【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『ある男』と『ゴロウ・デラックス』

2018年11月22日放送の『ゴロウ・デラックス』第322回目のゲストは、小説家の平野啓一郎さん(43歳)

1998年に京都大学在学中に書いた処女作「日蝕」が第120回芥川賞受賞

 

日蝕

日蝕

 

 

当時大学生での受賞は石原慎太郎大江健三郎村上龍に続く4人目の快挙三島由紀夫の再来というべき神童と話題に。最近では2016年に発表した「マチネの終わりに」が20万部を超える大ヒット。新聞連載中から大きな反響を呼び、完結直後には「マチネロス」という言葉まで生まれた。天才ギタリスト・蒔野と女性記者・洋子による大人の切ない恋愛が描かれ、来年、福山雅治さんと石田ゆり子さんで映画化が決定されている。

 

マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

 

実はこの「マチネの終わりに」は吾郎さんが林真理子さんと対談をした際に、"この主人公、吾郎さん良いですよ"と薦められて読んでいた経緯があったのです。映画化でフタを開けてみたら福山さんだったと(ちょっとギター練習したとw)

そんな今回の課題図書はというと、平野さんの最新作、

 

ある男

ある男

 

 

【あらすじ】 
宮崎県の田舎で暮らす里枝は林業を営む谷口大祐と結婚し、家族4人で幸せに暮らしていた。しかし、夫が伐採中の事故で亡くなってします。
里枝は夫の一周忌をさかいに疎遠だと聞いていた夫の家族に連絡を取ると、ある衝撃の事実が発覚することに。

 

 そのシーンを外山さんと吾郎さんとで朗読。

 

ナレーション(外山):大祐の兄・谷口恭一は、手紙を受け取るとすぐに宮崎まで飛んで来た。
里枝は仏間に案内して、「どうぞ。」と勧めた。
母は少し離れたところから二人の様子を窺っていた。
恭一は、正座をして、しばらく遺影を見ていたあと、「これは?」と振り返った。
恭一(吾郎)「大祐の遺影はないんですか?」
里枝(外山)「……それですけど?」
ナレーション(外山):恭一は、眉間に皺を寄せて、「ハ?」という顔をした。
そして、もう一度写真に目を遣って、不審らしく里枝の顔を見上げた。
恭一(吾郎)「これは大祐じゃないですよ。」
里枝(外山)「……え?」
ナレーション(外山):恭一は、呆れたような、腹を立てているような眼で、里枝と母を交互に見た。
そして、頬を引き攣らせながら笑った。
恭一(吾郎)「……いや、全然わかんない、……ハ? この人が、弟の名を名乗ってたんですか? えっ、谷口大祐、ですよね?」
里枝(外山)「そうです。……変わってますか、昔と?」
恭一(吾郎)「いやいや、変わってるとか、そういうんじゃなくて、全然別人ですよ、コレ。」

『ある男』 』より一部抜粋

 

 f:id:kei561208:20180622175426p:plain 成り代わりの話を書くきっかけは?

平野さん自身が40代になり、人生は1回しかないことをつくづく考えるようになり、今の人生が辛かったりすると切実に"違う人生だったらよかったなあ"と思うこともあるんじゃないかと、そこから物語を作るようになったそうです。

 

【あらすじ】 
里枝は夫の正体を知るべく、弁護士の城戸に調査を依頼。
大祐の過去を調べる城戸を主人公に物語は進んでいく。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 平野さんが主人公に込めた思い

割にこういう物語だと正体は誰だと大祐が主人公になりがちだが、弁護士の城戸を主人公にすることで大祐を一体誰なんだ?と正体を探りながら段々自分自身にフィードバックしていって、考えさせる人物を設定したかったと。それはどこかで人間は他人の人生、他人の物語を生きていく上で必要としているのではないかという考えがあって、城戸自身も悩みはあるものの、そうやって赤の他人の人生を探っていくうちに、自分の人生の見え方も変わってくるし、心も癒されていくんじゃないかと。

そうやって大祐の調査をきっかけに、自身が抱える問題に向き合い始めた城戸とは裏腹に、真実を知った里枝はショックを受け、亡き夫への愛を自問する。

にとって、過去とはなにか…』これは「ある男」で平野さんがもっとも描きたかったテーマだそうです。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 愛にとって過去とは何か?

夫に言われなかったら嫌でしょという外山さんに、(生きていれば)次の日に言ったかもしれないじゃんと吾郎さん。その言葉に愛はキレイごとじゃないと。愛にとって大切なのは続いていくことが重要で、受け入れがたいことも受け入れて、そのときには相手を愛し直すことが大切だと。それまでどおりの形では続かないけれども、違う形で愛し直すことによって続くものもあるんじゃないかと平野さんはいいます。

ちなみに吾郎さん自身は付き合っていた女性に暗い過去があった場合、もちろん「ある男」のような経験はしてないのでそのときになってみなければわからないものの、どちらかというと今を見るタイプなのであまり気にしないそうです。「過去のあなたがあるから今のあなたが好き」なのも間違ってはいないし、男は割に過去を想像すると。それが嘘偽りだったとしてもいいんじゃないかなと吾郎さん。

「未来で過去は変えられますか?」という吾郎さんの問いに対し、平野さんも「どういった人間として生きていくかということが、未来が過去を変えていくことはある気がする」と平野さん。
ちなみに近年は話題作を世に送り出している平野さんですが、デビュー当時は文壇の異端児でした。そのエピソードの一つが「異例のデビュー方法」

