【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『TIMELESS』と『ゴロウ・デラックス』

2018年9月6日放送の『ゴロウ・デラックス』第313回目のゲストは、7年前にこの番組が始まって初めてのゲストで出演してくださった西村賢太さんと芥川賞を同時受賞され、そしてその受賞差から7年の時を経て待望の新作を出した朝吹真理子さん(33歳)

2009年、24歳で「流跡」で作家デビュー。 

流跡 (新潮文庫)

流跡 (新潮文庫)

 

そして2011年、26歳「きことわ」芥川賞受賞。 当時、西村賢太さんとの同時受賞は美女と野獣と言われ話題に。

きことわ (新潮文庫)

きことわ (新潮文庫)

 

彗星の如く現れた若き作家に、誰もが受賞後第一作を期待したのですが……なぜか次作が世に出ることはなかったのです。

そんな朝吹さん、実はバラエティ番組の出演が初めてでかなり緊張されているそうなのですが、友人の同じく芥川賞作家である山下澄人さん(#239 2017年2月23日O.A)に『ゴロウ・デラックス』にお邪魔することになったと連絡を入れると、「全然緊張することはない。広大なスタジオの中にポツンと…(セットが)小さくあって、プロフェッショナルなお二人が全部進行してくださるから、大船に乗った気持ちでいればいい」という番組ファンとしては嬉しいアドバイスをしてくださったのだとか。

そんな今夜の課題図書は、 

TIMELESS

TIMELESS

 

 

【TIMELESS あらすじ】
恋愛感情がないまま結婚したうみアミ。そんな夫婦が東京・六本木の街を散歩しながら高校時代の思い出や、さらには400年前の江戸時代など、様々な時代の記憶を巡らせる不思議な物語。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 空白の7年……小説を書く苦労

頑張って書こうと取り組み続けて、ようやく奇跡的に書き上げることが出来たこの『TIMELESS』朝吹さんの小説を書くスタイルはまずは3行ぐらいを書くと。その3行を書いたら、次の4行目を推進してくれる大事な3行になるから、3・4・5・6行と続いていくのですが、なぜか3行目を書いたら一旦休んで。その後、4行目に行くのかと思いきやなぜかまた1行目を推敲し出し、その3行の中で何年間もずっと流転し続けてしまって、物語が始まることばかりが続いていったのです。

吾郎さんの3行をずっと繰り返す朝吹さんに、その先を続けるために「編集者に見せたりはしなかったのですか?」という問いに対しては、実はそういう書いて消して、書いて消してを繰り返している作品を朝吹さんはおかゆと呼んでいるそうなのですが、白米のように綺麗に粒立ってはいなくて、ドロッとしてて塊になっていない、その状態を見せることは裸を見せること以上に彼女にとっては恥ずかしいことだったため、とにかく見せたくないと固辞していたそうです。とりあえず次の締切には30枚、20枚書けますと口では上手くいうものの、何度も繰り返すうちに編集者さんもこの人は次も絶対に書けないだろうと今、持っているものを見せろと見た結果、「握りすぎて腐った寿司」だと絶望の顔をしていたのだとか。そんな小説の冒頭部分は、

 

もしまたべつの生きものとしてこの世にあらわれねばならないとしたら、なにに生まれたい。
高校二年生だった。
放課後、教室に残っている生徒は私たちをのぞいてほとんどいなかった。
いたのかもしれないけれどそういった気配はすべて雪に吸われていた。

『TIMELESS』より一部抜粋

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain それぞれ違う作家のスタイル

同じ作家でも山下さんは「ポンポン書けばいい」 タイプらしいのですが、それは朝吹さんには難しいと。例えば、以前に番組で出演くださった西村京太郎さん(#277 2017年12月7日O.A)のように年間12冊も書き上げる人がいれば、角田光代さん(#143 2014年11月27日O.A)のように9時から17時で書き、時間が来るとスパッと切り上げるまさしく職業作家さんというスタイルの人もいるわけです。

TIMELESS』を読み終えた感想として吾郎さんは、何かふわふわとまどろんだ感じがして好きだそうです。外山さんも不思議な世界にいる感じだと。そして吾郎さんが声に出すと気持ちいいというと、朝吹さんは「普段エッセイも何もかも、全部声に出して書いているので嬉しい」とのこと。というわけで、恋愛感情が持てない女性「うみ」の心情が綴られた場面を吾郎さんが朗読します。

