【考える葦】

某男性アイドルグループ全活動期メンバーで、左利きな彼(稲垣吾郎)を愛でる会

『魂の退社』と『ゴロウ・デラックス』

2週間ぶりに放送された2016年6月23日の『ゴロウ・デラックス』第209回目のゲストは、元朝日新聞社の社員で、現在はフリーランサーの稲垣えみ子さん(51歳)

吾郎さん曰く、読んで驚いたと、世のサラリーマンの方に響いていると思いますよという本日の課題図書はといえば、

 

魂の退社―会社を辞めるということ。

魂の退社―会社を辞めるということ。

 

 

登場して驚くのはその髪型。一目見たらすぐに稲垣えみ子さんを脳にインプットしてしまいそうなほど強烈なイメージをもたらすアフロヘアですが、2016年1月までは670万という日本国内では第2位を誇る発行部数の朝日新聞社の社員だった女性です。編成委員も務め、コラムを連載、その風貌から名物アフロ記者とも呼ばれていたそうです。そんな稲垣えみ子さんのコラムは2011年の東日本大震災を機に始めた電気をほぼ使用しないという究極の節電生活へと変わり、そのコラムは当時報道ステーションのキャスターだった古舘伊知郎さんの目にもとまり、2度番組に出演するほど注目を集めました。そしてその節電生活は朝日新聞社を退社後も続き、今はさらなる進化を遂げて究極の清貧ライフになっているそうです。

まずは2016年1月に朝日新聞社を辞めるに至った理由について外山さんが朗読します。

 

 

会社を辞めると宣言した時、周囲の反応は驚くほど同じであった。まず言われるセリフが「もったいない」

え、もったいない?

な、何が?

答えは様々だったが、要するに、このまま会社にいたほうが「おいしい」じゃないかということのようであった。

なぜそんな恵まれた境遇を捨てるのかモッタイナイ、ということなのであろう。

あえて一言で言えば、私はもう「おいしい」ことから逃げ出したくなったのだ。

 

 

       『魂の退社―会社を辞めるということ。』より一部抜粋

 

 

人はいずれ死んでいくので、お金にしても健康にしても、今あるものは必ず失う日が来ると。だとするならば、「おいしい」ことがいい価値観だとか、たくさん持っていることがいい価値観だとするならば、人はどんどん不幸になっていくのではないか。挙句に死ぬそのときが一番不幸ではないかという稲垣えみ子さんに対し、「どうしよう、捨てられないものばかりだよ」と吾郎さん。

ただえみ子さん自身もかつては真逆な考え方をしていたそうで、どうして今のような考え方に至ったのかを年表で確認することに。

1965年に愛知県に生まれ、1987年には一橋大学社会学部を卒業し、朝日新聞社入社。えみ子さん曰く、特ダネを発掘できるような良い記者ではなかったらしく、インタビュー記事が得意で水木しげるさんや古舘伊知郎さんにもお話を伺ったことがあるそうです。その水木先生のインタビューが朝日デジタルのアーカイブにありましたので、ご興味がありましたらお読みください(ただし、全文は会員にならないと読めないのでご注意ください※無料)

 

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そうやって独自のスタイルを確立をしたえみ子さんですが、30代後半に出世コースから脱落してしまう結果に。新聞記者は大体40代前になると“キャップ”と呼ばれる3~4人ぐらいのチームを率いて取材し、記事を書くリーダーの役割を演ずるようになるそうです。 

  

 

社会部を例に挙げれば、社会部長の指揮下に数人の次長がいる。「デスク」と通称され、ローテーションで朝夕刊を担当、現場を指揮すると同時に、記者の書いた原稿をチェックする。ほかに部長や次長と同格で、管理業務につかず、取材・執筆に専念する編集委員が何人かいる場合が多い。 

次長の下は全員社会部記者の肩書きだが、チーム取材のためキャップと呼ばれるリーダーがいる。チームには本社で企画記事を担当したり、大事件、事故の取材にあたる遊軍のほか、取材先の官庁ごとに記者クラブに詰めるクラブ詰めがある。警視庁、裁判所、国会、宮内庁厚生労働省国土交通省など各省庁に記者を配置している。

    「新聞記者」のカネと人事 - 『日本の人事部』より一部抜粋

 

  

