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考える葦

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『しんせかい』と『ゴロウ・デラックス』

稲垣吾郎 TBSテレビ 読書バラエティ ゴロウ・デラックス 番組感想

 

2017年2月23日放送の『ゴロウ・デラックス』第239回目のゲストは、第156回芥川賞を受賞されたばかりの山下澄人さん(51歳)

登場早々、恒例となった花束を受け取る山下さん。その姿を見て、登場する前に受賞会見が別名“出所会見”と言われていたと話していた吾郎さんが、会見時の革ジャンですね?と尋ねれば、番組スタッフから服の指定が入っていたと。以前の浅田次郎さんも着物でと指定が入っていたので、番組構成上、世間が抱くパブリックイメージで登場いただこうと思っているのですかね。そのイメージが番組が進んでいくたびに薄れ、むしろ逆だと気づくところが面白いので、あえて番組も狙っているのかな?

 

 

Q.受賞された今の気持ちは?

A.僕が芥川賞作家ですよ。嘘やろって話やし、すごいなって芥川賞

                2017年1月19日 第156回芥川賞受賞会見インタビュー

 

 

実は元々、脚本家の倉本聰さんが主宰する演劇塾、富良野塾出身の俳優である山下さん。俳優活動と並行で小説を書き、これまで2012年の「ギッちょん」、2013年の「砂漠ダンス」、同年の「コルバトントリ」と3度芥川賞候補に。そして今回の2017年で4度目の候補で栄えある芥川賞作家となったわけです。

ということで今回の課題図書は、第156回芥川賞を受賞された

しんせかい

しんせかい

 

 

小説の舞台となるのは富良野塾をモデルとした演劇塾。そこで俳優を目指す主人公、著作者と同姓同名の山下スミト(19歳)の演劇塾での2年間の生活と、『先生』との交流を描いた自伝的な青春小説。

というわけで、まずはモデルとなった富良野塾倉本聰さんから山下さんが受賞されたときのコメントを。

 

 

倉本「うれしいですよ、本当に。彼の書くものはなかなか難しいものが多いが今回は知り合いがいっぱい出てくる。読んでニヤニヤした」

                        2017年1月20日 北海道新聞より

 

 

聞いた山下さんは“小説の感想ではないですよね(苦笑)”と。倉本さんは山下さんの小説を最後まで読めねぇよと毎回仰り、難しいとか、よくわからないとか言うらしいのですが、今回の受賞に対してはすごく喜んでくださったと。この収録の数日前に倉本さんと実際にお会いし、喜ぶ姿に山下さんも受賞できて良かったなと思ったそうです。

ドドンと書かれた本の題字も倉本さんがされたらしく、依頼をした1度目は「俺は字が下手だよ、特にひらがなが」と断られたそうですが、ある日突然に書いてくださって山下さんの元に送ってくださったそうです。そのやり取りからまた倉本さんとお仕事をご一緒する機会に恵まれたらしく、倉本さん脚本のドラマのキャスティングが1人決まっていなかったので、山下さんが出演することに。受賞記者会見の次の日に入った撮影では、これまでだと“誰?”といった感じになったところを芥川賞受賞作家だと気づかれ、スタッフも扱いに困る感じが出ていたのだとか。

そんな芥川賞を受賞した『しんせかい』がどんな物語なのか、演劇塾の入塾式で『先生』が新入生に挨拶する場面を外山さんが朗読します。

 

 

「こんにちは」と【先生】はまず頭を下げていった。

ここでいちばん偉い人なのに「こんにちは」と新入りのぼくたちに【先生】は頭を下げた。

【先生】も緊張しているように見えた。

隣にいたケイちゃんがふらふらし始めた。見ると顔が青い、というか白い。貧血だ。他の誰も気づいていない。

「大丈夫?」と小声で聞くとケイちゃんの隣にいたミランダさんが眉間に皺を寄せた。

【先生】は静かに話していた。

「ぼくは」【先生】は自分のことをそういった。

「人にものを教えられるような人間ではありません。だから黙って座っていれば何かを教えてくれるのだとは思わないでください。ぼくから盗んでください。ぼくも君たちから盗みます。それから、ここにいる間はぼくのいうことの全部を疑わず、まに受けてください。いずれ君たちとぼくの意見は違ってくると思います。だけどここにいる間だけは、ぼくのいうことをまに受けてほしい」

                      『しんせかい』より一部抜粋

 

 

そもそもなぜ高校卒業後に富良野塾に入ったのかといえば、偶然にも間違えて入ってきた新聞に募集記事が書かれていたために応募しに行ったのがきっかけで、山下さん曰く、“無料”という文字が魅力的だったのではないかとw

昔からブルース・リー氏と高倉健氏には憧れてはいたものの、脚本家の倉本聰さんも読み方すら知らなかった山下さん。入塾するためには書類選考に始まり、東京のオーディションでは結構な倍率の中、そのオーディションに受かり、富良野塾の塾生となった山下さん。

富良野塾1984年に脚本家の倉本聰が私財を投じて開設した無料の脚本家や俳優の養成施設(2010年閉塾)。毎年オーディションに合格した約20名の若者が全国から入塾、倉本さんの代表作でもある「北の国から」の舞台でもある北海道富良野市で2年間共同生活をしながら、脚本の創作や俳優としての稽古をします。その塾の特徴が芝居を学ぶだけでなく、農作業や大工仕事も行い、自給自足の共同生活を送ること。自給自足も農家さんに教えてもらいながら作業はするものの、慣れないことでなかなかうまくいかず、山下さんはメロンを1回全滅させてしまったこともあるのだとか。当たり前だけど凄く怒られたそうですw

