- 考える葦 -

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』と『ゴロウ・デラックス』

2017年8月10日放送の『ゴロウ・デラックス』第261回目は、日本の文豪の素顔に迫る特別企画をお送りいたします。今夜の課題図書は、

 

告白 三島由紀夫未公開インタビュー

告白 三島由紀夫未公開インタビュー

 

 

この本が書かれるきっかけは2017年1月、TBSで発見されたあるものが話題になったことから始まります。

 

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三島由紀夫とは】
仮面の告白』や『金閣寺』などを代表作に持ち、1963年にはノーベル文学賞候補に選出されるなど、日本が世界に誇る文豪の一人。

 

この発表が大きな事件として報じられたのですが、その理由はテープが録音されたのが1970年2月という時期……実はその9ヶ月後の1970年11月25日、三島由紀夫氏は陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地にて割腹自殺を遂げる、いわゆる『三島事件』を起こし世間に衝撃を与えるのです。その死の9か月前に録音した当時の心境の告白を書き起こしたものが今夜の課題図書となる『告白 三島由紀夫未公開インタビュー

ただ、このテープが最初に見つかったときは三島由紀夫氏のものであるかが分からなかったそうです。いろいろと検証した結果、三島由紀夫氏本人と断定。今回はその謎に包まれたテープをTBSということで特別に『ゴロウ・デラックス』がお借りし、さらに三島由紀夫氏に詳しい、『ゴロウ・デラックス』では久々ですがお馴染みの岩下尚史(56歳)さんに来ていただきました。

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 未公開テープの価値

三島由紀夫氏が亡くなってから戯曲・小説・評論・インタビューetcこまごましたものも含め、決定版の全集に入っているため、これがすべてと思っていた岩下さんらは新たな未公開テープの存在に酷く驚いたそうです。特に亡くなる9か月前の思いはどのようなものかと聞いてみれば、その9ヶ月後への思いを素直に語っているため、そういう意味でも大変貴重な資料。実際のテープの冒頭部分を聞いてみます。

 

三島ちょうどね、けさ6時に『暁の寺』が完成したんですよ。第三巻がやっと完成した。
ジョン・ベスターそれで全部完成したわけですか。
三島いえ、全部じゃないです。それで第三巻までが完成した。あと一巻残っているんですよ。
ジョン・ベスターあ、四巻ですか、そうですか。
三島第四巻目がですね、ちょうど今現在のこの時代になるんです。それでこの時間が生まれ変わりですから時間がジャンプしますよね。その前の第三巻は、今、完成した第三巻が昭和二十七年なんです。それで今度は現時点になるんですけど、現時点の小説が一番難しいですね。
1970年2月19日「三島由紀夫氏未公開テープ」より一部抜粋

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain テープ録音時には自決を決意!? 

 

暁の寺―豊饒の海・第三巻 (新潮文庫)

暁の寺―豊饒の海・第三巻 (新潮文庫)

 

 

暁の寺』というのは三島氏の晩年の代表作となる『豊穣の海』4部作の中の3作目。この3作目を書き上げた翌日にインタビューを受けた三島氏。さらに、その最終巻となる『天人五衰』を書き上げた翌日、三島氏は自決を遂げます。三島氏はこのときから自決を決意していたのかを尋ねる吾郎さんに、岩下さんはだと思うと返します。

三島由紀夫氏の親友である湯浅あつ子さん曰く、このインタビューを受ける何カ月か前のこと、国立劇場で『椿説弓張月』という歌舞伎の作・演出を三島由紀夫がしていたとき、湯浅さんが芝居を観に行って偶然にも三島氏と会い、"またこういう歌舞伎を書くの?"と尋ねると"いや、もう時間がないんだ。今、ライフワークに取りかっているから、これを書き上げたら僕はもう遠いところに行っちゃうからね"と答えたそうです。『豊穣の海』の4作目を書き終えたら……三島氏はすでに腹に決めていたのかもしれません。

元々、若い時から自分は45歳で死ぬのだと周囲には語っていた三島氏。随筆にも"女は35歳まで、男は45歳まで"と書いているぐらい、その思いは若い時から彼の中に存在していました。それを聞いた吾郎さんは、"武士みたいだね。生きながらにして死に方を探している……そういう武士道精神みたいなのに似てるんですよね"と。それは我々が想像もできない天才ゆえの美学が三島氏の中にあったのでしょうか。

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 超神童、三島の幼少期

1925年、東京都新宿区で生まれる、本名は平岡公威(ひらおか きみたけ)。父親は農務省官僚、祖父は元樺太庁の長官という厳格な官僚一家の中で育ちます。幼少期から文章に対し、天性の才能を発揮。テープでも当時のことをこう語っています。