基本的によほどの問題がなければ、キャップとして候補にあげられていくはずが、えみ子さんは名前すらもあがらなかったらしく、そのことにショックを受けたし、またそうやってショックを受ける自分のこだわりも感じてさらにショックを受けたそうです。

そしてもう一つが収入の問題。朝日新聞社は平均年収が高い300社ランキングの13位「1,236万円」とかなりの高収入を誇る会社。

 

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「平均年収が高い」トップ300社ランキング | 就職四季報プラスワン | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

当時は給料が上がれば上がった分、生活レベルもそれに見合った豪奢な生活をして当然だろうという考え方をしていたため、かなりの浪費をしていたそうです。毎シーズンお店に行ってはバンバン購入して店員さんを喜ばせ、そこに自身の存在証明を感じていたらしく、その当時はまるで降りられない列車に乗っていたようだったと。ですが、そんな日々もある日突然、強制的に終わりを迎えることになるのです。

それが2004年の38歳、香川県高松支局への移動。後輩に島流しと言われるぐらいには栄転とは言い難い移動ですが、その香川県で人生を変える素晴らしいものとえみ子さんは出会います。

①山でお遍路さんと出会う……休みの日はあまり行くところがないので山登りをしていたら、お遍路さんをしていたおじいちゃんとすれ違ったと。普通に挨拶をしてすれ違った後、急にえみ子さんは泣き出してしまったそうです。お遍路さんというのは徳島→高知→愛媛→香川と辿るわけで、いろいろ辿った後の最後でその笑顔になるんだなと思ったら捨てていくことは実はものすごいことなのではないかと気づいたと(四国八十八ヶ所霊場の地図 | 四国おへんろ.net

②お金の基準がうどん……香川の人は何をするにもうどんを基準にすると。100円=1杯のうどんと換算するらしく、1,000円あれば、10杯もうどんが食べられるとみんなが言い、えみ子さんの価値観はそこでも変えられていきます。

2005年には大阪本社に復帰、その後アフロに。

 

 

「そうだ、アフロ、しよう」

目論見や戦略があったわけではない。

とにかく何でもいいから、変化が欲しかっただけである。

以来、人生は思いもよらぬ方向に動き始めた。

      『魂の退社―会社を辞めるということ。』より一部抜粋

 

 

ちなみにその人生は思いもよらぬ方向に動き始めたことについてコラムに記載されていましたので紹介します。(こちらも会員にならないと全文読めませんのでご注意ください※無料)

 

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そして2011年に節電生活が始まります。直接のきっかけは原発事故で、ならば原発に頼らない生活は本当にできるのか、ただ悪戯に反対と訴えても説得力がないのでやってみようと。当時は関西電力の管内に住んでいたので、大体半分が原発の電気で賄っているから電気代を半分節電することを試してみることに。最初はこまめに電気を消すとか、冷蔵庫の中の物を減らすといった節電対策をしていたものの全然減らず、ならば電気がないことを前提に生活をしてみたらどうなるのか。夜帰宅しても電気はないわけですから、暗闇の中で目が慣れるのを待つといった生活。

そんな生活を送りつつ、2016年50歳で朝日新聞社を退社。これは60歳という年齢で自らの意思関係なく会社に区切られて退社するのではなく、50歳という一つの区切りに自ら切り替えていくきっかけにしようと決意されたそうです。その後は冒頭のほうにもあったように、清貧生活はさらなる進化を遂げ、一月の電気代は160円という驚異の金額に。

一体どんな生活を送れば、一月160円という電気代になるのか、興味があるということで実際にえみ子さん宅へ皆でお邪魔することに。

 ①エレベーターはあるけれど、電気を使わない生活なので最上階(5F)であろうとも階段を使う。マンションの共有スペースは共益費・管理費として支払ってはいるものの、お金の問題ではなく、電気の問題なので一切使わない。

②部屋にカーテンは入れず、間接照明はあっても滅多に入れない。外の景色は素敵に映るものの、暗いために吾郎さんたちはシルエットのままという撮影に支障が出たため、山田くんが“ごろうと書かれた提灯を持って照明代わりにw

ちなみに以前引っ越しをした際、ブラインドカーテンをオーダーしたのですが引っ越し日に間に合わず、数日、カーテンのない生活を送ったことがあります。吾郎さんたちの言葉じゃありませんが意外にも明るいんですよね。ま、私はカーテンないと明るすぎて眠れないから、やはりカーテンは必要だなとえみ子さんとは逆の思考に走りましたが。

