【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『いちのすけのまくら』と『ゴロウ・デラックス』

2018年5月31日放送の『ゴロウ・デラックス』第299回目のゲストは、今最もチケットが取れないという人気落語家・春風亭一之輔さん(40歳)

「まくら」といい、所謂落語に入る前のフリートーク、テレビで言うところのアイドリングトークも面白いと定評で、このたび「まくら」をまとめたものを出版されたということで、今回は特別にゴロウ・デラックス深夜寄席でその「まくら」を披露してくださることに。というわけでいつものセットを外し、落語の高座が用意されたところに春風亭一之輔さんが登場。

 

一之輔「え~、非常にやりにくい始まり方ですが、そういうわけでこれからアイドリングトークを聞いていただきたいなと……いきなりすみません。
いいですね、1対2の落語というのはね。何これ、本当にやりにくいったらありゃしません。今日はまあ、『ゴロウ・デラックス』ということで、え~、うちのカミさんなんかはもう何か色めき立っちゃって、ええ。いきなりカレンダーに、今日の日付んところに『ゴロウ・デラックス』って書いておくんですけど、段々日をこう経つごとに『ゴロウ』の字が太くなっていくんですね。カミさんが忘れないように、忘れないように太くしてる。
今日家出るときに"今日デラックスでしょ?"とか言うから、『デラックス』って略し方ないと思うんだけど……"吾郎さんに会うんでしょ。吾郎さんに恥かかせるな!"っていう。そういう送り出し方をされて今日やって参りました。
え~、どうなるかわかりませんが今日は一つよろしくお願いします。カミさんに尻に敷かれて、そういう人間が落語にはいくらか出てきて、
"ちょっとお前さん、どうするの今日は"
"今日はあのね、本の宣伝で『ゴロウ・デラックス』行ってくるから、じゃあ行ってきますよ"
なんて落語があったりなかったりして。これからじゃあ、一つよろしくお願いを致しま~す」
2018年5月31日『ゴロウ・デラックス』一部抜粋

 

古典落語現代風のアレンジを加え、観るものを一気に引き込む話芸の持ち主。 2012年には年功序列の落語界において異例の21人抜きで真打となった驚異の男。人間国宝十代目柳家小三治氏が「久しぶりに見た本物だなと」大絶賛するほど。

落語の実力もさることながらもう一つの魅力が「まくら」落語に入る前のぼやくような「まくら」で笑いと共感を誘う。ということで、今夜の課題図書は、

 

いちのすけのまくら

いちのすけのまくら

 

 

もちろん、課題図書に載っている「まくら」は実際の高座で披露しています。その中の1エピソードを今回は特別に披露。例えば、観覧に来ていただいたお客様について。

 

一之輔「え~、よく笑っていただけるお客さんってこんな嬉しいことはない。
大概ね、あの~何度も言うようで申し訳ない……無料でね(観客:笑い)
ちょっと待って、続きがあるんですよ。聞いて。
無料でおいでいただいてね、聞いた後のお客様ってね、大概がそんなに反応がよくない場合が。そりゃそうかもしれません。お金ね、入場料で切符買って、そりゃあもう払った分は笑わねばという。元を取ろうというお客様と、何だかんだ何か無料だから行ってみたら、うん、そんなでもないねえ。別に笑う必要ない、無料なんだからさ。みたいなお客様に別れるんですが、中にはね、お金貰ってね、落語を聞くっていう人もいるんですよ。収録のね、そういう番組ですよ。落語、演芸そういうものを収録して、スタジオで収録する場合、お客様をね、その~入場料取るじゃない。まあ、募集するんじゃなく、そういうものを専門に聞いてもらう、まあまあ、的になっていただくという、そういう何かあるんですよね。
そういう人たちはやっぱりそういう何かあるからかな。過剰です(観客:爆笑)
ものすごいです。やっぱりもういただいている分を返さないかん。本当、出てくるでしょ。出てくるともう本当に拍手はここね、小刻みに大きく打ってもう本当に調教されてますから。
出てきて(パチパチパチパチと激しく拍手)
大丈夫? 腱鞘炎になるよ。あの頭下げてこう上げるでしょ。まあ、上げたときも(パチパチパチパチと激しく拍手)
え~、春風亭一之輔と申します。"ええええっ"、えええって。
笑いじゃないんだ、もう感嘆の声を出して言わねばならぬだろう。そういう感じですよ。
もう前のめりもすぎてね、何かちょっと言うと"いやだあ~""ええええ!"みたいな。"うんうん"、パー子か、お前は。

