『編集長 稲垣吾郎 #63』(2018.03.14放送分)
3月14日(水)に放送された『編集長 稲垣吾郎』の第63弾。
■「GORO's Column」……編集長、こんばんは。7年前、娘の5歳の誕生日にお料理道具セットをプレゼントしたというハガキを読んでいただいた者です。あのとき吾郎さんに"娘さんがお料理好きになるといいですね"と言っていただきました。当時5歳だった娘ももう12歳になり、もうすぐ小学校を卒業します。卒業文集に将来はお料理関係の仕事がしたいと書いたそうです。お料理を手伝うのが好きだから苦じゃないそうで、私が体調の悪いときには1人で夕飯作りを任せられるようになりました。本当にありがたいです。そんな娘の夢をこれからも応援したいと思っています。吾郎さんは小学校のころ、夢はありましたか。
うん、すごいね。もう12歳でお母さんの代わりにできるくらいって。うん、まあ、本当に料理好きになれて、なっていただいて良かったです。僕も嬉しいですね、これは、うん。将来は何だろうね、料理関係の仕事ね、うん。まあ、でもねえ、やっぱり女性、これ料理作れるともう男性のハートもつかめますからね。いいんじゃないでしょうかね、お仕事やるにしろ、やらないにしろ。このころからちゃんとお料理やってね、お母さんの背中を見ながら、料理を勉強するっていいことだなって思いますけれども。
まあ、僕が小学校のころはねえ、う~ん、まあ、具体的な夢っていうのはそこまでハッキリしてなかったかな。でも、やっぱこうアルバムとかを見ると、何かパイロットになりたいみたいな、宇宙船の。何かちょっと冥王星とか、海王星とか、ねえ、そういうもう果てしなく遠い所まで行ってみたい、みたいなそういう何か書いてありましたけどね。何かそういう宇宙とかにすごい興味があって。多分、親に子ども用なのかな。ちょっとした小さい、それでも見える天体望遠鏡みたいなものを一度買ってもらった記憶があってね。それで結構天体を眺めるのが好きで、なかなかあの程度の望遠鏡では星とか発見できないですけどね、もちろん。でもそういう夢が子どものころあって、プラネタリウムに父親に連れて行ってもらったりとか、うん。何かそういう宇宙に興味がありましたねえ。そういうものに対する何か未知のものとか、果てしないもの、永遠とかそういったものに何か憧れがあったんでしょうねえ、うん。
今だったら何かねえ、そんなロケットとか、スペースシャトルとか、絶対乗れなそうですけどね。ただでも飛行機乗るのが怖いって言ってるぐらいなのにね。あのGに耐えられないでしょうけれどもね。まあ、何か僕も漠然とそんな夢が子どものころは持ってましたけどね。
Bruno Mars Talking To The Moon (Official Video)
■「GORO's Search」……今月11日でですね、東日本大震災から7年となりました。
今回はですね、被災地の話題を特集致します。陸前高田市はですね、岩手県沿岸部の一番南の自治体で、東日本大震災では津波で市街の中心部が壊滅的な被害を受けました。その後、土を盛って土地の高さを上げる嵩上げが行われ、去年3月にはスーパーやドラッグストア、本屋などの商業施設。そして10月には市の図書館がオープンしました。
かつての街の中心部に新しい街ができたことで、街が元気になることが期待されています。ということで、この図書館に来た人に話を聞いてきましたので、こちらをお聞きください。
「週一ぐらいで、ま、子どものやつなんで、はい。何か図書とか、読書させたいなと思って連れてきてました」
「本に触れる機会というのも、その本屋さん自体、多くはなかったので。こうやって図書館が出来たことによって興味があるなあという本も見られるようになったので、それがすごく刺激が増えたなと思います」
「買い物できるところが増えたのはとても便利ですし、こう人が集まるところが増えたので、何かこう街に活気が戻ってきたなという感じはします」
