【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『漱石を電子辞書で読む』と『ゴロウ・デラックス』

2017年6月1日放送の『ゴロウ・デラックス』第251回目のゲストは、日本の教育学者であり、明治大学文学部教授の齋藤 孝さん(56歳)

2001年に出版した『声に出して読みたい日本語』は260万部を超える大ヒット。

 

声に出して読みたい日本語

声に出して読みたい日本語

 

  

吾郎さん自身も読んだこの本。日本語ブームの火付け役にもなり、それ以降も日本語にまつわる本を数多く出版。さらにはニュースやバラエティ番組でも活躍する、元祖・先生タレントなのです。

吾郎さんは初対面ですが、外山さんとは一度ラジオでお会いしたことがある齋藤先生。実は上にある『声に出して読みたい日本語』は素晴らしいと永六輔さんがご自身のラジオ番組にゲストで呼ばれたことがあるのです。だから、日本語のプロである齋藤先生を相手に今日は言葉を緊張しちゃいますねと語る吾郎さんに、実は先生は言葉を間違えたことに対しては"面白い発想ですね"とポジティブに受け止められる方で、困ったときには"ファンタスティック"と言ってしまうお茶目な方だと伝えてくれる外山さん。そんな先生をお迎えして今夜の課題図書はといえば、

 

漱石を電子辞書で読む

漱石を電子辞書で読む

 

 

何気に知っているつもりで見過ごしてしまう単語を電子辞書で調べることで語彙力が上げられるという、新しい齋藤メゾットが書かれた1冊。

実は6冊以上も漱石にかかわる本を出版するほど漱石ファンな齋藤先生。今夜は夏目漱石生誕150年ということで、漱石の本に登場する面白い単語を電子辞書で調べて、楽しく語彙力をアップする方法を伝授♪

 

f:id:kei561208:20170607005526j:plain

 

【語彙力】
単語・熟語・慣用句などの知識量と利用能力

 

では、なぜ語彙力をあげる教材として夏目漱石の本が選ばれたのかといえば、齋藤先生曰く、今の日本語を作ったのは夏目漱石だと。今でも国語の教科書に夏目漱石の小説は載るほど彼の作った日本語はスタンダートとなったため、漱石の語彙を知ると日本語の基盤は出来るのです。(例:ロマン⇒浪漫と初めて当て字にした)

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain なぜ、電子辞書を使うのか?

casio.jp

ちなみに今回使用する電子辞書は齋藤先生も使っている、XD-G20000。多数の日本語の辞書を搭載しているため、言葉の広がりが出てきます。それになんといっても紙ベースの辞書は幅を取り、なおかつ種類も多いのですが、1つの電子辞書でそれは補えますし、キーボード入力をするだけで検索してくれるので紙の辞書よりも圧倒的に調べるのも早いのです。

それでは漱石を電子辞書で読んでいきましょう。最初の教材は、

 

坊っちゃん (新潮文庫)

坊っちゃん (新潮文庫)

 

 

負けん気が強く、いたずらが過ぎたため、両親から可愛がられなかった"坊ちゃん"が学校を卒業し、1人で四国の中学校に赴任した先での波瀾万丈な日々を描いた不朽の名作。主人公の坊ちゃんが同僚の教師にアダ名をつけるシーンを吾郎さんが朗読。どの単語がアダ名か注目してください。

 

吾郎「浅井は百姓だから、百姓になるとあんな顔になるのかと清に聞いて見たら、そうじゃありません、あの人はうらなりの唐茄子ばかりを食べるから蒼くふくれるんですと教えてくれた。
それ以来蒼くふくれた人を見れば必ずうらなりの唐茄子を食った酬だと思う
※『坊っちゃん (新潮文庫)』より一部抜粋

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 坊ちゃん』で語彙力をアップ

読み終えた瞬間から、"いやあ、ゴロウさん上手いですねえ。心に入ってきますね、エクセレントですね"とまさにポジティブに褒めてくれる齋藤先生w

では、この朗読したシーンでわからない言葉は何かといえば、 

【うらなりの唐茄子】
⇒『うらなり』:①瓜などの、伸びたつるの末の方になった実。つやがなく、味も落ちる。②顔が長く青白くて元気のない人
⇒『唐茄子』:かぼちゃ(南瓜)人を罵る言葉。容貌の醜いこと、間が抜けていることなどにいう。
※複数電子辞書検索:電子自書には複数の辞書が搭載。意味を比較することで正確な意味を把握できる。
 

つまり、青白い顔をした栄養が行き届いていない人なのです。

つづいては『坊っちゃん (新潮文庫)』の冒頭部分を外山さんが朗読。そこには全体のストーリーを物語る重要なキーワードが。

 

外山「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている
小学校にいる時分、学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある」
※『坊っちゃん (新潮文庫)』より一部抜粋

 

【物語のキーワード】
⇒『無鉄砲』:「無手法」の変化した語。理非や前後をよく考えないで事を行うこと。
⇒『理非』:理と非。道理に合っていることとそむいていること。
ジャンプ機能を駆使することで、新しい単語を覚えられる。 