そして晩御飯を食べた後には稽古場で芝居の勉強をしたり、公演の練習をスタジオ棟で行ったり、TVもないし、ラジオをつけてもロシア語が流れてくるような娯楽のない場所で大変ではあったものの、楽しかったと山下さん。

2年間の共同生活の中で一番思い出に残っているのは、高倉健さんが富良野塾へと来られたこと。しかも2日にわたって来られ、最後は講義として自分の若かったころの話だとか、いろんな話をしてくださったのです。そうやって2年間を過ごし、俳優として活動しながら、朗読会も開催しているのだとか。というわけで、今回は芝居の勉強に来たというのに、毎日農作業ばかりで何の意味があるのかと仲間に愚痴をこぼしていたところ、それを聞いていた『先生』がスミトに怒る印象的な場面を吾郎さんと山下さんのお二人で掛け合い朗読をすることに。

『先生』役を山下さんが、スミト役を吾郎さんが演じます。

 

 

「意味がないなんてことはね」

「はい」

「ないよ」

「はい」

「君にはまだわからないかもしれないけど」

【先生】は怒っていた。【先生】が怒ったときはスミトとはいわず「君」という。

さっきは全然怒っていなかったというのに、だから「スミトね」と話し出していたのに、たぶん話ながら腹が立ってきたのだ【先生】は。そういうことはぼくにもある。

「ぼくは地に足のついた役者や脚本家を育てたいと思っているんだよ」

「はい」

「うわっつらだけの、きれいなだけの、そういう今流行りのものじゃなくてね」

「はい」

「君にはまだそのことの意味がよくわかっていないだろうけど」

【先生】は怒っているというより、少し、何というか、傷ついていた。ぼくはとてもひどいことを【先生】にしてしまった気になっていた。

稼いだお金を全部使って【谷】を作って、仕事も忙しいのにぼくらに授業をして、食扶持だけは自分たちで何とかしていたけど、足りなきゃそれは【先生】がどうにかしているわけで、ときには寿司を食べさせてくれたり、寿司だけじゃなく今まで食べたこともないようなおいしいものを食べさせてくれたり、【先生】はして、なのにぼくは調子に乗ってみんなで拝むのだなんていったりした。

「すいませんでした」

ぼくはいった。

                          『しんせかい』より一部抜粋

 

 

台詞の掛け合いはお芝居のようだったと吾郎さん。これまでゲストに来られた作家の方がご自身で朗読することはありましたが、こうやって掛け合っての朗読は山下さんがされていることもありますが、お芝居風な小説だったというのもあるのかな。朗読というカテゴリーは一つだけですが、そのバリエーションは豊富にあるので、これからも様々な朗読のパターンを見せていただければと思います。

山下さんは実際に倉本さんを怒らせてしまったときにはすごく悪いことをした気分になるそうで、“きみ”と呼ばれるときは相当怒っている証拠なのだとか。

1987年の21歳で富良野塾を卒業した山下さんは俳優や劇作家として活動、やがて2011年の45歳になって舞台を観ていた出版社の方にすすめられて小説家としてデビューすることになります。その翌年の2012年には芥川賞候補に、『緑のさる』で野間文芸新人賞を受賞するなど、瞬く間にその才能を開花させます。そして2017年の今年、4度目の候補で芥川賞を受賞するのですが、その執筆スタイルは独特でスマートフォンのメモ機能を使って入力、その後、iPadに飛ばして修正などを行う形。いつでも、どこでも書きたいときに書けるのは、漢字の変換も楽なのもあり非常に便利だと思ってやり始めました。メモ機能は容量もあって、原稿用紙でいえば200枚分ぐらいは保存できるのです。ただ、長時間作業をするときは傍目で見ればずっとメールしているなと思われるのが嫌で、喫茶店ならば長時間滞在することはなく、1時間から1時間半ぐらいで次のお店に、1日で2~3軒は回る気遣いをしてしまうそうです。吾郎さんや外山さんは気にすることはないとはいいますが、やはり店員さんの視線は気になると思いますよ。メールしている云々じゃなく、コーヒー1杯で長時間滞在しやがってという視線ですけどw

ちなみに山下さんの俳優原点となるのは富良野塾卒業後に出演した「北の国から '87初恋」

実際に出演された際のドラマが放送されましたが、吾郎さん曰く、「うん、あのね……まったくわからない」

経緯としては人手が足りず、誰か手伝ってくれと電話がかかってきたときにたまたま山下さんしかおらず、現場にいったところ出演となったと。つまり、「北の国から」は富良野塾の人たちはお手伝いとして丸太小屋を建てたり、石の家を建てたり、出演したりとしていたのです。とお話をしているところで、「ルールルルル」とキタキツネを呼ぶ謎の声が。登場したのは山田太郎くん扮する黒板五郎さん。雰囲気は出てますが、結構酷いですw

汚れたスケッチブックの用紙に押されているのはドドンと山下さんの消しゴムハンコ。「あ、すごい」と感想を述べる山下さんに、これは今、会話している最中に山田くんが削って作ったのだときちんとゲストに説明してくださる外山さんが優しい。毎回、ゲストに説明しているのかはわかりませんが、こういうのが放送されるだけでも、山田くんの消しゴムハンコの大変さは視聴者にも伝わるのでいいですよね。

最後に収録を終えた後、そして放送前に山下さんが『ゴロウ・デラックス』について、そして吾郎さんについて嬉しいコメントをツイートされているのでそちらも紹介。

 

 

 

 

www.bookbang.jp

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