はい、ということで、まあ、良かったですね。街に、本当に徐々にだとは思うんですけれども活気が戻ってきて、うん。ねえ、僕もしばらく行ってないのでね。やっぱり本当にあの震災直後の陸前高田の、ねえ、あの景色っていうのが、やっぱりずっとこう脳裏には焼きついているんですけれども。ねえ、今、写真なんかもあって、こういう人の声を聞くと、ねえ、本当に少しずつですけれど、まあ、復興してるんだなあという、うん。何か少し明るい気持ちにはなれますけれどもね。
さあ、そしてですね。またこの市街地に新たに喫茶店「熊谷珈琲店」をオープンした方がいます。地元で生まれた熊谷幸さん、お客様にどんな店なのかを聞いてみました。
吾郎さんが見せていただいた写真に「陸前高田は震災直後2回か、3回ぐらいは行かせていただいたんですけれども、最初に行ったときはヘリコプターで行ってね。まだ震災直後だったので、そのヘリコプターから見る景色っていうのがもう本当にショッキングな景色だったというか、今でもやっぱり焼きついてますけどね。(中略)そうですね、それで陸前高田、他の街も行ったんですけれども、でまあ、いろいろ料理を作らせていただいたりとか、番組の企画でねえ、ちょっと行かせていただいて、皆さんと触れ合う時間を作らせていただいたんですけれども。でもねぇ、これ写真で見ると何かだいぶ整理されてきた街並みというか、復旧されているんですね」
新しい街
熊谷さんの喫茶店「熊谷珈琲店」がある場所も10メートルほど土を盛った場所に建てていて、まったく何もないところから街が出来ている状態で、1階が喫茶店、2階が住宅になっているそうです。
熊谷さんの経歴
熊谷さんご自身は高校まで陸前高田で過ごし、大学で埼玉に出て、その後は東京で別のことをしていたものの、震災を機に戻って喫茶店を始めた。親戚がNPOとして立ち上げていた『りくカフェ』という喫茶店があり、色んな方が集う場所になっているのを拝見し、集いの場を作りたいなと思ったのが喫茶店を始めるきっかけとなったそうです。ただ喫茶店は興味はあったものの、別の仕事をしていたため、何軒か飲食店を経由してからこちらの喫茶店を始めたのだとか。
お店のこだわり
木目の温かい感じが好きだったため、喫茶店内も木目調を活かした作りになっている。おかげさまでいろんな方に来ていただいていると。顧客層は固まりつつありますが、それでも毎日ちょっとずつ新しい顔の人にも来ていただいたりして、実家がタバコ屋でそれを知っている方が来てくれたり、女子高生たちが近所の美味しいケーキ屋さんから取っているケーキを食べに寄ってくれるそうです。ちなみにコーヒーは生の豆を、焙煎機を使ってやっているそうです。ただし、基本的に一人でやっているため飲み物にかかりっきりとなって、食べ物が出来ないという悩みはあるものの、ゆくゆくはとは考えている熊谷さん。
今後どうなってほしいか
熊谷さん自身は東京にいるときは地元の陸前高田に戻ろうとは思ってはいなかったのですが、戻ってから陸前高田もいいなあと、人との繋がりとかが出来たのもあって、もっと人との繋がりを大事にして、もっともっと新しい出会いや繋がりとか、新しいことをやっていけたらいいなと思っているそうです。
「そうですねえ。やっぱり未来しかない街ですからね、本当に。新しい街と考えると、ねえ、いろんな思いはまだまだあると思うんですが、でも何か写真を見る限りとかね、町の人の声を聞いてる限り、何か僕もすごく前向きな気持ちになれましたし。
頑張ってください。あのなかなか最近はね、その地域にも伺えてないんですけれども。機会があれば、また」
■「GORO's Break Time」……編集長、こんばんは。私がリクエストする曲はサンボマスターさんの『可能性』です。サンボマスターさんの曲は元気が出るものが多いのですが、この曲は特に頑張ろうと思わせてくれます。また、映画「ビリギャル」のエンディング曲になっていて、それも重なって頑張れば何でも出来る気になれます。
