【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道』と『ゴロウ・デラックス』《第1幕》

2018年4月19日放送の『ゴロウ・デラックス』第293回目のゲストは、2回目の出演となる春日太一さん(40歳)

徹底した取材力を元に時代劇の知られざる舞台裏を描いた著書が評判を呼び、現在で10冊以上の本を執筆する日本で唯一の時代劇研究家。

 

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前回は2017年2月2日放送、鬼才の映画監督・五社英雄の生涯を綴った著書で初登場。

 

kei561208.hatenablog.jp

そんな春日さんの最新作が今夜の課題図書となる、

 

美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道

美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道

 

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 女優・岩下志麻をテーマにした理由

前回の『ゴロウ・デラックス』で取り扱った五社監督の取材をした際に、監督となれば岩下志麻さんは欠かせないだろう*1とオファーをしたところ受けていただいたのですが、取材をしてみれば驚くほどに面白いエピソードをいただけて、これは五社監督だけではなく、他の監督にもこういうお話を伺えたら"とんでもないものになるな"と思ったのがきっかけ。そして出来上がったのがこの1冊だったわけです。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 春日太一が惹かれた岩下志麻流役の役作り

これまでも色んな方のインタビューをされてきた春日さん。それでもやはり岩下さんは特別な感じだったのかと尋ねる吾郎さんに対し、

 

春日「実際に岩下さんにお会いしてお話伺ってみると、頭の中で演技のプランというのがちゃんとできていて、それをきちんと言葉に出来る方なんですよね。それで岩下さんというと、どちらかというと情念を持ってグッと入っていくお芝居が多いんですけど、にも関わらず、最初の役作りに関しては例えば髪型をどうするとか、例えば衣装の丈ひとつ取っても長さで役柄のイメージが変わるとか、理知的にかなりロジカルに演技を組み立てていく方なんですよね。組み立てて、外側を作ってから外側の器の中に自分の魂をグウッと入れ込んでいく2段階になるので、役作りがひとつの物語になっている。そこが凄く面白い」
2018年4月19日(木)『ゴロウ・デラックス』より一部抜粋

 

岩下さんのインタビューをすることで、映画を観るでもティーに目が行くようになったと春日さん。今回はその岩下志麻さんの狂気の演技について解説をしてくださるわけですが、何と本日はその岩下志麻さんもスペシャルゲストとして『ゴロウ・デラックス』にお越しいただいているのです。岩下さんは深夜のバラエティ番組は初だそうで、その初の番組に『ゴロウ・デラックス』が選ばれるという。

岩下志麻さんは1958年、17歳で女優デビュー以降、小津安二郎監督の

 

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 川畑康成原作の

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など数々の名作に出演。さらに代表作となったシリーズは大ヒット。

 

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まさに日本映画界を支えてきた大女優の一人。そんな岩下志麻さんと吾郎さんの共演はといえば、『SMAP×SMAP』のビストロに出演してくださったり、コントにも出演していただいたことがありますが、そのときもコントなのに笑わせグッズを自ら用意し、オチでやりたいと率先とされていたそうです。

そんな岩下さんの美しきも狂気に満ちた女優道の一つが、1977年に盲目の三味線弾きを演じた映画『はなれ瞽女おりん』その徹底した役作りの部分を吾郎さんが朗読。

 

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吾郎「私は暗闇恐怖症でしたので、目をつぶって暗い所にいるのが物凄い恐怖だったんです。
二色の電球を枕元につけて、灯りがないと寝られなかったくらいで。
ですので、まず暗闇に慣れることが必要だなって思いました。
それで目をつむってお茶を飲んだり、食事をしたり、お化粧したり、家の中を歩いたり、顔を洗ったり。
とにかく目をつぶって暗闇に慣れること。
そこから練習しましたね。
宿と撮影現場を、私はスタッフと一緒に全てバスで移動していたのですが、バスに乗るともう目をつぶっていました。
自分の世界に入るために、他の人を見たくないですから。
現場に行くまで目をつぶって、現場に行っても目をつぶって。
最後のほうはもう、『目をつぶっているのがこんなに安らげるか』と思うくらいになりました。
目をつぶっていても目の前を誰が通ったかわかるんですよ。
小道具さんが走ってる、照明さんがこっちに走ったな、とか。
瞽女さんの感覚っていうのがそこでちょっとわかったような気がしました」

 

