- 考える葦 -

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『祖父江慎+コズフィッシュ』と『ゴロウ・デラックス』後編

2016年7月14日放送の『ゴロウ・デラックス』は、先週に引き続きブックデザイン界の巨匠、祖父江 慎さん(57歳)

まずは人気ブックデザイナーとなったルーツに迫るため、祖父江さんの経歴を紹介。

子どものころから絵を描くことが好きだった祖父江さんは地元の愛知県立旭丘高校美術科を経て、デザインを勉強するために多摩美術大学へ入学。そこで偶然な出会いに遭遇し、ブックデザイナーの道を志すことになります。大学の漫画研究会の先輩にしりあがり寿さんが所属しており、そのしりあがりさんに今度出版する漫画本を一緒にやってみないかと誘われて作ったのが、

 

エレキな春 (ジェッツコミックス)

エレキな春 (ジェッツコミックス)

 

 

この漫画が新人漫画家としては異例なヒットとなり、その後、祖父江さんの元にブックデザイナーの依頼が舞い込み、現在もなお人気なブックデザイナーに。

ところでしりあがり先生といえば、抜群のセンスのギャグ漫画家ですが、彼も祖父江さん同様、作品がパターン化していない変幻自裁なスタイルを作り上げた漫画家さんだと個人的には思っています。偶然といえば偶然ですが、なかなか面白い関係性ではないでしょうか。

そして外山さんが祖父江さんに本はたくさん読まれるのですか?と尋ねたところ、かなり時間がかかってしまうとのお答えが。実は読み進めていくうちこの内容に果たしてこの書体で大丈夫なのだろうかとか、行間が空きすぎだろうと文字が気になってしまい、先に進めなくなってしまうのです。でも気になったのは子どものころからで、ブックデザイナーになったからではないとのこと。おかげでTVを見ていてもテロップの書体が気になってしまい、内容が頭に入ってこなくなるそうです(そしていろいろ書体を変えてテロップを出すスタッフたちw)。そんな文字に敏感な祖父江さんが文字にこだわった本が、

 

ユージニア (角川文庫)

ユージニア (角川文庫)

 

 

作者である恩田さん自身から、通常ミステリーというのは読み進めていくうちに謎が複雑になり、だけど最後には謎が解消されてスカッとするところを、読めば読むほど具合が悪くなるというか、スッキリしない感じをデザインで何とかしていただけないだろうかと依頼が入ったため、本来であれば統一した書体を使用するところをあえて漢字・ひらがな・カタカナそれぞれに書体を代え、バランスの悪さを狙ったそうです。さらにいえば、小さな文字は位置を右上寄りにするなどちょっとした違和感も演出。

そんな祖父江さんの個性的なデザインの原点となるのが夏目漱石の「坊ちゃん」

 

坊っちゃん

坊っちゃん

 

 

日本の文字の組が好きな祖父江さん。その研究に適していたのが「坊ちゃん」だったと。書いてから100年が経ち、なおかつ古本屋でも安く手に入れることができるため、集めていくうちに大量の「坊ちゃん」の書籍が。たとえば「坊ちゃん」というタイトルで大正3年に出版された本と、大正13年の94刷となった本とでは行間や書体にも明らかな変化が見られるのです。そして次に祖父江さんが吾郎さんにぴったりと渡した「坊ちゃん」が、

 

坊ちゃん (お風呂で読む文庫  1)

坊ちゃん (お風呂で読む文庫 1)

 

 

お風呂の中で読んでも紙が濡れることなく、皺になったりもしない本なのだとか。というより、祖父江さんはいつ吾郎さんがお風呂で本を読むのを知ったのでしょう。ひょっとして撮影の合間にそういうお話が出たのかな。また本のサイズが約5cmぐらいの「坊ちゃん」だとか、これまで出版された中で文字が一番大きい「坊ちゃん」だとか、本当に同じ内容の本なのに様々です。そうやって研究のために夏目漱石の「坊ちゃん」を長年集めながら、いつか自分も夏目漱石の本を出したいと夢を抱いていた祖父江さんに、念願叶って2014年ようやくデザインの依頼が舞い込みます。

 

漱石 心 (祖父江慎ブックデザイン)

漱石 心 (祖父江慎ブックデザイン)

 

 

この本はなるべく片手で読みやすいようにデザインしたと。そして唐突に出現するつり革w でおわかりかと思いますが、通勤中などの電車で読むのに特化し、紙の硬さ、のどと呼ばれる部分の余白は大きめにしておき、片手で読んだときに中心近くの文字が読めないのをなくそうとしたデザインなのです。

なぜ片手で読める本にしようと思ったのかという問いには、西洋人は本を読むときにテーブルの上で開いて読むので硬い表紙で大きめな本になるのに対し、アジア人は手で読むタイプになり、なおかつ現代はスマホなども片手で操作するため、片手設計を極めたデザインにしてみたのです。

 

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そんな本を愛するあまり祖父江さんが本の寿命まで考える信念を吾郎さんが朗読。

 

 

本にも寿命がある。

造本プランを立てるとき、ついつい、まだ生まれてもいない本の寿命をあらかじめ考えてしまう癖がある。

できれば長く読み続けてもらいたいと思う。

ただ、寿命の長い本を設計することって不可能じゃないけれども、でも、それだけでいいのかしら?って考えてしまう。

不必要に万全な本ってなんだか不気味。

何度読んでも痛みも壊れもしない本より、読んだ分だけほどほどに汚れてくれる本のほうが好きだな。

           『祖父江慎+コズフィッシュ』より一部抜粋

 

 