うん、映画「ビリギャル」ねえ。これ、まあ、実際の、実在の塾の先生に『ゴロウ・デラックス』でお会いしてるんですよね。そうそうそう、そうなんですよね、うん。映画版でもね、有村さんが演じられたんですよね。うん、そっかそっか。
サンボマスター「可能性~映画『ビリギャル』バージョン~」MUSIC VIDEO 後編
■「GORO's Essay」……初めてメッセージします。先日、久しぶりにカフェに行ってきました。一人だったのでカウンターでのんびりしていると、隣の隣の席に常連さんの男の人が来てマスターと話していました。その会話が女子ならよく話すようなガールズトーク、合コンに行って自分のことを気に入ってくれた女性が美人さんで、でもお父さんがガタイのいい警察官だった。その人の妹さんもめっちゃ美人さんだった。料理が趣味って聞いて送って来た台所の写真を見ながら、こんな台所あります?……などなど。スマホを見ながら、つい会話を聞いて心の中で笑っていました。吾郎さんはカフェに行きますか。
まあ、でも一人でカフェにいたりとか、一人でレストランにいると、やっぱり逆にね、他のお客さんの声がすごく耳に入ってきますよね。ねえ、このMさんは一人でスマホ弄ってたから、やたら耳に入ってきて、結構具体的に話をちゃんと憶えてますよね。
う~、でも男の人もこういうガールズトーク的な、まあ、合コンに行ってとか、ねえ、好きな女性がどうだとか。その人とやり取りしてて携帯に送られてきた写真がどうだとか、まあ、こういう会話はあるんじゃないでしょうかね。そうかそうかそうか、盗み聞きとは言わないけれども、うん。いやでも何かカフェの楽しさ、面白さでもありますよね。何かいろんなもの目に入ってきますしね、人間観察ができたりもしますし。
まあ、僕もたま~に行きますね。そういうところで取材をしたりもしますし、うん。そうですね、まあ後は友だちと、それこそガールズトークじゃないですけど、まあ、お茶をしたりとかね、そういうこともありますし。カフェは好きですよ、うん。
■「GORO's Music Library」…… ラジオネーム『吾郎さんとドライブデートしたいちょびハゲ男子』さん。ちょびハゲ男子さんw しましょうよ、じゃあ、ドライブデート。もう30過ぎたんじゃないですか。だって28歳ぐらいだったよね、最初のころ。ねえ、本当に。全く姿が想像つかないという。それではご紹介させていただきます。
先日、吾郎さんが好きだとブログで紹介していたノルウェーのジャズシンガー、セリア・ネルゴールさんの曲をリクエストします。ブログでは音の粒たちがリズミカルな表情で僕に触れてくる。車内を包み込んでくれるセリアの甘い歌声と紹介されていました。僕もドライブするとき、ぜひ聴いてみたいと思います。素晴らしいアーティストを紹介していただいてとても感謝しています。
うん。はい、そうですね。昔から好きなジャズシンガーでね。あ、紹介したのは『Let There Be Love』か。そのとき本当にちょうどその曲を聴いてて。何かすごくそういう、まあ、ねえ、”愛はそこにある”っていうね、何か本当に華やかでね、ちょっとアップテンポな曲でね、何か本当にリズミカルなんですよ。その光景が何か本当に何か粒になって僕に触れてくるみたいな感覚で。でもこれ文章にすると結構キザなセリフですね。自分で書いたんですよね。ま、まあ、いいか。上手いですか、ありがとうございます。でも何かそんなイメージだったんですよ。その何か粒がはじけるみたいなイメージで。それがね、この『Let There Be Love』っていう曲だったんですけれども。
でも実は、セリアの中で一番好きな曲って言うのはこれなんですよ、『Be Still My Heart』そう、でもこれ一番有名なんです。『Be Still My Heart』はもしかしたら聴いたらわかる方いると思うんですよ。ちょっとこれ、あのバラードで、うん。