 春日さんの分析として役者さんには二通りあって、

・現場で即興的に演じていくのが得意なタイプ

・徹底的に準備をして、現場でもそのまま演じるタイプ

岩下さんは後者の中でも最たる人で。ただし、岩下さんは現場でもその役でいないとダメなタイプのため、雑談が全然できないそうです。一方の吾郎さんはというと、春日さんが言うところの前者になるのかもしれないものの、以前、役所広司さんに叱られたエピソードを披露。

当時、『笑の大学』を撮っていたときに、最後の打ち上げて役所さんに言われたのが、吾郎さんは「よ~い、スタート!!」とカチンコを鳴らされたときから役に切り替わるタイプで、本番が始まる前はほぼ下を向いて待機をしているのですが、役所さんはその前から役に入っているタイプ。「よ~い」の声掛けのときには見つめ合っていなければいけなかったのにそれが出来ていなかった吾郎さんに対し、打ち上げで注意を受けたことがとてもありがたかったと吾郎さん。こうやってきちんと注意をしてくださる先輩がいるということは本当にありがたいことだと思います。それもさり気に打ち上げのときに、次からは注意したほうがいいと仰ってくださるだなんて素晴らしい先輩です。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 岩下志麻 狂気の女優道①卑弥呼」 

卑弥呼 [VHS]

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1974年に公開された邪馬台国を舞台に弥生時代の権力闘争を描いた映画で、岩下さんは邪馬台国の女王・卑弥呼を演じている。この邪馬台国卑弥呼という役作りのアプローチに困惑しそうなところを、岩下さんは"霊界へのアプローチ"を試みるわけです。

卑弥呼はシャーマン的な存在でもあったため、オカルトな世界と通じることが出来る人間ということもあり、実際に霊媒のところへ行かれ、卑弥呼の霊を降ろしてもらおうとしたのです。

さすがの岩下さんも役作りの入り口が見えなかった卑弥呼。どうしたらいいのか悩んでいるときに霊媒師さんの知り合いに、卑弥呼の霊を自分の中に降ろしてもらい、その結果、自分の中で変わったことが起きて、役作りの糸口になるんじゃないかと思って実際のその霊媒師さんのところに行ったと。岩下さんと事務所の方2人が隣に並び、3人で降ろしてもらっていたのですが岩下さんには全然降りず、その両隣からうめき声が聴こえてきたそうです。せっかく来たのだからと薄目を開けて見てみれば、ものすごい勢いで唸り声を上げながら畳を掻きむしっていたスタッフに、神の声を聞く卑弥呼のシーンに使わせてもらったそうです。

また卑弥呼の語りながら不思議な指の動きを取り入れたシーンでは、土方巽さんという「暗黒舞踏」をいう前衛的なダンスを取り入れた舞踏家の方に相談した結果、「指の舞踏をやったらどうか」と言われて取り入れたそうです。そういう動きをあえてすることで、卑弥呼の霊的なものが不思議なものになっていったのですごくいいことを教えてもらったと岩下さん。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 岩下志麻 狂気の女優道②「鬼畜」 

 

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1978年、松本清張原作で小さな印刷工場を営む夫婦を緒方拳・岩下志麻が演じる。夫は愛人との間に3人の子どもを設けるが、貧しさから養育費の支払いが滞り、怒った愛人は3人の子どもを夫婦に押しつけて消えてしまうのです。岩下さんが演じる妻・お梅は子どもが出来ない身体で、貧しい中、押しつけられた愛人の子どもを憎むのです。

ある種、鬼にならなければならなかった。子どもは正直なので少しでも笑顔を見せてしまうと柔らかい顔をしてしまうため、朝の挨拶をしてきてもツンと横を向いたり、何かをしていると「何をやってるの!」と怒ったりとか、とにかく怖いおばさんのイメージで接していた岩下さん。そのおかげもあり、ぶっつけ本番でも大丈夫なぐらい、憎々しい顔で岩下さんを睨んで見てくれたそうです。

その中でも大変だったのが、一番下の子どもに無理矢理ご飯を詰め込むシーン。監督から本気でやってくれと言われたので、可哀想に思いつつも無理矢理ご飯を口に入れていたそうですが、その後もよほど怖かったのか、遠くにいても岩下さんを見つけては泣いていたそうです。

というわけで、春日さんと岩下さんの回は次週も続きます。

 

  

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 放送中&終了後春日太一Twitter&ブログ 

 

 

 

 

 

 

 

  

f:id:kei561208:20170523013943j:plain Book Bang&ネット記事

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*1:極道の妻たち』や『鬼龍院花子の生涯』といった数々の作品で岩下志麻さんを起用している