③ベランダには食料保存のスペースが。太陽にあてることで半分調理をしてくれるため、調理時間は通常の半分ですむのだとか。カーテンレールを使って、干しシイタケを作ったりもしています。あ、シイタケは干したほうが栄養素がさらに凝縮し、非常に栄養価が高まる食材となるらしいです。

④キッチンにガス台はあれど、ガス契約もしていないのでカセットコンロを使用。お茶とかご飯を炊くのに使用しているそうです。またキッチンは狭いのでまな板など、使用するものはサイズの小さめを。後、言葉にはしませんでしたが、洗う量(水道量)を考慮もされているから、あえて小さいサイズを使われるのかなとも思いました。

⑤風呂トイレスペースはガスの契約をしておらず、銭湯に行くため、お風呂場は物置に。そして洗面器が洗濯機代わりに。化粧品は数少なく、メインはごま油と。でもえみ子さん肌キレイですよね。えみ子さんの化粧品を見て、吾郎さんは「化粧品、これの10倍ぐらいありますよ」と仰っていますが、吾郎さんの場合はキレイを保つこともお仕事のうちですから、あってもおかしくはないかと。

そんな日々の生活、『ゴロウ・デラックス』に出演する前に稲垣えみ子さんの節電生活を送る記事をTwitterで紹介したことがあるので、改めてこちらにも紹介しておきます。

 

getnews.jp

えみ子さん流節電生活を堪能した後は、この生活にたどり着いた気持ちを提灯だけの暗闇の中、吾郎さんが朗読します。

 

 

現代人は、ものを手に入れることによって豊かさを手に入れようとしてきました。

しかし繰り返しますが、「あったら便利」は案外すぐ「なければ不便」に転化します。

そしていつの間にか「なければやっていけない」ものがどんどん増えていく。

それは例えて言えば、たくさんのチューブにつながれて生きる重病人のようなものです。

私の節電は、いわばそのチューブを一つずつ抜いていく行為でした。

えいっと勢いで抜いたものもあれば、恐る恐る抜いてみたものもありました。

しかしいずれにせよ、ほとんどのものが抜いてもどうってことはなかったのです。

「なくてもやっていける」ことを知ること、そういう自分を作ることが本当の自由だったんじゃないか。

この発見が私に与えた衝撃は、実に大きかったのです。

        魂の退社―会社を辞めるということ。』より一部抜粋

 

 

すべてのテーマですよねと問いかける吾郎さんに、節電をしているとえらいねとか言うんですけど、えらいとかそういうことじゃなくて、本当に自由を手に入れた感じがあってと答えたえみ子さんにハッとさせられるよねと吾郎さんは言いましたが、これは年齢的なものや考え方にもよるんだろうなあとは思います。多分、若い方だと今ある人生から引き算をすることはなかなか考えられないんじゃないかなと。また失うことによって、これから自身が迎えるだろう人生の終焉を自覚、そして覚悟することもできるだろうし、全員が全員、右にならえをする必要はないと思うので、こういう生活もあるのね。そして共感できるのであれば同じような生活をすればいいし、そこまでする必要はないけれど、ちょっぴり節電や引き算は意識していった生活を送っていこうと思えばそうすればいいし、まだまだ自分の力で得たものなんだから、自分の自由に足していけばいいじゃんと思えばそうすればいいだけだと感じます。

ゴロウ・デラックス』として一冊の本に書かれた情報を、そこにある作者の思いを番組として紹介するものの、そこから先は否定も肯定もせず、視聴者に委ねるスタンスを保ち続けてくれるのはありがたいですし、これからもそうあり続けてほしいです。

そして、稲垣えみ子さんが朝日新聞社を退社が決まった最後のコラムが残っていましたのでこちらも紹介しておきます。(同じく、こちらも会員にならないと全文読めませんのでご注意ください※無料)

 

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最後に恒例となった山田くんの消しゴムハンコは稲垣えみ子さんの上半身のハンコが3体、それぞれ色を変えて柔らかい感じで仕上げてありました。

というわけで、よろしければ公式HPに番組の感想をお願いします⇒『ゴロウ・デラックス』ご意見・ご感想大募集!| TBS