ちょびハゲ男子、やるねえ。ちょびハゲ男子さんがこれ選んでるんだもんね。ドライブしないとね。でもちょびハゲ男子さんとこれ『Be Still My Heart』聴きながらドライブって大丈夫かなあ、うん。女性といるとき聴きたいような曲ですけれどもね、うん。
まあ、でもこれ本当にオススメな曲なんで、ねえ、皆さん聴いてみてください。もしかしたら聴いたことある曲かもしれませんよ。
Silje Nergaard - Be Still My Heart
メールのアドレスは“goro@joqr.net”。おハガキの方は郵便番号105-8002 文化放送「編集長 稲垣吾郎」まで。お相手は吾郎編集長こと、稲垣吾郎でした。それではまた来週、バイバ~イ♪」
3月14日の編集後記
3月11日で東日本大震災から7年となりました。
今回の「編集長 稲垣吾郎」は街の中心部が大きく変わりつつある岩手県陸前高田市を取り上げました。
津波で中心部が壊滅的な被害を受けた陸前高田市は、土を盛って土地の高さをあげる「かさ上げ」が行われ、去年3月にはスーパーやドラッグストア、そして10月には図書館がオープンしました。
この市街地に、地元生まれの熊谷幸さんがオープンさせたのが、喫茶店『熊谷珈琲店』です。
大学進学と同時に故郷を離れていた熊谷さん。
震災後、街の中に新しい「集いの場」を作りたいと一から準備を始め、去年10月、お店をオープンさせました。
常連客が毎日のように通ったり、女子高生が放課後に寄ったりするなど、店内は少しずつ賑わいを増しています。
かつては地元に戻るつもりは無かった熊谷さんですが、今では「陸前高田もいいな」と思い始めているそうです。
人が繋がることで、新しいことができれば、と熊谷さんは前を向いていました。
【店舗情報】
熊谷珈琲店(※珈は「カ」の代わりに「幸」)
<アクセス>岩手県陸前高田市高田町字馬場前72-5
(JR大船渡線BRTまちなか陸前高田駅下車)
<営業時間>
(平日) 7:00~9:00、11:30~19:00
(土日祝) 11:30~19:00
火曜定休日
かわいいクマの看板が目印。
熊谷さんがひとりで切り盛りしていますので、いらっしゃる場合はご配慮くださいね。
芥川賞&直木賞SP・前編と『ゴロウ・デラックス』
2018年3月8日の『ゴロウ・デラックス』第288回目は恒例企画、先日受賞した第158回芥川賞・直木賞作家が全員出演のスペシャル回。
第158回芥川賞:石井遊佳さんは現在、インドのチェンマイ在住。日本語教師の傍ら、インドで書き上げた『百年泥』で見事芥川賞を受賞。
第158回芥川賞:若竹千佐子さんもデビュー作『おらおらでひとりいぐも』で芥川賞を受賞。現在、50万部を突破する大ヒットを記録中。ちなみにこのタイトルは宮沢賢治氏の詩「永訣(えいけつ)の朝」の一節から取られたものだそうです。
第158回直木賞:門井慶喜さんもその宮沢賢治氏にまつわる作品『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞。紆余曲折に満ちた宮沢賢治氏の生涯を父、政次郎の視点から描いた作品。
1月中旬に行われた受賞会見では、石井さんがインド在住ということもあり3人揃わなかったのですが、今回、授賞式出席のために帰国してきた石井さんに3人が初めて顔合わせする場となったのが『ゴロウ・デラックス』という貴重さ(収録は授賞式前日)
登場する3人にこれまた恒例となりました吾郎さんからの花束贈呈が。そして、石井さんが受賞会見には出席できなかったということで、金屏風✨のリクエスト。さらに雰囲気を出すために、カメラマンさん(風?)まで用意し、パシャパシャと焚かれるフラッシュ……そして耐え切れずにフレームインしてしまう吾郎さんなのでしたw
受賞の瞬間は?