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 平野さんが語る"異例のデビュー方法"

新人賞じゃない形でデビューしたいと思っていた平野さんは、ちょうどそのとき『三田文学』という雑誌に"我々はこういう新人を求める"という企画があったため、その編集長に自分の作品を読んでもらいたいと思い、手紙を書いたそうです。そのたった1人の人の心を動かせないというのは、作家になる人間としてどうかと思って、どうしても自分の作品を読みたくなるような手紙を書かれたそうです。そこまで言うなら送ってくださいと送った作品を編集長が評価してくださり、デビューに至ったそうです。

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無名の新人が巻頭掲載されることはほとんどないので、いかに平野さんのデビューが異例だったかがわかります。

 

日蝕』の舞台は15世紀末のフランス。
キリスト教・神学僧のニコラが、錬金術師や両性具有の人造人間など異端の世界に触れるファンタジー小説
華麗な文体から三島由紀夫の再来と評され、文壇で一躍注目を集める。

 

翌年には同作で見事、芥川賞を受賞。当時、史上最年少で受賞ということで大きな話題になり、47万部の大ヒットを記録。その後、小説の可能性を追求し、実験的な作品を次から次に発表。

f:id:kei561208:20180621011801p:plain 視覚的実験作品①2004年『女の部屋』

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実は上のページは空白が違うだけで全て同じ女の人の部屋を描写しているページ。だが、その全て同じページを読まないことには1ページが完成しないという。実はカーテンの描写がしてある箇所はカーテンが配置されており、机の描写がされている箇所は机が置いてあり……と文字を弄ることで視覚的効果を生み出そうとしていたのです。 

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f:id:kei561208:20180621012743p:plain 視覚的実験作品②2003年『氷塊』

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茶店で偶然視線があった男子中学生と30代女性の物語ということで、上段は亡くなったと言われている自分の本当の母親ではないかと女性を思っている男子中学生からの視点、下段は不倫をしている相手の子ではないかと疑っている30代女性からの視点で描かれている。誤解は解消されることなくすれ違っていくのですが、その2人が共有している接点がある場合のみ、真ん中に文章が描かれているのです。

もちろん、男性の視点から、女性の視点から読むのもありだし、同時に読むのもありと読み手側も自由に物語を描くことも出来るのです。

 

f:id:kei561208:20180621012743p:plain 視覚的実験作品③『閉じ込められた少年は』

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虐められていた少年が報復をする物語で、この実験ポイントは文章の真ん中で文章が鏡合わせのようになっていること。赤のラインを境に、と対称になっているのだが、小説としては違和感なく読み終えることが出来る作品。

モーツァルトの曲で楽譜の上から弾いていくのと、下から弾いていくのを同時にするとハーモニーになっているのを見たことがあり、小説でも上から読んでいくのと、下から読んでいくので真ん中で交差するのはあり得るんじゃないのかと。これは物語のテーマとも合致しており、少年が虐められた報復に最後はいじめっ子を刺してしまうのですが、その思い切った行動のために少年は自分のした行動から逃げられなくなってしまう、閉じ込められてしまう感を時間がずっと回り続けることで表現したかったと。

この実験的な小説を書いていた時期は、平野さんの中では第2期と呼んでおり、実際についていけないとなってしまった読者も多くいたそうです。ただ平野さんご自身にとってはとても重要な時期だったそうです。

そうやって短編を書いていると長編のアイデアがまとめっていくことがあり、今は割に長編を書いているので、またしばらくしたら実験的なものを含めて短編を書いてみたいと平野さん。

そんな平野さんは作品によって文体や時代設定も一変させるそうで、今回はそんな平野さんにインスピレーションを与えてくれるものを紹介してくれるそうです。

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インスピレーションを求めるからか、意外にも闘ったり、発破したり、刺激的なものが多いことに平野さん気づきます。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 平野作品を彩る音楽の魅力

例えば「マチネの終わりに」であればクラシックギターだとか、小説に出てくる音楽についてはやはり自分が知っている音楽でないと書けないものの、登場人物を考えるときにこの人はどんな音楽を聴くだろうかとは考えるそうです。「ある男」を読みながら吾郎さんはダウンロードしているらしく、今回、平野さんに会えるということで実際のその音楽であっているのかを確認したかったのだとか。手元からスマホを出して確認してもらった吾郎さんでしたが、残念ながら同じタイトルではあるものの曲は違ったそうで、でも自分の作品を読んで音楽までダウンロードしてくれる吾郎さんに平野さんは嬉しいですとコメント。そういう吾郎さんの知的探求心が、書き手が深く読み込んでくださっていると関心する源になるのでしょうね。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 平野啓一郎がゴロウで小説を書くならば

今回、特別企画として平野さんが吾郎さんを小説で書くならばとお願いしたところ、「深く考えて、考えて、考え込んでしまって段々わからなくなってしまった」と平野さん。最初はギャップがある物語がいいと考えたものの、自分の憧れもあるのですがスイスにいる「独立時計職人」といい、1年に2、3個複雑な時計を静かな環境で作る職人。その世界の中に吾郎さんがいるイメージが浮いたそうです。

 

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実際の吾郎さんはイラチなので"うう~ん"と嵌らない部品にイラッとして放り投げてそうですがw そもそもピンセットも持てないそうですし。

ただ平野さん曰く、そういうギャップで人のいない場所で何かに没頭している表情を見てみたいというのはあるそうです。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 山田くんの消しゴムハンコ

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似なかったのでまた次来てくださいとお願いする山田くんなのでしたw

 

 

 

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