 

齋藤先生曰く、漱石は冒頭でこの"無鉄砲"という一言で、この物語がどう展開されていくのかを目線づけたのです。

続いては教科書の教材として知られ、日本で一番売れている文庫本でもある、

 

こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)

 

 

奇妙な友情で結ばれている「先生」と私。ある日、先生から私に"遺書"が届いた。あなただけに私の過去を書きたいのです……まずは先生と主人公・私の重要なやり取りを吾郎さんが朗読します。

 

吾郎「"あなたは本当に真面目なんですか"と先生が念を押した
"私は過去の因果で、人を疑りつけている。だから実はあなたも疑っている。しかしどうもあなただけは疑りたくない。あなたは疑るには余りに単純すぎるようだ。私は死ぬ前にたった一人で好いから、他を信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。あなたははらの底から真面目ですか"
"もし私の命が真面目なものなら、私の今いった事も真面目です"私の声は顫えた
※『こころ (新潮文庫)』より一部抜粋

 

終わるなり拍手をし、"朗読CDとして売りたいぐらい。いやあ、気品がありますね、吾郎さんの声にはね"と仰る齋藤先生に気分が良くなる吾郎さんw いや、でも実際にそのとおりなので、ぜひ吾郎さんで朗読CDを検討していただけないでしょうか、齋藤先生。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain『こころ』で語彙力をアップ 

【物語のキーワード】
⇒『真面目』:①真剣な顔つきであること。本気であること。②誠実であること。まごころがこもって飾り気がない事。誠意があること。

 

改めて辞書で引くことで、今の時代に捉えている"真面目"という言葉と、漱石の時代で捉えられていた"真面目"には大きな違いがあるのがわかります。 

【物語のキーワード】
⇒『はらのそこ』:胸の奥深いところ。また、胸の奥深くで考えていること。

 

例えば"切腹"という言葉がありますが、腹を切ることで本当の本心を出すという意味もあるのです。そして"腹黒い"という言葉も、今は軽く捉えられがちではありますが、心の奥底まで真っ黒、つまり人として終わっている意味を持つのです。同様に"腹が立つ""はらわたが煮えくり返る"という言葉も。

最後に『こころ (新潮文庫)』のクライマックスシーン、「先生」がKの自殺場面を発見するシーンを外山さんが朗読します。

 

外山「私は顫える手で、手紙を巻き押さえて、再び封の中に入れました。
私はわざとそれを皆なの眼に着くように、元の通り机の上に置きました。そして振り返って、襖に迸っている血潮を始めてみたのです」
※『こころ (新潮文庫)』より一部抜粋

 

 美しい言葉ではあるものの、ホラーでもある文章。 

【物語のキーワード】
⇒『血潮』:①潮のように流れ出る血。ほとばしり出る血。鮮血。②燃えるような激しい感情。
⇒『迸る』:①とびあがる。とびはねる。おどりあがる。②勢いよく飛び散る。たばしる。噴出する。

 

つまり"迸っている血潮"とは相当な状況にあることがわかるのです。それはKの最後の命の形、それを襖絵に残したのです。

ちなみに上の文章にもある"襖"、この"襖"に着目される方はほとんどいないと思いますが、斎藤先生はこの『こころ (新潮文庫)』を『襖小説』と呼ばせていただきたいと。

襖というのは部屋と部屋を仕切るものですが、この物語を書いている私と自殺をしたKの部屋とは襖1枚で隔てられています。物音も聞こえてくるものの、会話をしたいときは襖を少し開け、会話をしないときは襖を閉じ、と襖には2人の関係性がよく表れているのです。しかもこの襖、この物語の中で21回も出てくるという頻度。その2人の関係を表している襖に血潮が迸ったということは、それを見てしまった私に強い印象を残してしまうのです。

"真面目""血潮""襖"の3つのキーワードを踏まえた上で、改めて『こころ (新潮文庫)』を読んでみるとまた違った印象を受けるのかもしれません。

 

f:id:kei561208:20170523013943j:plain 山田くんの消しゴムハンコ

そして恒例の消しゴムハンコは、夏目漱石のファンということで、お札になった齋藤先生。アイデアが素晴らしいとポジティブなお褒めの言葉をいただきました。

 

f:id:kei561208:20170608021951j:plain

 

今週はいつもとは違い、齋藤先生のスタンダードな形である授業という体で電子辞書を使い、言葉が持つ面白さというのを教えていただきました。『ゴロウ・デラックス』は読書バラエティー番組として本を取り扱う番組ではありますが、そもそもの原点である"言葉"、これに着目し、その始まりの楽しさを伝えるのはとても大切ではないでしょうか。

そして恒例、『Book Bang』さんによる『ゴロウ・デラックス齋藤孝さん出演回の記事がこちら↓

 

www.bookbang.jp

というわけで、公式HPにも番組の感想をお願いします⇒『ゴロウ・デラックス』ご意見・ご感想大募集!| TBS