石井さんは受賞時はインドにいたのはわかっていますが、若竹さんと門井さんのお二人はどこで何をしていたのかというと、若竹さんは河出書房の会議室で大福を食べながら連絡が来るのを待ち、一方の門井さんはというと、担当編集者さんたち30人ほどで受賞の連絡を待つ“待ち会”でビールをちょっとだけ飲んで待っていたとw
この写真は受賞連絡が来た後の乾杯のため、若干ドヤ顔に見えると石井さん。ただ、門井さんはこの後会見が行われるために飲みたいけれど飲めない顔をしていると。
受賞の連絡
電話がかかってきてすぐ受賞がわかった門井さん。実は門井さんは3回目の候補での受賞、過去2回は落選の電話もいただいているわけです。しかし石井さんはインド在住ということで石井さんへの電話がかかりにくかったのか、ご主人の携帯に受賞の連絡が。
というわけで、今回はこの芥川賞・直木賞受賞3作品が課題図書ということで、まずは
物語の主人公は夫に先立たれ、一人一軒家で暮らす桃子さん(74歳)
自宅でお茶を飲んだり、病院に通ったり、おひとり様の老後を過ごす桃子さんですが、そんな彼女の頭の中にはあちこちから故郷の岩手弁で語りかけてくる無数の話し声が。
リズム溢れる岩手弁と標準語を織り交ぜ、老いの境地を描いた作品。
ちなみに作者・若竹さんも岩手出身でご主人と死別し、現在一人暮らしの主婦という桃子さんと同じ境遇なんだそうです。
老いに対してもポジティブな桃子さんが素敵だと吾郎さんと外山さん。というわけで、まずはこの岩手弁と標準語が織り交ざった超難読な部分を吾郎さんがを朗読します。
てへんだあなじょにすべがあぶぶぶぶぶっぶぷぷ
ああ、くそっ、周造、いいおどごだったのに
周造、これからだずどぎに、なして
かえせじゃぁ、もどせじゃぁ
かえせもどせかえせもどせ
かえせもどせかえせもどせ
かえせもどせ
くそったら
かえせもどせかえせもどせかえせってば
桃子さんはグラスを鷲掴みにし、握ったストローで哀れなソーダ水をこれでもかと掻き回す。
回れ回るよソーダ水。
未だ溶け残ったいたいけな氷が三つ、亭主の敵とばかりになおもなおもストローの先で弄り回した」
朗読終了早々、“すみませんでした”と謝罪してしまう吾郎さんw
若竹さんから「てへんだあなじょにすべがあぶぶぶぶぶっぶぷぷ」の部分を聞くと隣にいる門井さんにこれ読めますか?と促してしまう吾郎さんでしたが、意外にも吾郎さんより上手く読めてしまう門井さん。"一度、おしんの父親を演じたというのに……"とぼやく吾郎さんですが、同じ東北でも岩手弁と山形弁はちょっと違うと思うの。
岩手弁を小説に取り入れた理由
そんな岩手に実際に住んでいる人以外には難読な岩手弁を小説になぜ取り入れたのかというと、登場人物はほぼ桃子さん一人なので、彼女の脳内の声をダイナミックに表すためにはつるんとした感じがする標準語よりは、若竹さんご自身が使い慣れた岩手弁を使うのが相応しいと思って使ったそうです。
それを聞いた門井さんが方言の魅力は十分に理解した上で、"方言を100%話し言葉にするのはできないじゃないですか"と疑問が。若竹さんご自身も文字にする難しさを理解した上で、
というのも門井さんが受賞された『銀河鉄道の父』も岩手県が舞台で、主人公となる宮沢賢治の父と息子とのやり取りも岩手弁で書かれているのです。実際、門井さんは東北に方言指導してくださる方がいらして、吾郎さんが語ったように読み手にわかりやすいよう配慮した結果、書き言葉に近い方言になったのではないかと門井さん。同じ岩手弁という方言を扱いつつも、書き手がどう物語に寄り添っていくのか、もしくは書き手の環境も本の形に影響を及ぼすのかなと思うとかなり面白いです。
転機となった小説講座
小説を書き始め、完結まで書けるようになったのは小説講座に通い始めてからなのですが、実は若竹さんは8年前、55歳のときに57歳だったご主人を脳梗塞で亡くしてしまいます。突然の喪失に毎日"悲しい、悲しい"と嘆いていたら、息子さんが「どこにいても悲しいから外に出ろ」と探してきてくれたのがその小説講座だったのです。
小説講座ってどんなところ?
2~3週間に1回行って、人の作品・自分の作品として提出したものを皆で読んで、それを「合評」するその繰り返しで、講師が「こう書きなさい」という書き方講座はしないそうです。実際、ボロクソに言った分は言われることもあるそうですが、結構面白いと。ちなみに若竹さんと石井さんは共通の先生で、教室の場所は別ですが、同じ時期に根本先生という有名な元編集者の方に教わったそうで、石井さんはなかなか褒められなかったのに、若竹さんは毎回褒められていたというw
約25年間、主に純文学の編集者をしてきた。福武書店(現ベネッセ)の文芸誌「海燕」(1996年廃刊)では、若手時代の吉本ばななさん
その根本さんに今回、緊急でお話を伺ってみた。
Q.お二人の受賞について
根本「本当のことを言うと……やっぱり若竹さんの作品は、今回100%賞を取れると思ってたわけ。でも、言った手前、若竹さんが芥川賞取らなかったらどうしようと思っていたから、すごくホッとした感じ」
Q.お二人にどんな指導をしたのか?