 

三島僕は体が弱かったものですから、本しか読めなかった。そしてみんなが外で遊んでいるときに本を読んでいたような子どもでしょう。ませてたですね。それで非常に空想的な子どもでしたから、僕ほかに書いたことがありますけども、綴り方(作文)に全然現実のことを書かないんです。
例えば「きょうお父さんとデパートに行って、飛行機のおもちゃを買ってもらってうれしかった」ということを、友達はみんな学校で書くわけでしょう。僕はそういうことを書けないんです。初めから夢みたいなことを書くわけですね。「自分が船のマストに上っていったら、ずっと空に蝶々が飛んでいて、その蝶々を追っているうちに自分の体が空に浮かんでいって……」なんて話を書いてしまうでしょう。学校の先生は一番悪い点をつけるんです。そんな話は本当にはないと言って。そういうことばかり書いていた。
1970年2月19日「三島由紀夫氏未公開テープ」より一部抜粋

 

太陽と鉄より
私にとっては、まず言葉が訪れて、ずっとあとから、甚だ気の進まぬ様子で、そのときすでに観念的な姿をしていたところの肉体が訪れた。

 

とあるように、三島由紀夫氏の場合はまず言葉ありきだったと。そういう環境でもあったし、生まれながらにしてそういう力があったのです。ただ、本人はそれを喜んでいたわけではなく、言葉だけではいけないと後々の悲劇へと繋がっていきます。

1941年16歳で処女作『花ざかりの森』を執筆。

 

花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)

花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)

 

 

1944年には学習院高等科を首席で卒業し、東京帝国大学法学部へ入学。1947年には大蔵省に入省するもわずか1年足らずで退職し、小説家の道へと入ります。

f:id:kei561208:20170523013943j:plain ヒット連発の前期

そして1949年には書き下ろし小説『仮面の告白』が大ヒット。

 

仮面の告白 (新潮文庫)

仮面の告白 (新潮文庫)

 

 

1956年には『金閣寺』や『永すぎた春』を、1957年には『美徳のよろめき』や『鹿鳴館』など話題作を次々と世に送り出していきます。1954年の『潮騒』などは5回も映画化されているため、御存じの方も多いとは思います。特に20代後半から30代にかけての4、5年が凄い。実際、三島氏の中でも一番本が売れた時期でもあります。

ただ岩下さん曰く、『潮騒』は作品が少し変わった時期なのではないかと。

 

潮騒 (新潮文庫)

潮騒 (新潮文庫)

 

 

この作品は世界一周旅行でギリシアを訪れたときに書かれた作品のためか、太陽が感じられるような作品となっています。

1952年に当時としてはまだ珍しい世界一周旅行に出かけたときの体験。ギリシアで出会ったエーゲ海の太陽、そして彫刻の身体の美しさに三島氏は心を奪われたのです。これが三島氏にとっては大きな転機となりました。

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 三島を変えたエーゲ海の太陽

それまで日本の小説家といえば「夜の世界」で知性ばかりだったところを、エーゲ海に行くことによって外形の美しさに気づいた三島氏。あまり知性ばかりに偏るようではダメだと気づき、元々持っていた思いが形となり、作品も変わっていくのです。そして30歳のときにボディビルも始めます。少年時代は虚弱体質だった三島氏。自己改造をすることでこれ以降の文体や作風も変化していくのですが、皮肉なことに売り上げは落ちていきます。

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 40過ぎ男が読む三島由紀夫

売れなかったとはいえ、作品として不足があるわけでもなく、岩下さんとしては

 

午後の曳航 (新潮文庫)

午後の曳航 (新潮文庫)

 

 

はオススメなのだとか。吾郎さんに切実に泣きますよとさえ言い切る岩下さん。それに乗っかり、40過ぎたら夜家に帰ったら泣いていますと言ってしまう吾郎さんw

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 死について 

ジョン・ベスターそのあたりの死生観というか……。
三島死が自分の中に完全にフィックスしたのは、自分に肉体ができてからだと僕は思うんです。それは『太陽と鉄』の中にはっきり書いてある。その前は、自分に肉体というものがなかった時代は、死というものが外側にあったんです。そして、自分の中にその死が入ってくることがなかったんですね。だけど、肉体ができたらね、この肉体の中に死がちゃんと座る場所を見つけた。僕の文学的なテーマでは、死がそういう形で変わってきている。僕の小説は初めから終わりまでずっ~と死と関係がある。ですけど、死の位置が肉体の外から中へ入ってきた気がする。非常に曖昧な言い方かもしれませんけどね。
1970年2月19日「三島由紀夫氏未公開テープ」より一部抜粋

 

死が自分の中に入ってきたとはどういうことなのか。その答えのヒントとなりそうな部分を課題図書でインタビューと一緒に掲載されている晩年の随筆『太陽と鉄』の一説を吾郎さんが朗読。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 三島はどう死にたかったのか? 