2018年5月31日『ゴロウ・デラックス』一部抜粋

 

このような一之輔さんの「まくら」課題図書には満載。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 落語のイントロ「まくら」

普段「まくら」はどう考えているのかと問われると、考えようと思って考えているわけではなく、電車に乗っているときに前に座っている人が変な行動を取ればメモをしてみたりとか、やはり子どものネタは多くなってしまうと一之輔さん。

以前は子どものネタやカミさんがどうのこうのと高座で言うのは芸人だから嫌だなとは思っていた一之輔さんでしたが、いざ生まれてみるとこんなに面白い奴らはいない、ネタになることに気づいてしまうのです。一之輔さんの次男は小学4年生なのですがちょっとおバカさんで、「ゲームを買ってくれ」と言われたものの、「うちはゲーム禁止だ」「オモチャ買ってくれ」と段々ランクを落としていく次男坊。そのとき次男の乳歯がグラグラしていたので買うのを長引かせようとして、「乳歯が抜けたら買ってあげようかな…」と言い終わらないうちに自分の乳歯を強引にも抜き、血をダラダラ流しながら「はい! 抜けたから買って」と一之輔さんに抜けた乳歯を見せたというネタが。そういう人がいっぱいいるので「まくら」ネタには困らないのです。

落語には子どもが主人公のお話もいっぱいあるので、そういうときには今みたいな話をしながらスッと落語に入っていかれるそうです。

そんな一之輔さんですが、課題図書には師匠である春風亭一朝弟子入りするときのエピソードも「まくら」として綴られています。その部分を吾郎さんが朗読。

 

吾郎「春先、落語界には入門志願者がたくさんやって来ます。
『新人』以前の若者が、寄席の楽屋口でお目当ての師匠が出てくるのを待っているさまは、挙動不審すぎて実に微笑ましいものです。
私もおんなじでした。
15年前、4月21日から7日間、新宿末廣亭の楽屋口から10メートルほど離れた、向かいのビルの社員通用口の凹みで、従業員にチラチラいぶかしげに見られながら、師匠を待ち続けていました。
なにも7日待ち続けなくても初日に声を掛けりゃよかったんですが、根が臆病なもので、
「あー、師匠、向こうに歩いてっちゃった……明日にしよう」
「今日、機嫌悪そうだな……明日にしよう」
「あれ? 雨降ってきた。今日はやめて晴れの日にしよう」
「あらー、今日お休みか? じゃ明日にしよう」
「なんかおなか痛くなってきた……うーん、明日にしよう」
「よし、行くぞ! ……(すれ違って)……通りすぎちゃった……そうだ、明日にしよう」
そんなこんなでようやく27日に師匠に声を掛け、弟子入りのお願いをしたのでした

いちのすけのまくら』より一部抜粋

 

とんだチキン野郎だったのでしたw

そんなこんなでやっとのことで落語の世界に飛び込んだ一之輔さんですが、そもそも落語家を目指したのも寄席との出会いがきっかけだったのです。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain "寄席"の魅力

埼玉の春日部出身な一之輔さんは浅草まで電車1本で来られるということもあり、ある日、浅草をふらふらしていたら浅草演芸ホールで学生1,300円ぐらい、朝から夜まで入れ替えなしでずっといられると知り、映画を観るよりはずっといられるから入ってみようと。中では一生懸命落語をしている人がいる中、お弁当を食べたり、ビールを飲んだりガチャガチャと一生懸命落語を聞いていない客もいると。客観的にみると「何なんだ、この空間」はと。でも寄席は15分ほどに落語家も入れ替わり、次第に弁当を食べ終わった客も前のめりになり、トリが出てきたころには完全に大爆笑の渦。ふわ~と緩い、普通のエンターテインメントとは違う、でも最終的にお客さんたちは満足して帰っていく世界は自分だけが見つけた大人の空間っぽく秘密の遊び場みたいだったと。その15分の間、ウケていない人もいるし、大笑いさせている人もいるけれども皆何の言い訳もせず、オチを言い終えたら頭を下げてスッと袖に帰る。その落語家の形が良い形だなと格好良く感じた一之輔さんは「寄席に出たい」と思うようになるのです。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 1日密着取材 