根本「若竹さんはご主人が亡くなって、本当に悲しい、自分の感情をぶつけるような詩を書いていた。本当の意味での悲しさ、喪失感は伝わらないから、もう少し時間や距離を置いたら?と言ったわけです」
Q.石井さんは?
「石井さんはね、最初から小説はちょっとレベルが違う感じ。(レベルが違うというのは?)いつ新人賞取ってもおかしくないというような小説を書いていた(あまり褒めない先生と言っていたのに対し)褒めてたと思うけどね~」
執筆のヒントは『レ・ミゼラブル』
何年か前に『レ・ミゼラブル』を観て感激した若竹さん。あの歌をもう一度聴きたいとYouTubeでググッたら、ミュージカルの舞台動画が出てきてすごく良くて、一斉に皆が色んな自分の思いを叫ぶみたいなのを何とか小説に出来ないかと思って出来たのが『おらおらでひとりいぐも』で、実際に吾郎さんも"そういう音の聴こえ方がこの小説を読むとしてきますよね、確かに。ザワザワと色んなところから音が聴こえてきて"と。
ちなみに会話で"ググッた"と出てきましたが、若竹さんはYouTubeはもちろん、2ちゃんねる(現在は5ちゃんねる)も普通に見ているそうです。いろんな人のいろんな生活が覗き込めるのが面白いのだと……本当は秘密だそうですが。ただし、ご自身についてやご自身の作品についてのエゴサーチは恥ずかしくて見られないそうです……そして門井さんに"人の生活は見るわけですね"と突っ込まれてました。
そして次回作について問われると、考えてはいるものの、口にしてしまうと言ったからいいやと完成した気になってやらなくなってしまうタイプらしいので今回はごめんなさいと。ただ、63歳で1作品の人なので、次は100歳ごろかもしれないそうですw
ということで、今週の『ゴロウ・デラックス』はここまで。次週も続けて芥川賞&直木賞受賞作家第2弾です。
〒107-8066 TBSテレビ『ゴロウ・デラックス』御中
〒107-8066 TBSテレビ『編成部』御中
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出版社放送終了後Twitter
TBS「ゴロウ・デラックス」話。『おらおらでひとりいぐも』は方言多用の小説で朗読は大変。本番で少しつかえた稲垣さん。それを「難しい」と流したり「語感が変わってる」という話にはせず、収録後も何度も若竹さん本人にお詫びされ「練習が足りなかった」と悔いていました。https://t.co/2HkV2UMQZs
— 河出書房新社 (@Kawade_shobo) 2018年3月16日
続)ゴロデラ『おらおらでひとりいぐも』朗読オフエア話。東北弁の響きや変わった擬音に「笑う」演出をされることもある本作。吾郎さんはその気配は欠片もなく「ちゃんと練習すればよかったんだよ。俺ひどい」とあくまで作家の意図通り伝えられなかった自分を責めていました。https://t.co/2HkV2UMQZs
— 河出書房新社 (@Kawade_shobo) 2018年3月16日
Book Bang
シネマナビと『ハッピーエンド』
3月14日(水)発売【anan No.2094】の稲垣吾郎シネマナビ!では『ハッピーエンド』(2018年3月3日(土)全国公開中)を紹介。
建設会社を経営し、豪華な邸宅に3世代で暮らすロラン一家。家長のジョルジュは高齢のためすでに引退し、娘のアンヌが家業を継いでいた。アンヌの弟で医者のトマには、別れた前妻との子で13歳になる娘エヴがおり、両親の離婚のために離れて暮らしていたエヴは、ある事件をきっかけにトマと一緒に暮らすためカレーの屋敷に呼び寄せられる。それぞれが秘密を抱え、互いに無関心な家族の中で、85歳のジョルジュは13歳のエヴにある秘密を打ち明けるが……。(映画.COMより抜粋)
製作:マルガレート・メネゴス&シュテファン・アルント&ファイト・ハイドゥシュカ&ミヒャエル・カッツ
出演者:イザベル・ユペール/ジャン=ルイ・トランティニャン/バマチュー・カソビッツ/ファンティーヌ・アルドゥアン/フランツ・ロゴフスキ/他
配給: ロングライド
制作国: フランス・ドイツ・オーストリア合作(2017年)
上映時間:107分
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