【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

芥川賞&直木賞SP・前編と『ゴロウ・デラックス』

2018年3月8日の『ゴロウ・デラックス』第288回目は恒例企画、先日受賞した第158回芥川賞直木賞作家が全員出演のスペシャル回。

 

 f:id:kei561208:20170413024747j:plain 第158回芥川賞石井遊佳さんは現在、インドのチェンマイ在住。日本語教師の傍ら、インドで書き上げた『百年泥』で見事芥川賞を受賞。

 

f:id:kei561208:20170413024747j:plain 第158回芥川賞若竹千佐子さんもデビュー作『おらおらでひとりいぐも』で芥川賞を受賞。現在、50万部を突破する大ヒットを記録中。ちなみにこのタイトルは宮沢賢治氏の詩「永訣(えいけつ)の朝」の一節から取られたものだそうです。

 

f:id:kei561208:20170413024747j:plain 第158回直木賞門井慶喜さんもその宮沢賢治氏にまつわる作品『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞。紆余曲折に満ちた宮沢賢治氏の生涯を父、政次郎の視点から描いた作品。

1月中旬に行われた受賞会見では、石井さんがインド在住ということもあり3人揃わなかったのですが、今回、授賞式出席のために帰国してきた石井さんに3人が初めて顔合わせする場となったのが『ゴロウ・デラックス』という貴重さ(収録は授賞式前日)

登場する3人にこれまた恒例となりました吾郎さんからの花束贈呈が。そして、石井さんが受賞会見には出席できなかったということで、金屏風✨のリクエスト。さらに雰囲気を出すために、カメラマンさん(風?)まで用意し、パシャパシャと焚かれるフラッシュ……そして耐え切れずにフレームインしてしまう吾郎さんなのでしたw

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 受賞の瞬間は?

石井さんは受賞時はインドにいたのはわかっていますが、若竹さんと門井さんのお二人はどこで何をしていたのかというと、若竹さんは河出書房の会議室で大福を食べながら連絡が来るのを待ち、一方の門井さんはというと、担当編集者さんたち30人ほどで受賞の連絡を待つ“待ち会”でビールをちょっとだけ飲んで待っていたとw

 

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この写真は受賞連絡が来た後の乾杯のため、若干ドヤ顔に見えると石井さん。ただ、門井さんはこの後会見が行われるために飲みたいけれど飲めない顔をしていると。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 受賞の連絡

電話がかかってきてすぐ受賞がわかった門井さん。実は門井さんは3回目の候補での受賞、過去2回は落選の電話もいただいているわけです。しかし石井さんはインド在住ということで石井さんへの電話がかかりにくかったのか、ご主人の携帯に受賞の連絡が。

というわけで、今回はこの芥川賞直木賞受賞3作品が課題図書ということで、まずは

 

おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞

おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞

 

 

【おらおらでひとりいぐも】 
物語の主人公は夫に先立たれ、一人一軒家で暮らす桃子さん(74歳)
自宅でお茶を飲んだり、病院に通ったり、おひとり様の老後を過ごす桃子さんですが、そんな彼女の頭の中にはあちこちから故郷の岩手弁で語りかけてくる無数の話し声が。
リズム溢れる岩手弁と標準語を織り交ぜ、老いの境地を描いた作品。
ちなみに作者・若竹さんも岩手出身でご主人と死別し現在一人暮らしの主婦という桃子さんと同じ境遇なんだそうです。

 

老いに対してもポジティブな桃子さんが素敵だと吾郎さんと外山さん。というわけで、まずはこの岩手弁と標準語が織り交ざった超難読な部分を吾郎さんがを朗読します。

 

吾郎「嘆きの渦、悲嘆の呻きかしましく、こだまがこだまを読んで共鳴しあい、柔毛突起ども総毛だって剥がしく振動鳴動する。
てへんだあなじょにすべがあぶぶぶぶぶっぶぷぷ
ああ、くそっ、周造、いいおどごだったのに

周造、これからだずどぎに、なして
かえせじゃぁ、もどせじゃぁ
かえせもどせかえせもどせ
かえせもどせかえせもどせ
かえせもどせ
くそったら
かえせもどせかえせもどせかえせってば
桃子さんはグラスを鷲掴みにし、握ったストローで哀れなソーダ水をこれでもかと掻き回す。
回れ回るよソーダ水。
未だ溶け残ったいたいけな氷が三つ、亭主の敵とばかりになおもなおもストローの先で弄り回した」

 

朗読終了早々、“すみませんでした”と謝罪してしまう吾郎さんw

若竹さんから「てへんだあなじょにすべがあぶぶぶぶぶっぶぷぷ」の部分を聞くと隣にいる門井さんにこれ読めますか?と促してしまう吾郎さんでしたが、意外にも吾郎さんより上手く読めてしまう門井さん。"一度、おしんの父親を演じたというのに……"とぼやく吾郎さんですが、同じ東北でも岩手弁と山形弁はちょっと違うと思うの。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 岩手弁を小説に取り入れた理由