現在は日夜高座にあがり、多忙を極める人気落語家の一之輔さんを番組では密着させていただくことに。

<5月某日>

◆13:10……浅草演芸ホール、出番の30分前に楽屋入り

◆13:15……楽屋入り後、まずは着替え。着替えの手伝いはお弟子さんの務め

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この《ネタ帳》には今日の出演者が何をやったかが書かれており、その内容によって寄席ではその日の演目を決めるのです。ただし、「まくら」は上がった場を見て長めにするか、短めにするか。お客様の様子を確認してから決められるそうです。

◆13:30……袖からお客さんの年齢層や人数を確認

吾郎:僕も舞台のときよく見ます)

◆13:40……高座へ

(「まくら」はその前に披露していた江戸家小猫師匠の動物モノマネから、そして選んだ演目に選んだ噺は「初天神*1」)

※「初天神*2」にした理由は一之輔さんが出演するまで子どもの噺が出ていなかったのと寄席にいた中学生にもわかりやすい噺だから。また子どもたちが来たいなと確実に笑ってもらえる噺をやるのが自分の役割

◆14:00……終了後はすぐに着替えて、次の寄席

◆14:40……上野鈴本演芸場

◆14:50……持っている自身のネタ帳から演目を選ぶ(何回話したのかもカウント)

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大人しい雰囲気と言われて選んだ噺は「鈴ケ森*3

※「鈴ケ森*4」を選んだのはお客様が重かったので、お客様を起こさなきゃと陽気な笑いの多い得意にしている噺にした。高座に上がるときには2、3つ選んでおいて、「まくら」を喋りながら今日の演目はコレだなと決めていくのです。

◆15:30……再び移動

◆18:30……内幸町ホール

◆19:00……妹弟子・春風亭一花さんの二つ目昇進披露公演に出演

この高座で選んだ噺は「笠碁*5

※「笠碁*6」を選んだ理由は、一つ前がウケていたのでもう"笑い"はいいだろうと。その後に出演される方が曲芸でウケるから、間の自分は人情噺がいいかなと選んだのです。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 一席の落語にかける思い 

外山 「ありがとうございます。この日はだから3つ?」
一之輔「そうですね、3つ」
吾郎 「噺もねえ、用意しておいて、2、3ネタを」
外山 「ねえ」
吾郎 「客の状況や雰囲気でって」
外山 「それもすごいですよねえ」
吾郎 「そんなないじゃん。そんなステージって他になくない?」
 「後、こう自分だけで満足しちゃいけなくって、渡し方というか、次の人への」
吾郎 「そうか、仰ってましたもんね」
外山 「そういうことまで考えてやるっていうのがすごいなあって思う」
一之輔「1人が目立っちゃいけないんですよね」
吾郎 「そうかあ」
一之輔「個人なんだけど、寄席の場合はひっくるめてのものなので、トリが一番喝采を浴びないといけないんです。そこまで上手くどう繋ぐか。もう野球の打順と一緒で一番バッターは塁に出ればいい、二番バッターは送ってという感じで、何となく役割が出番によって決まってるんですよ」

(中略)

吾郎 「今後はどんな落語家さんを目指していきたいですか?」
一之輔「最終的にはこう1日1回寄席で落語を喋って、うん。生きていければいいかなあ。15分という時間を、何か出番をいただいて、喋って、次の日も寄席行ってみたいなそういう生活がいいですね。とにかく、1日1席喋る。寄席に出続けるっていうのが1番目標かな。そのためにはね、ちょっとこういうの今のうちのお金稼いどかないと(手元の本をカメラに向かって出す) 

いちのすけのまくら

いちのすけのまくら

 

2018年5月31日『ゴロウ・デラックス』一部抜粋

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 山田くんの消しゴムハンコ

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f:id:kei561208:20170523013943j:plain Book Bang 

www.bookbang.jp

*1:初天神にお参りにいく父と息子の噺。息子が駄々をこね始め、父は様々な物を買い与える

*2:初天神にお参りにいく父と息子の噺。息子が駄々をこね始め、父は様々な物を買い与える

*3:間抜けな新米泥棒が親分の指導のもと、追い剥ぎの訓練をするがまったく成功しない

*4:間抜けな新米泥棒が親分の指導のもと、追い剥ぎの訓練をするがまったく成功しない

*5:下手ながら碁が大好きな旦那二人の意地の張り合いが光る人情噺

*6:下手ながら碁が大好きな旦那二人の意地の張り合いが光る人情噺