 

吾郎「うみは秘密が多そう、とずっと言われてきた。
わかる、クールだしね。
何もないから言わないだけだった。
人を好きにならないから恋愛の話をしないだけだった。
恋をすると花鳥風月がしみるらしいことはわかっても実感がないままここまできた。
アミとつきあうのも、結婚するなれそめも、みんなに言うべきことがなにもない。
みんなの話を聞いていることは嫌じゃないから、ほとんど芝居でも見ているような心地できいている。
人を想って眠れない。
そんな恋ばかりしたら死んじゃうんじゃないかと思う。
人が人を好きになる気持ちがわからないまま、ここまで来てしまった。
ここがどこなのかわからないまま、流されて、テーブルクロスの敷かれたビルの上にいる。
みながしているらしい恋を私はしたことがない。したい、とも思っていなかった。
恋もセックスも、どっちだっていい。
しなければいけないのなら、林檎農家の交配のように、花粉を綿球につけて、それをぽんぽんと雌蕊に塗布して、交配が成功すればいいのに。
人を好きになる、という、理屈じゃないなどといわれる行為に落ちることがどうしてできないのか、わからない。
しないといけないようなことなのかもわからない。
むざんやなあ

『TIMELESS』より一部抜粋

 

ずっと一人でブツブツ言いながら書いていたため、他の人の声で聞くのはほとんど初めてだったので嬉しいと朝吹さん。逆にすごい聞かれている感がして吾郎さんは緊張していたそうですがw

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 主人公の設定は自身の恋愛観が基

ところでうみはなぜ恋愛感情が持てない女性という設定にしたのかという問いに対しては、近代以降、恋愛をすることが自由になって「恋愛結婚」というのが可能になって、恋愛をするということがとても素晴らしいことだという認識になってきて、でもそれと同じで人間には恋愛をしない自由があるんじゃないかと昔から思っていた朝吹さん。実は自分がなかなか人のことを好きにならないのもあったのですが、例えば学生時代、好きな人がいないことはありえないことだと何となくクラスの中でも皆思っていて、そうすると好きな人がいない場合は架空でも好きな人を作らなきゃいけないだとか、あえて恋愛話をすることで仲良くなることへの違和感だとか、そういった恋愛をしない性もあるという気持ちが長い時間かけて流れ込んだのがこの小説だったと。

 

TIMELESS』では過去の思い出やその土地の記憶が蘇り、現実と幻想が入り混じる独特な世界観が描かれている。特に際立つのはうみとアミが六本木を散歩する場面。そこは江戸時代、徳川家二代将軍秀忠の側室、江姫が火葬された場所であり、同時に大量の香木が焚かれ、盛大に行われた。 

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その史実が今回の小説を書く上で、大きなターニングポイントになったんだそう。

 

外山「火葬が執り行われた一六二六年十月十八日、その日は北西の風が吹いていた。
ミッドタウンの前で、江の遺体が葦と炭火によって燻されながら燃えていった。五十八メートルにおよぶ沈香木の束がともに焚かれて野原に薫りが満ちる。首都高速三号線の上空、六本木ヒルズつるとんたんドン・キホーテ六本木店、そして麻布台一丁目のガゼンポ谷へと腐敗臭とともに香烟が空高く帯のようにつづいた。
沈香木が、やわらかい薫りを吐きだし、燃えて、烟のなかへと土地を引き摺りこんでゆく。
永井荷風がいとしいひとをたずねたという坂を、くだっているのかのぼっているのかわからないまま、歩いている。私たちはいとしい間柄ではないまま、歩いている。
(中略)
もうずいぶん歩いている。それでも足は疲れていない。
Gianvito Rossiのハイヒールだからかもしれない。
私たちはずっと歩いていると思っているだけなのかもしれない。
月は雲の影に消えたままいっこうあらわれない。
わたしたちはますますくらいものになって歩いている

