望もうと、遅かれ早かれ彼らは自分の運命に静かに戻っていく。
どんな執念よりも、どんな情よりも強いものがある。
木が秋に葉を落とし、春にまた芽吹くのと全く同じそのことには誰にも逆らえない。
わしもまた、その法則の絶対さに守られて、いつも命拾いをしてここに戻ってくることができる。
空とか、宇宙とか、生きる死ぬの生命の法則が、わしがどう望もうと、彼女を天に召した。
またいつか、もっと幸せに戻ってくるために」

 

読み終えた吾郎さんが執念にも抗えない法則があるのがいいと語る吾郎さんに、そのことを書きたいと思っているとばななさん。順番とか、歪められない時間の流れとか、哲学が入っている(それが入ってないとただのどんぶりを食べたばっかりの話になるw)

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 「戦友さくらももこ

この『吹上奇譚』を書いている最中、ばななさんは大切な人たちの死を経験。その中には昨年亡くなられた漫画家のさくらももこさんも。どんな方だったのかと尋ねると"落語"のような方だったと。きっかけは対談だったのですが、漫画家はナイーブな方が多いのであまり話さないようにしようと訪れてみれば、いきなり落語だったのですぐにお二人は仲良くなったそうで。その内容についてはイメージを損なってはいけないので、あまり言えないそうですが、最後に一緒に飲んだときはさくらももこさんが「ギンギラギンにさりげなく」めちゃくちゃ歌って踊っている動画を"これ最高でしょ♪"と見せられたのだとか。アシスタントや息子さんが笑っている中、ばななさんは今、自分はちびまる子ちゃんの世界にいるようだと。本当にあのままの人だったと。

そんなばななさんに最後に尋ねると「"吹上奇譚"はジャンル分けの難しい話なので、それがちゃんと伝わっていたのがわかってすごく嬉しかった」と語ってくださいました。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 山田くんの消しゴムハンコ

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f:id:kei561208:20180622175426p:plain Book Bang

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*1:キーボードで文字を入力して記憶する機能に特化したφ(..)メモメモや文章の作成専用機