色褪せ、古めかしくなっていく本というのもまた味わいがあって、自分なりの歴史を感じられていいとは思います。もちろん、大切のあまり、ビニールに入れ、時折本の陰干しをするのもまた一つのその本と個人との歴史でもあるとは思いますが。そんな本の寿命も考え、装丁した本が、

 

ベリーショーツ 54のスマイル短編 (ほぼ日ブックス)

ベリーショーツ 54のスマイル短編 (ほぼ日ブックス)

 

 

ノドと呼ばれる部分の後ろに仏様のイラストを描いて入れているため、長年使い続け、本が壊れたときにノドボトケさんが出現する装丁という実に洒落っ気がw今回は特別にそのノドボトケさんを見せていただくことに。その際、背丁に書かれた文字が気になり、祖父江さんに質問し、初めて知った吾郎さん。長年、本を取り扱う番組をしていたのに知らないことばっかりだと感心します。装丁に関してもそうですが、本が出版されるまで、そして本屋さんに並べられるまでの流れというのは知らない方も多いので、本を取り扱う番組ですからいつか『ゴロウ・デラックス』でそういった出版社から印刷会社、そして本屋さんまでのツアーロケしてみるのも面白いかもしれませんね。ロケする側も協力する側も大変ですがw

 

www.koei-printing.co.jp

突然ですが、ここでブックデザインへの飽くなき探求心をお持ちの祖父江さんに関する質問です。

Q.祖父江さんが印刷の実験で混ぜたものとは?

①酢醤油 ②カレー粉 ③著者の生ヒゲ

 吾郎さんは③の著者の生ヒゲと答えますが、正解は全部w

①の酢醤油は腐っていくポスターに興味があり、化学変化を起こしてどんどん劣化していくポスターを作りたくて、いろいろ研究した結果、インキに醤油や酢を入れると劣化が発生するのではと酢醤油をインキに混ぜ、現在、劣化進行中。

②のカレー粉は通常はインキを使って刷るところを、天然の色を使ってポスターを刷ったらどうなるのか興味があったのでやってみたところ、可愛らしい色合いのポスターに(ちなみに黄色はカレー粉、赤はチリペッパー)インキに固形物を混ぜたため、手で触るとブツブツした突起物が。吾郎さん曰く、ペンキを塗った感触がするそうです。当初は匂いもしたものの、やはりすぐになくなってしまったらしく、そして印刷所が大変だったため、もう二度とカレー粉を、というかスパイスを混ぜての印刷はしてくれないだろうと祖父江さん談。

③の著者の生ヒゲは最初に吾郎さんが言ったように、本の著者のDNA入りのインキがカバーで欲しかったと。そして実験は無事に大成功♪

 

 

が、そこには大きな落とし穴が。印刷に必要なヒゲは段ボール1箱分となるため、諦めざるを得なかったという(>_<)

そんな祖父江さんは現在も20冊のブックデザインを進行中で、本を作るための“新しい素材”も模索中。

 

鳥肌が

鳥肌が

 

 

束見本の中にはコンドームメーカーで有名なオカモトさんによるゴム製の薄いシートが。ただあくまで実験なので実際に強度や工程、時間とコストの関係によって取り入られないことのほうが多いのだとか。

今さら聞けない印刷用語集 その18「束見本」 - 印刷見聞録 | 京都 | からふね屋

またまだ新たな技術もブックデザインに取り入れられないか模索はしているらしく、

 

www.yamato-grand.co.jp

ブラックライトにあてることで白黒だったものに色が乗ったり、何もないところにカラーのものが浮かび上がったりする特殊インクを使ったものが出来ないか、これから考えていきたいそうです。この技術はいろいろなことに使えそう、例えば絵とかCDとかと反応する吾郎さんに、祖父江さんは“やっちゃいますよ!言っていただければ”とコメント頂きましたので、ぜひSMAPの56枚目が決まった日には祖父江さんデザインでお願いしたいものです。

そんないろんなものに注目している祖父江さんにとってのブックデザインとは?という外山さんの質問に対し、『あまり無理して作る感じではないんですね。デザイナーがこうだとやり過ぎてしまうと内容が消えてってしまうし、程よい具合にテキストが形になるのを手伝いする助産婦的な立場が僕の仕事かなって。やっぱり本は著者のものだからデザイナーのものではない』と素敵なコメントが。

そして山田くんが表れ、恒例の消しゴムハンコの披露を。今回は山田くんも消しゴムハンコをブラックライトで浮かび上がる特殊インクで押し、祖父江さんと祖父江さんのデザイン事務所キャラクターである「サンハンちゃん」を。ちなみに「サンハンちゃん」は三半規管をモチーフにデザインされたキャラクターで、今回の課題図書の表紙カバーにもなっています。

 

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祖父江さんは消しゴムハンコに自分はこんなに格好良くはないといいつつ、面白いと一言。この面白いは番組中もよく出てきた言葉で、ある意味、祖父江さんにとって最大級の褒め言葉じゃないかと思います。

自由な発想というのは、何かを目の前にして面白がれるところから始まるのかもしれません。時代とともに変化していく技術にも柔軟に対応できるのも、その面白がれる気持ちがあればこそではないでしょうか。これから先、どんな技術が生まれ、そしてそれをどうブックデザインに祖父江さんが活かしていくのか、これから書店で本を眺めるときにはそんなブックデザインにも着目していこうと思える新たな視点をこの『ゴロウ・デラックス』でいただけた気がします。

最後にいつもの『Book Bang』さんによる番組記事と、祖父江さんに関するデザインに関する本を紹介。もしよろしければご覧ください。

というわけで、よろしければ公式HPに番組の感想をお願いします⇒『ゴロウ・デラックス』ご意見・ご感想大募集!| TBS

 

www.bookbang.jp

 

 

www.mdn.co.jp