『TIMELESS』より一部抜粋

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 歴史学者磯田道史の言葉で完成した小説

実はこの小説を生み出すきっかけとなった産婆さんのような人がいて、歴史学者磯田道史さん(#205 2016年5月12日O.A)、元は綿矢りささん(#208 2016年6月2日O.A)からの紹介なのですが、2015年の夏に磯田さんと対談をして、その対談の帰りに一緒にタクシーに乗って六本木通りを進んでいたとき。朝吹さんはお香が好きで、その話を磯田さんとしていたところ、「そういえばこの近くって江姫が火葬された場所だって知ってますか?」とミッドタウンの向かいに江姫の遺体が大量の沈香木と一緒に焚かれたと。その話を聞いた瞬間、朝吹さんの目の前のタクシーの光景が400年前と重なって見えたような感じがして、「あ、これはずっと自分が探していた小説の光景だ」と。ここから物語が始まるんだ!と突然に確信をもって磯田さんに向かって、「これは小説の場面になるんですよ」と言ったところ、磯田さんもじゃあ、古地図を用意しましょうかと準備をしていただき、違う日にまた一緒に六本木を探検されたのだそうです。いや、本当に磯田さん優しい方です。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 朝吹流の執筆スタイル

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小説を書く前のときにイメージが浮かんで、そのイメージを追いかけている時、朝吹さんはブルーシート段ボールに手当たり次第に物を貼っていくのだそうです。例えば雑誌に切り抜きであったり、好きな詩のコピーであったり、とにかく何でもかんでも手を動かしながら貼るという作業をずっとしていて、その貼る手があるうちに書く手に自然と移動していくのだとか。

ちなみになぜブルーシートなのかというと、朝吹さんにとってブルーシートが世界で一番彼女にとっては美しい色だからだとか。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 朝吹真理子のブルーシート愛

ブルーシートは景観を乱さないためにブルーにしているのに、最も自然なブルーとは真逆の安い人工塗料で、お花見のときに敷いてあるものも好きだし、坂道とかにかけられたまま忘れ去られてちょっと緑がかっているような、苔や皺が寄った感じだとか、端っこがほどけかけている感じだとか、ああいう人為では絶対に作れない色味とかを見ると美しいなと思う朝吹さん。そういうハレの場でも使われるし、事件などの現場にも使われる面白さもあるブルーシート。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 執筆に集中しすぎて私生活に影響が…

そんな朝吹さん、締切前とかだと執筆に集中し過ぎて家事も何もできなくなってしまうそうで、 ご主人がご飯を作ってくださって食べたときに美味しかったので「すごい美味しいこのカレー」と伝えたところ、「え、カレー? ハンバーグだよ」と言われたそうで。実際に見てみるとハンバーグで(w)、なぜそのときに自分がカレーだと思ったのか、カレーだと言ったのかがわからなくて、気まずくなってしまったのだとか。実際に観覧にご主人が来ていたので確認してみたところ、「確かにトマトソースが多めではあったものの、さすがに冗談だろうと思って笑いだすのを待っていたのに笑わないから、勘違いかなと思い、しょうがないのでちょっと残念な気持ちになりながら自己申告」をされた優しいご主人なのでした。

そんなほのぼのしたご夫婦の様子に結婚には興味のなかった外山さんが、「まったく結婚に興味なかったけど、こういうご夫婦を見るとすごく素敵だなと思いますよね」と。

お互いにきちんとスタイルが確立されているからか、その時々で寄り添ったり、離れたりときちんと互いに心地のよい距離感を保っていられる夫婦なのでしょう、素敵です。

 

f:id:kei561208:20180622175426p:plain 山田くんの消しゴムハンコ

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朝吹さんのブルーシートでイメージボードを作成するスタイルそのままに消しゴムハンコをブルーシートに貼った山田くんの作品に、今日一番の喜びのリアクションが。それどころか立ち上がって作品に近づくなり、「この織りが均一でない感じが……」とブルーシート愛を語り始まるという。そして吾郎さんにブルーシートの魅力はよくわかりましたと言われてしまうというw

吾郎さんのいうとおり、『TIMELESS』の世界観そのままに不思議な魅力にあふれた内容でした。

 

 

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ゴロウデラックスを観てくださった方々ありがとうございます。みんなの顔そっくり。

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