そんな岩手に実際に住んでいる人以外には難読な岩手弁を小説になぜ取り入れたのかというと、登場人物はほぼ桃子さん一人なので、彼女の脳内の声をダイナミックに表すためにはつるんとした感じがする標準語よりは、若竹さんご自身が使い慣れた岩手弁を使うのが相応しいと思って使ったそうです。

それを聞いた門井さんが方言の魅力は十分に理解した上で、"方言を100%話し言葉にするのはできないじゃないですか"と疑問が。若竹さんご自身も文字にする難しさを理解した上で、

 

若竹「確かに耳で聞いた音を文字に表すっていうのは難しいんだけれども、どうしてもこの、なんていうんだろう。言葉の厚みとか、温かみを伝えたくて、もしも分からなくても…それはしょうがない。ある程度、それを犠牲にしても言葉のなんていうんだろう吾郎:リズム感とか)そう、そう、そうです」

 

というのも門井さんが受賞された『銀河鉄道の父』も岩手県が舞台で、主人公となる宮沢賢治の父と息子とのやり取りも岩手弁で書かれているのです。実際、門井さんは東北に方言指導してくださる方がいらして、吾郎さんが語ったように読み手にわかりやすいよう配慮した結果、書き言葉に近い方言になったのではないかと門井さん。同じ岩手弁という方言を扱いつつも、書き手がどう物語に寄り添っていくのか、もしくは書き手の環境も本の形に影響を及ぼすのかなと思うとかなり面白いです。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 転機となった小説講座

小説を書き始め、完結まで書けるようになったのは小説講座に通い始めてからなのですが、実は若竹さんは8年前、55歳のときに57歳だったご主人を脳梗塞で亡くしてしまいます。突然の喪失に毎日"悲しい、悲しい"と嘆いていたら、息子さんが「どこにいても悲しいから外に出ろ」と探してきてくれたのがその小説講座だったのです。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 小説講座ってどんなところ?

2~3週間に1回行って、人の作品・自分の作品として提出したものを皆で読んで、それを「合評」するその繰り返しで、講師が「こう書きなさい」という書き方講座はしないそうです。実際、ボロクソに言った分は言われることもあるそうですが、結構面白いと。ちなみに若竹さんと石井さんは共通の先生で、教室の場所は別ですが、同じ時期に根本先生という有名な元編集者の方に教わったそうで、石井さんはなかなか褒められなかったのに、若竹さんは毎回褒められていたというw

 

<根本昌夫>
約25年間、主に純文学の編集者をしてきた。福武書店(現ベネッセ)の文芸誌「海燕」(1996年廃刊)では、若手時代の吉本ばななさん  
キッチン

キッチン

 
島田雅彦さん を担当。出版社の文芸部門の縮小などもあり、2002年からカルチャーセンターや大学などで教えるようになり、現在は11の講座を持つ。これまでも数多くの教え子が新人賞を受賞してきたが、芥川賞は初めて。

 

その根本さんに今回、緊急でお話を伺ってみた。 

【根本昌夫氏コメント】 
Q.お二人の受賞について
根本「本当のことを言うと……やっぱり若竹さんの作品は、今回100%賞を取れると思ってたわけ。でも、言った手前、若竹さんが芥川賞取らなかったらどうしようと思っていたから、すごくホッとした感じ」
Q.お二人にどんな指導をしたのか?
根本「若竹さんはご主人が亡くなって、本当に悲しい、自分の感情をぶつけるような詩を書いていた。本当の意味での悲しさ、喪失感は伝わらないから、もう少し時間や距離を置いたら?と言ったわけです」
Q.石井さんは?
「石井さんはね、最初から小説はちょっとレベルが違う感じ(レベルが違うというのは?)いつ新人賞取ってもおかしくないというような小説を書いていた(あまり褒めない先生と言っていたのに対し)褒めてたと思うけどね~」

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 執筆のヒントは『レ・ミゼラブル

何年か前に『レ・ミゼラブル』を観て感激した若竹さん。あの歌をもう一度聴きたいとYouTubeでググッたら、ミュージカルの舞台動画が出てきてすごく良くて、一斉に皆が色んな自分の思いを叫ぶみたいなのを何とか小説に出来ないかと思って出来たのが『おらおらでひとりいぐも』で、実際に吾郎さんも"そういう音の聴こえ方がこの小説を読むとしてきますよね、確かに。ザワザワと色んなところから音が聴こえてきて"と。

ちなみに会話で"ググッた"と出てきましたが、若竹さんはYouTubeはもちろん、2ちゃんねる(現在は5ちゃんねる)も普通に見ているそうです。いろんな人のいろんな生活が覗き込めるのが面白いのだと……本当は秘密だそうですが。ただし、ご自身についてやご自身の作品についてのエゴサーチは恥ずかしくて見られないそうです……そして門井さんに"人の生活は見るわけですね"と突っ込まれてました。

そして次回作について問われると、考えてはいるものの、口にしてしまうと言ったからいいやと完成した気になってやらなくなってしまうタイプらしいので今回はごめんなさいと。ただ、63歳で1作品の人なので、次は100歳ごろかもしれないそうですw

ということで、今週の『ゴロウ・デラックス』はここまで。次週も続けて芥川賞直木賞受賞作家第2弾です。

  

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 出版社放送終了後Twitter 

 

 

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