吾郎私の死への浪漫的衝動が実現の機会を持たなかったのは、実に簡単な理由、つまり肉体的条件が不備のためだったと信じていた。
浪漫主義的な悲壮な死のためには、強い彫刻的な筋肉が必須のものであり、もし柔弱な贅肉が死に直面するならば、そこには滑稽な、そぐわなさがあるばかりだと思われた。
18歳のとき、私は夭折にあこがれながらも、自分が夭折にふさわしくないことを感じていた。なぜなら私はドラマティックな死にふさわしい筋肉を欠いていたからである。

 

三島としては華々しく、悲劇に准じて死ぬためにはガリガリだったり、贅肉があるようでは資格がないということ。行動するためには筋肉が必要だったのです。文士が机にへばりついて文字を書いているうちはそれがわからない、三島氏はそれを感じるために修行をして、『太陽と鉄』を書いたときにようやく悲壮な死が遂げられると悟ったのです。そのために小説もそうですが、「楯の会*1」も組んで着々とそのときに向かって進んでいった。まさに吾郎さんが語ったように、生きながら死に方を探し、その着地点を見つけたらひたすらそこへ邁進していったのです。

f:id:kei561208:20170523013943j:plain ゴロウの告白 

吾郎どうしましょう、岩下さん。僕たちは。
岩下男が年を重ねるのはなかなかキツイ。
吾郎いや、最近、僕ちょっと思いますよ。年取ったらもっと簡単に生きれたり、子どもの頃描いてた40代なんて、もうすべて何か理解して、悟って、余裕があって、生き方もわかってて、人に優しくて、そうやって生きていけるもんだと思ったら、どんどん、どんどん幼くなってきちゃう。どんどん、どんどん頼りない、自分自身が。
岩下そう、そう、気づくのね。
吾郎最近、気づくんですけど。
岩下そう、でも行動しなきゃダメ。
吾郎本当最近、ここ1年ぐらいですよ。それは行動すればいいんですか。
岩下行動する以外ないですよ。
吾郎なんですか、行動って、じゃあ。
岩下三島由紀夫はこういう行動を勇気をもって行動した。吾郎さんが勇気をもってどういう行動をするかですよ。
吾郎:それ探してくださいよ、一緒に。
岩下なんであたしがあんたの行動を探すのよ!あたしは自分のことで頭がいっぱいだよ!本当に!
吾郎なんかこう、本当に強靭な心と肉体になってくると思ったんですけどね、40代ってね。
岩下:なんでもあんた、黙って寝ててそんなもの修業がなんでも、お稽古が大事なんです。自己改造。
吾郎自己改造。
岩下はい!
吾郎僕の自己改造は自分で…気づかなきゃいけない。
岩下:当たり前です、当たり前。いくらあんたあたしのところ来て夜這い来て教えてくださいって言っても。
吾郎行かない、行かないw
岩下何よ、行かないって。あたしは唇は許しませんけど、耳たぶなら許す。
外山何を言ってるんですかw
2017年8月10日「ゴロウ・デラックス#261」より一部抜粋

 

三島由紀夫という日本が誇る文豪の死生観に迫る約20分、最後の最後で笑いで締めるのが『ゴロウ・デラックス』らしいなと感じました。

今回、この三島由紀夫氏の未公開テープが書籍になって『ゴロウ・デラックス』で取り上げると聞いたときから、TBSで発見されたテープだからとはいえ、改めて番組に対する信頼というものをヒシヒシと感じていましたが、放送日が近づくにつれ、様々な要因からよりその意味の重みを実感したものです。 

TBSの公式HPでも8月15日にはホット情報として

www.tbs.co.jp

番組の宣伝をしてくださったり、本当に感謝以外の言葉はありませんし、だからこそ、これからもこの番組を大切にしていきたいなと思いました。

というわけで、こんな素敵な番組がこれからも継続できるよう視聴された皆様のTBS、並びに番組公式HPへの感想をお願いします。

 

ゴロウ・デラックス 
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f:id:kei561208:20170523013943j:plain 『Book Bang』さんのネット記事

恒例、『Book Bang』さんによる『ゴロウ・デラックス三島由紀夫氏(岩下尚史さん)出演回の記事がこちら↓

 

www.bookbang.jp

*1:接侵略に備えるための民間防衛組織として、三島由紀夫が結成した軍隊的な集団。前身組織名は「祖国防衛隊」で、日本の文化と伝統を「剣」で死守する有志市民の戦士共同体として組織された。